表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に叛く異草花  作者: にぼし
12/42

閉じた瞳

「今、何て言ったの?」

「捨てる、ヴァルハラとリンドウを捨てる、そう言ったよ」

 コモモに言われて1日考えてみた。よく考えてみれば、私のしていた事はバカな事だ。そうする理由も、それを続けて自分が死ぬ理由もない。気がつくのが遅かった。

 昨日と同じシュチュエーション。違うのは、薬が私の手ではなく、コモモの机の上に乗っているという事くらい。必要がなくなったから返した。

「………」

 黙り込むコモモ、この人が言いたかったのは、そういう事じゃなかったのだろうか。私の思考は、この人とは違う方向に働いたのだろうか。私に背を向けて棚に薬をしまうコモモからは、何も感じ取れない。

 自分の結論だけど、少し不安になり口を開く。

「気がついたの。私は目を開けていた、って」

 振り返る様子のないコモモから目線を外し、設置されている窓にやる。遠くで煙が昇っているのが見える、爆発が起こったのだろう。窓の隣のボタンに魔力を当て、シャッターを下ろす。

「こういう事。目を閉じれば何も見えない、当然だけどね。私はバカ真面目に目を開けて見ていた、目蓋って便利なものがあるのにだよ。自分の事だけ考えてみたんだ、姉様の言う通り私はいてもいなくても一緒なんだよ」

 極めて明るく振る舞う。自分の結論は諦めてのものではない、と、後ろを向いているのではない、と伝えたかったからだ。むしろ前を向いた結果、コモモはこっちを向いてくれない。

 それでも口を動かし続ける。

「捨てる、未来は考えない。笑いたいでしょう? でもここでは笑えないの。だったら捨てて逃げればいい、かくれんぼみたいに、隠れてクスクス笑ってればそれで幸せ。……外界に行くわ」

「……!」

 コモモの肩がほんの少し上がる。理由はわかっている、それは罪だからだ。ヴァルハラからの渡界、逃亡は大罪、追われて消されるのが運命。それを思っての事だろう。

「大丈夫、怖くない、死ぬよりはね。私の能力があれば…」

「もういいわ」

 話を切られる。ようやく振り向いたコモモは、笑っている。

「私もついて行く」

「………うん、安心かな」

「そりゃね、泣いてる娘を1人で行かせられないわよ」

 その言葉で自分の頬に何かが伝っているのに気がつく。指で拭ってみると、その通り涙で指が濡れる。なぜか笑いがこみ上げ、クスッと笑ってしまうと、もう涙は止まらない。

「ふふっ……私弱いなぁ」

「よくわかってるわ」




「………コモモさん、ヒナ様…」

 自分の能力を使い、壁越しに話を聞いていた。話が進むにつれ、鼓動が早くなっていった。

「あれっ、ミラ何してるの?」

「ひゃっ⁉︎ せ、先輩…、えっと…少し目眩がしまして…」

 早くなった鼓動は一気にスパーク、怪しすぎる言い訳と一緒に、冷や汗が出てくる。

「大丈夫なのか? 汗もかいてるし、もし熱があるなら寝てなよ。そろそろリンドウがヴァルハラを制圧する作戦がはじまる、薬の大量生産が始まるぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ