嘘って弱いんだ
「あ……え、えっと……、そ、その……」
これはさっき出てきた人にも聞いていた質問、たった1つの命をかけられるか、かけられないか。当然の質問だと思う、戦争は常に危険と隣り合わせ、入隊すれば休む暇なんてないに等しい。
私は何のために黄鐘の入隊試験を受けているのか、それは家族を楽にさせるため、戦ってお金を頂くためだ。命の1つや2つかけられる、と言わなくては落ちるの。でも……
嘘を言えるほど、私は強くない。
「し、正直に言いますと、…こ、こここ、怖い…です……。死ぬ、って事は、こっ、子供レベルの考えですが、な、何も感じなくなる、って事ですよ、ね……。わ、私は、それはい、嫌です。ちゃんと、ちゃんと家族の笑顔を見るまで……見るまでは、死ねません…。私は、私は死ぬためにここへ来たのでは…」
「わかった、もういいよ…」
ヒナ様…真剣な表情をされてる、きっと…いいえ、絶対に私みたいな臆病者がここへ来た事を怒ってるんだ。もしかしたらこの世界に逆らう思想の持ち主、って事でこのまま捕まえられて処刑とか……! はぁ……私の人生、いい事なんてなかったなぁ…
「す、すみません。失礼な事を……発言してしまって…」
「おめでとう」
…え、い、今……
「今、何と…」
「だから、採用します、って。ミラさん…いいえミラ、今日からよろしくね!」
ヒナ様は眩しい笑顔で私を部下として受け入れてくれている。早速呼び方が変わり、さんが無くなった。
って、え、ええぇ⁉︎ な、何で採用なの、あんな薄っぺらい決意でエリート集団のリンドウに入隊できるなんて、信じられない…。何かの間違いじゃ…
「あ、あの…、なんで、なんで私が採用なんですか? 私みたいな、う…嘘もつけない臆病者がど、どうして…」
聞かずにはいられない、失礼とわかっていても一度口を開いてからは止まらなかった。
ヒナ様が自身の座っていた椅子から立ち上がり、ゆっくりゆっくりと私に近づいてきた。依然、眩しい笑顔は変わらない。
「ミラ、嘘をつく人間はね、強くなんてない。むしろ一番弱いんだよ。逃げている、自分が助かるために嘘をついて逃げるんだ。でもミラは嘘をつかず立ち向かった、正直に怖いなんて言い出した、強くなきゃできないよ。でもね、怖い、それだけならもちろん不採用だった、いい意味でね。でもその後、私は死ねない、って言った。……生きよう、平和な世界で、ヴァルハラの歴史を崩し、この無意味な戦争を終わらせよう」
無意味な戦争……、私はこの戦争が当たり前だと思っていた。何の為に戦っているのかは問題ではなく、戦わなければならないと環境がそうさせていたんだと、今わかった。
戦争がなかったら、お母さんたちも…