終わらせたい
このシリーズは不定期、短めで更新していこうと思っています。
異草花と読みます、無理やりです。
現在私が投稿している小説、「世界に捧ぐ幻想花」の第1章に繋がる話です。
「お母様!」
機械的な扉が開き、大きな声が流れてくる。中にはベッドに座り赤ん坊を抱いている女ともう1人、医者のような格好をした女がいた。
「ハレン、ザクロ、あなたたちの妹よ。可愛いでしょう」
「はい、これでザクロもお兄さんだからね、わたしに甘えてばかりではかわいい妹に示しがつかないよ、」
「分かっていますとも姉さま」
新しく生まれた生命に姉弟は感動している、この小さな命が2人の新しい家族、この小さな命が2人の新しい未来…
「ハレン、名前考えてくれたのよね、何に決まったの?」
「はいお母様、ヒナはどうでしょうか」
「ヒナ…ヒナ・リンドウ、いいわね。お父様が戦場から帰ってきたら教えてあげて」
この日、ヴァルハラに生まれたこの命、この小さな命が2人の…2人の軍の新しい戦力……
「ヒナ! あなたはまた部下の指導をさぼって、何をしてたっていうの、嘘言わずにはっきり答えなさい!」
軍隊長室、私のお姉さまの部屋だ。今日もそこでいつものように私は叱られている、当然聞く気はない。
それにその言葉はもう耳にタコができるほど聞いた、それに大声出されて耳が痛い。そして私もいつも通りの返しをする。
「コモモと一緒にいた、それだけ」
「またなのね。はぁ…どうしてあなたはそうなの、何百年と続いているこの戦争を終わらせたいんじゃなかったの?」
ふん、私の考えなんて何もわかってないくせに。
「お姉さま、それは違うの。たしかに私は戦争を終わらせたい、でもお姉さまのそれは勝つ事、私の考えているものと違うの」
私の求めているものは平和、この数百年続く戦争にどんな意味があるのか、子供の私にはわからないけど、少なくとも無駄ではあると思う。
「ヒナ、あなた自覚はあるの?」
「ないよ」
「馬鹿妹! シャキっとしなさい、あなたはヴァルハラで最も名誉ある勢力、リンドウのまとめ役の1人。私とザクロのチームは兵の強さも一流、なのにあなたは……」
睨まれてるなぁ…そんな目で見られても困る、私が何をしたっていうの。何もしてないから怒られているのだけど、そんな事別に問題じゃないのに。
「どうせ私の分隊は落ちこぼれ集団、戦力にならないからって落としておいて、よくもそんな事が言えるね」
「あなたも落ちこぼれよ、戦死したお父様になんて言えばいいか…リンドウの恥さらし」
恥さらし、この言葉…嫌いじゃない。
「結構、わからずやのお姉さまもお兄さまも大嫌い」
クルッとお姉ちゃんに背を向け部屋から出る。怒りの感情はなかった、いつもの事だし。それに怒ったところで何の解決にもならない。仕方ない、今日は新しい子が来るらしいし、顔を出しておきましょう。