運命だ!ディスティニーだ!
ただひたすらに撃ち抜かれる敵を見るだけの仕事、それも今日で終わり。次はひたすらに何を見ようか、コモモ観察でもしようか。真面目に働こうか。
第2ポイント。ここでの仕事は既に終了していた。が、私たち黄鐘は何もしていない。着いた時には人がもはや人の形を失い、ドロドロに溶けていたりガチガチに固まっていたりと、吐き気を通り越して笑うしかない。
実際、この悲劇を起こした張本人は笑っていた。やったのは宿木のリーダーにして私の兄、ザクロだ。彼の白衣は血に染まる事なく、その残酷さを引き立てるかのような純白を守っていた。
一足遅かった私たちを見つけ、ゆっくりフラフラと横に揺れながら近くに来る。依然、不気味にケラケラと笑い続けているその姿は、妹から見ても不気味以外の何物でもない。
「ご苦労ご苦労。君らのスナイプ見てたよ、グレイト。素晴らしかった」
部下たちは兄さまのお褒めの言葉をいただき、「もったいなきお言葉」などと馬鹿丁寧に対応している。
「兄さま、一体いつこちらまで来られたのですか。先ほどまで姉さまと城門前を攻めていたはずです」
媚びを売る馬鹿な部下たちを無視し、兄さまに尋ねる。私は確かにミラの能力で戦っている兄さまを見た、間違いない。
やや呆れた顔をし、ずれたモノクルを直しながらため息をひとつ吐く。間をおいてから語り始める。
「この間、高速移動とかできちゃう新人が来てね。ここまで言えばマイシスターなら解るだろう。それを使っただけさ」
「なるほど納得です。また1人犠牲にした、そういうわけですね」
狂った兄に私も呆れ果て、嫌味を全面的に押し出して返す。すると態度が豹変し、
「犠牲? 我が妹ながら馬鹿だな、同情する価値無しだ。全ては我が能内で生きている、それがどれだけ名誉な事であり幸福であるか……ん?」
化け物のように恐ろしかった表情が突然いつもの不気味な表情に戻り、目線は私から私の背後の何かに移った。
兄さまはその何かに向かう。目の前からいなくなると、わたしは腰が抜けてその場に座り込んでしまった。威圧されていた、正直ビビっていたのだ。
逃れられた事でホッと安心する。が、気になるのは兄さまが見つけた何か。振り返ってみると以前と同じような光景がそこにあった。
「あなたは何時ぞやのプリティガール! あなたと再び会えるなんて、これは運命、ディスティニーだ。今からでも遅くない、是非我が宿木に異動しないか?」
「い、いえ……、その……こ、困り…ます…」
ナンパする兄、ザクロ、可能な限り全力で拒否するミラ、まだ諦めていなかったようだ。




