3つの部隊
開いた扉から顔を出し私を見ていう女の娘、この人が面接官なのだろうか、私よりも年下なんじゃないのかな。
「……どうしたの、違うのならいいのよ」
「はっ…⁉︎ い、いえ……、そうで……す……」
色々考えていた事と、知らない人が話しかけてきた事とで頭の回転が追いつかない。あぁ…絶対に落ちた…。
「そう、なら早く入りなさい。まぁあなたで最後だから別にいいのだけれど」
顔を出すのをやめ、部屋の奥へと進む背中が扉の隙間から見えた。背は小さいけど私と同じくらいの長い髪、そして戦争という荒々しく恐ろしいものとは全く関係していないような不思議な雰囲気をその小さな背中から感じた。
私は返事をせずにゆっくりと扉をくぐる、中は薬独特の香りが漂い、頭がどうにかなりそうだった。
部屋に入ると早速面接が始まる。私は1つの椅子へと連れていかれ座らされる。機械仕掛けのその椅子には肘掛けが付いていたけど、今は面接、試されているのだろう。目の前にはさっきの女の娘ともう1人、大人の雰囲気をした医者の様な格好をした女の人だった。
鼓動を感じる、自分の心臓の動きがスピードアップしているのを感じている。体が熱くなってきた所為か、椅子に触れているお尻がひんやりとしているのをやけに感じた。こんな緊張した状況は初めて、田舎で食べ物を作っていた時とはかけ離れすぎている。臆病な私がまさかリンドウの試験を受けるなんて…。
リンドウ第3部隊の一つ、『黄鐘』。私はそこを受けようと思った。このリンドウという戦闘集団は、昔戦争で大活躍した英雄、ベイリー・リンドウ、って人が作り上げた軍らしい。その為かリンドウの指揮は常にリンドウの息子か娘へと指揮が任されていく、そしてこの代のリンドウは3人兄弟、部隊が3つに公平に分けられたという事だ。
1番上のお姉さん、ハレン様の部隊『小環』は人数、戦力と共にヴァルハラ最強を誇るチーム。戦争を至上とし、接近戦を得意とする典型的な戦闘集団。その力は素晴らしく、サークの隊員は敵が遠距離から魔弾を放ってこようとも、その全てを避けてゼロ距離まで接近する事がみんなできるらしい。その分お給金もいいのだが、私には無理だ。
真ん中のお兄さん、ザクロ様の部隊『宿木』は少数精鋭のチーム。なんでもウッドの隊員は強力な能力を持った人だけが入れるらしい。なんでも能力を2つ持っている化け物もいるとか、だから少数でも戦っていけるらしい。だが少し怪しい噂もある、ウッドを受けた人の約半分が入隊できるのだが、落ちた人たちは家に帰されないらしい。その理由はわからないけど、私にはとても受けられない。
そして私の受けるリンドウの末っ子、ヒナ様の部隊『黄鐘』は同じく少数、だが精鋭ではない。しかし仮にもここはリンドウの部隊の1つ、戦闘スキルや能力が伴っていないと入隊する事は不可能。だがリーダーのヒナ様が相当な変わり者らしく、ヒナ様気に入られれば入隊させてくれるらしいのだ。その所為か周りからは、落ちこぼれ集団、と呼ばれているらしい。それでも私が入隊できる見込みがないほどのエリートの集まりである、という事は変わらない。
だから私は気に入られるしかないのだ。