表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に叛く異草花  作者: にぼし
30/42

目は大切に

 私は自分の体が軽くなったことに気がつく、背中が痛くない。鎮心バックのチカラ、一度無に戻したことで、痛いという感覚もなくなったのだろうか、今はすごく楽。

 さっと立ち上がるが、足がどうしてか震える。それを見て、クルミは心配そうな顔をし、

「だ、大丈夫なの…?」

 と言う。おもわず笑ってしまった。さっきまでこの人が誰かわからなかったのが嘘のようだ。私は首を横に振り、

「ごめんね、心配かけちゃって」

「ほんと、心配したのよ」

「わかってる。わかってるけど、今度は別の心配をしなきゃいけないみたい…」

 来た道を向くと、黒いマントを付けた女の人が立っている。6メートルほど離れた場所で、壁にもたれかかっていた。ハレン・リンドウ。足が震える理由がわかった。

「実の姉に怯えるとは、わたしがそんなに怖いか」

 そう言うと、姉さまはもたれかかるのをやめ、こちらへ向かいゆっくりと歩んできた。

「まぁ、変な格好している姉を見たら、嫌でも怖くなります」

「ふん…、色々とやってくれたな。ところで、お前たちはこれからどうするつもりだ」

 私は1歩後ずさる。私とクルミに攻撃手段はない、逃げる準備をする。

「無駄だぞ」

「無駄…とは」

 私はおそらく不敵な笑みを浮かべ、

「逃走は不可能だから、逃げたところで追いかけるから、そういうことですか」

「まぁ、そうだな」

「それはお手上げですね。もうどうしようもない…」

 拳を強く握り、逆転の策を講じる。

「そう。わかっているなら大人しく–––」

 固く握った拳、さっき倒れている時に掴んだ砂を姉さまの目に投げつける。効果は思ったよりも大きく、話の途中だったから口の中にも入ったようで、私は笑いそうになってしまうが、今はそんな状況じゃないと堪える。

「クルミ行くよ!」

「悪い子ね、今回ばかりは怒れないけど」

 急いで、階段まで逃げるよ、と全力で走る。手を引いて走ることはしなかった。

「待て…、もうっ…目が…」

 姉さまが目をこする。ご愁傷様。待てと言われて待つお間抜けさんはいない。

 私たちは進んだ道を逆戻りし、階段へと向かい進んで行く。一本道で走る前にも進んでいたから、本当にもうすぐ見えるはずだ。一向に見えない光を内心疑うが、降りてきたのだから確実にある。

「あの人は」

 私はクルミに尋ねる。クルミは後ろを確認し、一度呼吸を整えてから、

「もう見えない、暗いっていうのもあるけど」

「見えないのが一番怖いね」

 もしかしたら、何かしらの方法で既に回り込まれている、とかいう可能性さえある。見えていた方が安心できた。

 部屋を調べる際に開けっ放しにした扉から、ヒョイっと何か出てきて私たちの邪魔をする、なんて事もありそうで怖い。さっきの少年がいい例。

 今度は自分で後ろを確認する。確かに見えない。確認し終えると減速してはいけない、と考え、再び前を向く。

 瞬間、私の目は一本道の先に光を見る。不思議な光、地上から漏れる光ではないと、私は直感で感じていた。

 あれって、と戸惑うクルミの手を取り、

「飛び込むよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ