表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に叛く異草花  作者: にぼし
20/42

永遠の別れ

 帰り道に感じられたのは、爆発、血の匂い、立ち昇る煙、辺りを燃やす炎の熱。この世界は、主に味覚以外の4つを刺激する事に特化している。まるで精神を少しずつ紙やすりで削られているよう、それも戦争反対の思想を持った極少数の考えだ。

 凹凸が無くなり、滑らかな光沢を得るならまだしも、その紙やすりは一点を集中して削るため、凹んで最後は穴が空く。その穴が意味するのは、発狂とか絶望とか、そういったマイナス。終着点はない、堕ちていくだけ。

 上がりたいとか、戻りたいとか、そんなの考えるだけ無駄。だったら綺麗に、誇れるように堕ちていけばいい。それもおかしいけど、探せばいい。堕ちた私を受け入れてくれる、そんな場所を。

 戻り始めて少し経った。今は第1ポイント辺り、城では未だ姉さまと兄さまが敵と戦いを続けている。敵が落ちるのも時間の問題だろう。こちらもいよいよ最終局面だ。

「服は?」

 もらった薬を摘み、くだらない事をコモモに尋ねる。透明になる薬だ。服を脱がなければ完全に消えられないだろう。

 が、現実は違ったようで、コモモは目立たないようにクスリと笑い、

「年頃の女の子に脱げなんて言えないわよ。身に付けている物も消えるわ」

「流石ね。ちょっと安心」

 実際、脱ぐ気などさらさらなかった。能力を使いながら進めば、戦場を無傷で歩くことさえ可能だからだ。しかし、消えるとなると話は別。コソコソと忍べばいい。

 第1ポイントを越えるか越えないかの所、そこで歩幅が小さくなる。

「お別れ…、ね」

 冷たい声が自然と出る。心残りや後悔は無い。私やコモモ以外にも戦争を反対する人が1人いた。その娘を残して行くのは心苦しい気もするけど、彼女にはコモモの後継人としてリンドウに必要なんだ。勝手なのは生まれつき、だから謝らない。

 右手をコモモに左手に預け、深呼吸する。

(じゃあね。大っ嫌いな世界。最高の永遠の別れよ)

 心の中で呟き、いよいよ薬を飲む。変化は目に見えてわかり、最初は足、そこからどんどん上がるように消えていき、数秒で完全に透明となった。

 私は今、左手を見ている。見ているはずなのに見えていない、感覚がおかしくなりそうな状態、服も確かに消えている。原理はわからないが、コモモが天才という事にしておく。

「どう?」

 隣にいて、そう尋ねるコモモもすっかり透明。表情も見えないが、おそらく笑っているだろう。

「うん、良いよ。行こっか…」

 手を離せば見つけることはほぼ不可能になる。離れないようしっかりと握り、戻ってきた道を再び戻り、敵の城を目指して歩く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ