計画
「コモモさん、これ在庫です」
「ええ、ありがとうミラ。うーん…傷薬が減ってるわね」
兄さまは軟派だと発覚してから数日、結局、ミラはコモモの所で働くことになった。兄さまは思い切り悔しがっていた、それこそ狂ったように。ミラの能力を知られたのか、なんにしろ、最悪の結果を避けられて良かったと思う。
2人を見ていると、なんだか姉妹のように思えてくる。自身の部屋で薬の量産をするしっかりした姉、在庫を確認して足りないモノを教える控えめな妹、こんな姉妹っていいなぁ、と思わされるから辛い。
ミラの働きぶりをチェックしに来たのだが、しっかりやっているようで、人見知りも減ったかのように思える。私にも「ヒナ様、今日はどんな御用ですか?」と明るく接してくれた、嬉しい。
「傷薬はいくらあっても足りないからね。もっとも、薬を使って治る程度の怪我なら、だけどね」
嫌味のように聞こえたかな、でも実際問題、「怪我」というよりは「致命傷」の方が多い。それを治すのは、いくらコモモの薬が凄くても無理、それを含めた言葉。
「そうよね、今ハレン様から注文されている薬があれば、そんな心配もいらなくなるのだけれど、それはヒナに逆らう事と同義だし、世界に対する何よりも重い罪になる。だから、完成はしたのだけれど渡してないのよねぇ…」
浮かない顔をし、コモモがビンに入った白い粉薬を振り振りしている。禁忌の薬…とか言い表せばいいのだろうか、コモモの話からすると相当危なそうだ。
「姉さまがどんな薬を欲したのか知らないけど、というか、知らないから聞くのだけど、それ何の薬なの?」
「不死の薬」
「ふーん、確かにそれは犯罪だ。まぁ、ここにそれを裁く法律はないけれど」
なるほどそうか、姉さまが不死の薬をね。あの人ならやりかねないわ。兄さまも欲しがるだろうけど、コモモを見る限り渡すつもりは毛頭ないのだろう。
「なんで作ったの、私用かしら?」
当然の疑問だ。ミラは私達の話に発想が追いつかずにまたオロオロしている。これも当然、不死なんて、軽く到達できるモノじゃないから。
「職業病、かな?」
「納得、職業病を治す薬は作れないの?」
「無理よ、不治の病だから。それに楽しいし。あ、そうだミラ、薬の材料を倉庫から持ってきてくれるかしら」
ポカンと口を開けていたミラが、近くの戦場にでも飛んでいた意識が戻ってきたかのように、大きな声で元気よく返事をして倉庫に向かう。部屋にはわたしとコモモ2人だ。
「……で、どうするの」
今度は笑顔とは言えないが、笑顔でないとも言えない、というような感じの表情で私に尋ねてくる。用はおそらく、というか絶対にアレだろう。
「そろそろ実行にうつすよ。周期的にはもうすぐだ」




