ちょっとウエイト
首を刎ねろって…、それってつまり断て、という事か? 冷たい目をした姉さま、よくもまあ表情1つ変えずに残酷な事が言える、さすが戦争主義者。
ミラは何が何か分からずにオロオロしながら私と姉さまの顔を交互に見ている。涙は流していないが、普通の精神状況ではない事は確かだろう。
「お断りします。私は曲がりなりにもミラの上司です、部下のリアル生首人形を作るなんてできません」
きっぱりと、姉さまに対して皮肉を込め、私も表情を変えずに言ってやる。人が苛立つ条件はそれぞれだろうけど、1番は真面目な話をしている時、冗談や挑発という爆弾を投下する事だろうと思う。
しかし、それがどうした、と言いたげに…いや、何も感じていない様子の姉さまは鼻で笑う事もなく、
「勘違いするな。物理的ではない、そいつはお前の隊のものなのだから、お前がクビを通達しろ、と言ったのだ」
なんとも拍子抜けだ。姉さまなら爆弾を括り付けて敵陣営に投下しろ、とか、魔力を限界まで抜いて捨てろ、とか言いそうなのに、案外生ぬるいんだ。もっとも、言われたってわたしはそんな事はしないけど。
いやそれよりも、格好つけているのかどうかは知らないけど、私や兄さまと喋る時と口調が変わっている。いかにもなお偉いさん風な喋り方、似合わない。
若干の笑いをこらえながら、私の性格の悪さがどんどんと溢れる様に返しの言葉を思いつく。
「お断りします」
「今すぐにだ、首を刎ねろ」
全ては私がルールだ、私がこのリンドウの最高権力者だ、今の言葉にはそれが全面的に押し出されている様に思える。私の言葉なんてあってない様なもの、何を言おうと却下却下、権力者はこれだから嫌だ。
「……姉さん、少しは他人の意見も聞いた方がいいよ。自分の考えだけ押し通してたら、そのうち誰もついてこなくなるかもよ?」
そう言いながらミラのそばに寄り、背中をさすってやる。私より年上だろうが部下は部下だ、別に悪い事ではないはず。
「姉さまだ。ふむ、私に意見するか。ならば私が…」
姉さまがミラに掌を向け魔力を集中させる。私の能力をここに集中させれば解決できるのだけれど、ここで姉さまに私の能力が既に使われているとバレるのは避けたい。しかし、使わなければ部下が…ミラが目の前でやられる。それはさすがにきつい。
「ウエイト、ちょっと待ってよ姉さん」
声が聞こえ姉さまの手が握られる。声のした方向を見ると、開きっぱなしのトビラにもたれかかり、白衣を着た宿木のリーダー…私の兄さまがいた。
「ザクロ…何故止める」
「いやぁね、少しそのプリティガールが気になってね。その娘クビにするならぼくの部隊にプリーズできるかな?」