第4話(1)
第4話
10年後の復讐。それは突然起こったのでした。
ある日、美由紀が転校してきた日の10年後、2007年10月3日の出来事でした。水嶋中学校に、桜井瑞希という女の子がいました。その子の親の友達は、美由紀を殺した村人の娘でした。瑞希はその人と仲がよかったため、美由紀の話を聞いたことがありました。その美由紀が殺されてから今日がちょうど10年目だということも知っていました。
「梓ー美由紀の呪いって知ってる?」
「美由紀? 誰?」
「なんか、赤い目をした子らしいんだけど」
「赤い目? そんなのそこにもいるじゃん」
雪原梓がさした指の先にいた子。その子は、確かに赤い目をしていた。そう、充血ではない、あの美由紀の目。
「どういうこと? ほんとに」
「は? なにが」
「美由紀の呪いで、赤い目になった子は死んじゃうらしいの」
「死ぬ? 馬鹿らしい。そんなの嘘でしょ」
「嘘だったらいいけど……でも」
「じゃあ、あの子が死ぬってことでしょ。ありえない」
「そう……だよね」
このときはそう思っていた。美由紀の呪いなんてあるはずないのだと。でも…次の日になってみて、私は驚きを隠せずにいた。なぜなら…先生がこんなことを言うから。
「2年4組の長谷川理香子が昨日、お亡くなりになった」
そう、長谷川理香子。この子は、昨日見た赤い目の子だった。私は思わず梓の方を見た。すると、梓もこっちを見ていた。すこし……震えながら。
昼休みになると、梓は私に話しかけてきた。その声は少し怯えていることが分かるようなか細い声。私に助けを求めてくるかのようで、私はすこし戸惑った。私だって、いつ赤い目になるかも分からないから、恐くて、助けてもらいたいのに。
「瑞希……どうしよう。呪い、本当だったのかな」
「梓……私もどうすればいいか分からないよぉ」
その後、沈黙が続く。私は声が出せなくて、何を言えば分からなくて焦っていた。そのしばらくの沈黙を破ったのはあいつだった。
「瑞希と梓じゃん。どうしたん?」
「冬夜……」
私の幼馴染の高橋冬夜。見た目はすこしかっこいいから、モテるとこもある。サッカーをやっていて、水嶋中のサッカー部の期待の星。フォワードをやっているストライカー。前の試合ではハットトリックを決めただとか。
「何、2人ともそんな深刻そうな顔してんの?」
「本当に深刻なの」
「何で?」
冬夜が興味深そうに目をキラキラさせながら聞いてくる。
「それが、美由紀の呪いが……」
「あ、俺知ってる。それが」
「本当に起こったの……」
「え……ありえないだろう」
「理香子ちゃんいるじゃん? 赤い目だったの。死んじゃった……」
「えっ」
冬夜はすごく驚いてる様子だった。でもこれは事実で、これから私達の身にも起こるかもしれない。だから……冬夜、助けて……
「俺等の周りに美由紀がいるってことか?」
その言葉に私はハッとした。忘れていた。美由紀の存在を。
「そう……だね。でも……どうすればいいの……」
「俺達が出来る事……」
そう、それが分からない。私達に何が出来るの? 私達は、この美由紀の存在を自らの手で消す事、それをするためには何もなくなるものはないだろう。ただ、自分のために、自らの手を汚すだけ、そう……考えるしかなかった。
「私達に出来る事、それを考えなくちゃいけないね」
梓は伏し目がちに言う。それが、私達をもっと不安にさせる。でも、梓が言う事は本当に私達の難題でもある。美由紀の存在を消すといいつつも、何をすればいいのかは分からない。
「そうだね。もう、復讐させないようにするってことだよね」
「そうか。なら殺せば……」
「殺してもダメだよ。元から美由紀は死んでるはずだもん」
「そうよ。もう1度殺したら復讐だって激しくなる」
「なら、美由紀がどうやって赤い目にしてるのかを探ろう。ずっと後をつけていれば、きっと分かるさ」
この冬夜の一言に私達は賛成だった。だから、美由紀の後をつけようと思った。でも肝心なことを忘れていた。美由紀がどこにいるのか分からない。それに、名前も変わっているかもしれない。これから美由紀の呪いをとめるのは、とっても長くなりそうだ。