臆病者の決意
〜〜1時間ほど前〜〜
戦地から離れた田舎町、そこでは戦時中の食料として送られる沢山の作物を育てている。小麦に野菜、芋から果物まである。しかし、戦争の所為であたりの環境は最悪、植物は汚れた空気や雨にさらされ、環境に適応した害虫が作物を食べてしまう始末だ。
その為この町の住人は、貧しい生活を強いられている。食べるものには困らないのでは、そんな事はない。上手くできた食べ物は送られる為、まともに食べられるような物はここにはほとんど残らない。苦しい生活から逃れる方法は1つ、それは……
「ミラ、そろそろ時間じゃないの?」
朝は6時、緊張して4時から起きていた私は、朝ごはんを食べたあと少しうとうとしていた。お母さんに名前を呼ばれ体を揺すられる。
「わかってる、わかってるけど……、やっぱり行くのやめようかな……」
「こら、はぁ…田舎育ちで人見知りで臆病で、グズでのろまですぐ調子にのるあんたが、立派に戦えるのか心配だよ…」
「そんな事わかってる、でも私はお母さんたちを助けたいの。怖いけど軍に入隊すればお金がもらえるんだから」
望まれたわけじゃない、でも私には能力がある、この能力だけでも買ってもらえればそれでいい、噂では不採用になった人が能力を失った代わりに大量のお金をもらったとか……。それが本当なら臆病な私でも大丈夫。
覚悟を決める、よし、家族のためだったら私なんて!
「行ってきます!」
お母さんからの返事は聞かなかった、多分お母さんもなにも言わなかったと思う。こんな時になんて言葉を送ったらいいのかわからないもの。
ーーーーそして現在に至る
「どうしよう…人がいっぱいいる、でも頑張らなきゃ…頑張らなきゃ、えっと…面接場所は……」
周りに人がいるけど聞けない、自分でもこの人見知りは何とかしないとと思っている。思っているだけだ。
「ここ……だよね……」
事前に送られていた地図を見て探し出した。どうやら薬学の研究者の部屋らしい、何故こんなところで、とも思ったけど、拠点の外では戦争が起きているから場所を悟られないようにするためだろう。
しかしこの軍の拠点は広い、私が住んでいた村が二つ分くらいすっぽりと埋まる敷地だ。こんな都会で私はうまくやっていけるのかな、不安と恐怖が頭を埋め尽くす。
面接部屋からは小さな声が聞こえてきた、当然だけど私以外にも着てる人がいるんだ。同期かな、仲良くなれる自信はないけど。私は扉に聞き耳をたてる。
「そうね、あなたはこの戦争のために死ねるかしら? 正直に答えてね」
「はい、リンドウの勝利のためならこの命、捨てる覚悟はできています」
すごい、こんな優秀な答えができる人がいるのか、私なら死ねるなんて言えないわ。
聞き耳をやめる、そろそろ終わりそうな雰囲気だから扉から離れておくべきだと思った。すると案の定すぐに面接を受けていたのであろう人が出てくる、深刻な顔をしていた。
「次はあなた? うちの隊、『黄鐘』に入隊希望でいいのね」