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14話 友情を試された日➂

コメディかと思いましたか?

ちょっと真面目な展開です!

「姫ちゃん、マシロはいつも夕方の5時には家に戻ってくるの?」


「はい……一度だけ戻らなかった時に大捜索をしましたが、それを最後に、それからは5時には戻ってきています。」


「うっし、俺もちょっくら探してくるぜ。嬢ちゃんばかりに姫乃を任せる訳にはいかねぇからな。俺が見つけて姫乃を安心させてやるぜ」


 そういうと姫パパさんは部屋を出て行った。

 その時私は迷っていた。自分も探しに行くべきかどうか……シロウと協力して探せば見つかる可能性はかなり高い。しかしそれだと姫ちゃんに隠れながら探す事になる。せっかくうまい具合に話がまとまりかけているのに、変に疑われたくないので、このまま誰かが見つけてくれるのがベストなんだけど……

 私達はどうしようか? と、姫ちゃんに視線を送る。


「マシロだって気まぐれな猫です。たまには時間がズレる事もあるでしょう。もう少しここで様子を見ましょう」


 そう言うものの、姫ちゃんは心配なのを隠し切れない表情をしていた。

 17時30分になった。未だマシロが見つかったという報告はない。姫ちゃんは昨日の出来事を詳しく聞いて来たりしたが、次第に時計にばかり視線が行くようになり、ついにこんな事を口にした。


「マシロは、この家の事をあまりよく思ってないかもしれません。門番は大げさだし、世話係はしつこいし、嫌気が差したのかもしれません」


「……そんな事ないよ。マシロはこの家の事、大事に思ってた」


 私は自然とそんな事を言っていた。


「ふふ、まるでマシロから直接聞いたような事を言うんですね」


「……」


 本当だよ。マシロはこの家の事を、特に姫ちゃんの事を大事に思ってた。前に言ってたよ。昔の家と今住んでる家、どちらかを選べるとしても、今の家を選ぶって。それに姫ちゃんに拾われた事、今でもちゃんと覚えてたよ。忘れられないって感謝してた。だからそんな事言わないでよ……


「姫ちゃんにとってマシロは、私にとってのシロウみたいなものなんだよね」


「そうですね。友達が離れて行った時も、マシロだけはずっと私に寄り添ってくれていました。マシロはもう、家族みたいな……いえ、家族なんです!」


 それを聞いて私は心が熱くなるのを感じた。分かるよ。私にとってもシロウは家族だもん。事故にあった時、心が押し潰されそうだった。なのに私は今なんでここで座っている? 私には探し出せるだけの力があるのに……

 姫ちゃんが同じように苦しんでいるのに、自分の事しか考えず、秘密なんて先に言った方がいいなんて偉そうな事を言って、自分の事は棚に上げて、そんな自分が情けない!


 私は拳を握って立ち上がっていた。


「マシロを探しに行こう!」


「わ、わかりました。私も行きます」


 姫ちゃんもきっかけが欲しかったのか、すぐに返事をする。


「でも、どこを探せばいいのか……」


「私に考えがあるの。少しだけ私に時間をくれないかな?」


 そう言って玄関を出た。とりあえずここでいいかな。

 私の覚悟はもう決まっていた。姫ちゃんに全てを話す!

 はぁ、せっかく姫ちゃんから信用を得て、いい感じの親友になれそうだったのに。私の秘密を知ったら多分嫌われるかもしれない。けど、きっとこれでいいんだ。もうこれ以上姫ちゃんが辛い思いをする必要なんて無い。そんな思いをするのは……私だけで十分なんだ。


 『 魂 の 循 環 』


「雛さん? 一体何を?」


「ごめんね姫ちゃん、後でちゃんと説明するから、少し集中するね」


 何も分かっていない姫ちゃんが不思議そうにしているが、私は体の中に意識を集中させる。いつもならこの魂の小川から、シロウの情報をすくい上げるのだが、今回は『送る』。


(シロウ、聞こえる? 聞こえたら同じように返して)


 この想いを小川に流し、シロウに送るイメージをする。


 『 メッセージ 強制送信 』


 送ってから一分も立たずに、


(ヒナ? すごいな、こんな事も出来るのか!)


シロウから返事が来た。成功したことに安堵あんどしながら次の想いを小川に流す。


(実はマシロが家に戻って来ないの。近くの友達にマシロと一緒の子がいないか確認を取ってほしいの。お願い)


(分かったぞ、たまり場を回るから少し待ってほしい)


 これで闇雲に探すよりは効率がいいだろう。後は待っている間に姫ちゃんに説明をする事にした。


「お待たせ姫ちゃん。実はね、今うちのシロウと連絡を取ってたんだ。何か私ってシロウと遠距離でも会話できるみたい」


「……えっと、それは、本気で言ってるんですか……?」


 驚き半分、疑い半分といった様子の姫ちゃん。もちろん当然な反応だと思った。


「他にもね、私、動物の言葉が分かるの。それで今、シロウの友達からマシロの居場所を探ってもらってる。」


「そんな事って……」


「たはは~、信じられないよね~……ちなみに、マシロの名前を教えてもらったのはシロウからで、門番は関係ありません!」


「~~~っ!」


 もはやどう反応していいか分からないと言った様子の姫ちゃんに向かい合って、少し真面目な声を出す。


「マシロね、本当に姫ちゃんに感謝してたよ。マシロって捨て猫だったんでしょ? 拾われて抱っこされた時の事、今でも覚えてたよ」


「あ……あぁ……マシロ……」


 姫ちゃんが泣きそうになってその場にうずくまった。その時、シロウからメッセージが届いた。


(ヒナ、商店街の外れでマシロを見た奴がいたぞ。30分くらい前だ。俺らは先に向かってるぞ)


(分かった、ありがとう! 私達も向かうから、シロウは犬バージョンでいて)


(りょーかい!)


「姫ちゃん、マシロが商店街の外れにいたのを見た子がいたって。急いで向かおう!」


「は、はい!」


 私達は走って商店街に向かった。

 商店街に入るとまるで私達を待っていたかのように、黒猫がちょこんと座っていた。


  『 魂 の 循 環 』

 『 動物語 インストール 』


「ウィス!」


 以前木登り対決をしたウィスが私達を待っていた。


「来たかヒナ! マシロを見た場所まで俺が案内するぜ」


「ありがとう、そこから臭いを辿ってマシロの場所を特定できない?」


「へっ! すでにシロウがやってるぜ。こっちだ、着いてきな」


「姫ちゃん、この子が案内してくるって。行こう!」


「……本当に動物の言葉がわかるんですね」


「あはは……こんなの気持ち悪いよね……でもこれが最後でもいい、今、この時だけでも私を信じて! 絶対にマシロを見つけるから!」


 私達は走り続けた。商店街を抜けて河原の土手まで来た。以前マシロと仔猫を見つけた場所の近くで、ウィスがようやく止まる。


「シロウは臭いを辿ってこの辺に向かったんだがな。もっと奥に進んだか!?」


「待ってウィス。シロウからメッセージが来た」


 私はメッセージを確認する。


「姫ちゃん、あの土手沿いの橋の近く! 斜面の下にマシロが倒れてるって! マシロ動かないって言ってる。どうしよう。ペットでも救急車ってきてくれるのかな?」


「うち専属の獣医を呼びます。私達は現場に向かいましょう」


 姫ちゃんは走りながら携帯で連絡を取った。私の言った事をすぐに信じてくれた事が妙に嬉しかった。

 その場所に行くと、そこにはシロウを含めて数匹の動物達が集まって下を眺めていた。


「姫ちゃんは危ないから上にいて。私が下りるから」


  『 魂 の 循 環 』

 『 身体能力 インストール 』


 斜面はかなり急だが、今の私なら問題ない。ためらう事なく飛び降りた。姫ちゃんが驚きの声を上げている。ザザザッっと足で滑るように下り、時折ある足場の良さそうな場所で弾むようにステップを踏み、マシロの横に着地した。

 恐る恐るマシロの口元に手を当てる。マシロの息遣いを感じた。どうやら気を失っているだけのようだ。少しホッとして、呼びかけてみる。


「マシロ、大丈夫? 聞こえる? マシロ!」


 するとマシロはゆっくりと目を開けて、力なく周りを見渡した。

 私は上にいる姫ちゃんに両手でマルを描いて無事のサインを送った。


「ヒナ? どうしてここに? 確か私、犬に吠えられて逃げようとしたら下に落ちて……」


「もう大丈夫だよマシロ。無理に動かないで。すぐに獣医さんが来るからね」


「そう……またあなたに助けられたのね。いつも悪いわね」


「もう、水臭い事言わないでよ」


 姫ちゃんの呼んだレスキュー隊のような人達が到着するまで私はマシロを診ていた。

 隊員達がロープを使い下まで下りてくると、いきなり私の腕をつかんで拘束する。正直、腕が痛い。


「何だ君は! 君がマシロ様をここへ突き落したのか!?」


 とんだ言いがかりだが、私は何も答えなかった。こうなる事は覚悟していたからだ。

 姫ちゃんから見ても同じだろう。動物と話せるなんて嘘で、マシロを突き落した後に、探す振りをして第一発見者を装いお礼をもらう。そんな風に見られてもおかしくない。というかそんな風にしか見えないだろう。

 しかしその時、上から姫ちゃんの大声が響いた。


「何をしているんですか! その人は私の親友でマシロを見つけた恩人ですよ! すぐに手を放しなさい!」


 隊員が慌てて私を開放した。すぐに私の携帯に姫ちゃんからの着信が入る。


『大丈夫ですか? 私の説明不足のせいで無礼を働いてしまい、本当にすいませんでした』


『姫ちゃん、私の事、信じてくれるの?』


『当たり前じゃないですか。あ、今の隊員と変わって下さい』


 隊員と変わるとこっぴどく叱られているのか、何度も私に頭を下げた。

 その後は私に出来る事がないので、マシロは隊員に任せて土手を一気に駆け上がった。


「雛さんって運動神経が物凄くいいんですね! 驚きです!」


「いや、これも色々あって……でも姫ちゃんが私を信じてくれて嬉しかった。ありがとう」


「動物と話せるなんて、後で検証すれば簡単に分かるような嘘、身近な人に付く訳ないじゃないですか。けど、後で色々試させてもらいますよ」


「お…お手柔らかにね……」


 こうして私の失言から始まり絶交されそうになった今日一日の騒動は、逆に深い絆を結んで終わりを迎えた。その後、姫ちゃんに詳しく検証実験されたのは、また別のお話しである。

ご愛読ありがとうございました。少しの間、ネタ集めのためお休みしようと思います。

まぁ、誰も待ってないしのんびりと……(殴

うそうそ。もっと面白く出来るように頑張ります。ここからエンディングに繋げてもいいんですが、

せっかくなので勉強のため10万文字くらいは頑張ってみたいですね。

それにしてもこれで38000文字なのか……

小説ってホント難しいですね。

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