ツボにはいる
「で、あんたどこから来たの」
わたしが椅子に座るとすぐに面接が始まった。でもなんだかイメージと違う、私のイメージでは「〜〜ですか?」とか「〜〜でした?」とか、優しく聞いてくれると思ったのに、これじゃあなんだか私が悪い事したみたい。
「え、あっ……は、はい! き、今日はい、家から来ました!」
「…………」
どうしよう、怖くて変な事言っちゃった、面接官の人ぽかんと口開けてこっち見てる…。もうダメだ、ヒナ様に気に入られて入隊なんて夢物語は消えた。大体私なんかがヒナ様に気に入られるわけがない、何を自惚れていたの私は。
恥ずかしい…もう帰りたい…。
「プッ…ふふっ、面白い事言うのね、そうよね家から来たわよね」
わ、笑われた⁉︎ 恥ずかしいです…
「え、あ、はい……、すみません……」
とりあえず謝っておく、考えて出た言葉ではないが謝らないと気が済まなかった。ひんやりと冷たかった椅子がもう暖かく感じる、それほどまでに私の体が恥ずかしさで熱くなっているのかな。
「あなた……えーっと、ミラさん? あなたすごく面白いわ、どこから来たの、家からって……ふっ、ふふふふふ……」
「失礼ですよヒナ様、緊張しているのですから優しくしてあげませんと…」
今まで全然話さなかったもう1人の面接官が初めて口を開く。大人っぽくて優しそうな人、私の事をフォローしてくれている……、あれ?
「だって、どこからって、家から……あ、今コモモ私の事ヒナ様って言った、姉さまと兄さまがいない時は様付けなくていい、って言ったのに。それに敬語も」
え、ヒナ様って…
「あら、忘れてたわ。ごめんねヒナ」
「あ、あの!」
なんだか置いていかれてる気がしたせいか、自然と声が大きくなってしまった事を後悔している。あの、と言った瞬間に2人は蚊帳の外の私に目線を変えた、自分から集めたのに、視線が怖い。
「ああごめんね、何かな?」
「い、いえ…、ヒナ様…って事はあなた…」
失礼とは思ったけど、1人の面接官、私よりも身長が低くて幼くて変な事で笑ってた方を指差す。話の流れからしてこの人は…
「あれ、知らなかった? 私はヒナ、ヒナ・リンドウだよ。ついでだからね、こっちはコモモ、私の優しいお姉さん。……って言っても本当の姉妹じゃないから、お姉さん的存在かな」
言い終わると同時にコモモさんは軽くお辞儀をした、微笑みが私には眩しかった。
でも、まさか隊長さん本人が面接をしているとは、まさかと思った一瞬は本当に心臓が止まりそうだった。だって私が考えていたのは「ヒナ様に気に入られて入隊してやろう」という事、それを本人の前で考えていたんだから、そりゃ怖いなんてものじゃない。
「は、はい……そそ、そうなんですね」
「うん、よろしくね。それでね、時間押してるんだ。悪いけど最後の質問ね。コホン…、勝利のためなら命をかけられますか?」