第14話
「私、絶対許さない」
「なぁ、俺にも協力させてくれよ」
「え……」
「犯人探し。恵梨を殺した真犯人、ぶっ殺してやるから」
「でも」
「いいから」
「……うん」
犯人探しなんて、そんなものじゃなかった。だって、赤い目になることも、恵介とかの殺され方は尋常じゃなかった。人間の仕業だとは到底思えない。
「それでさ、赤い目について知ってる人が俺の知人に居るんだけど」
「えっ」
「今から行こう」
赤い目……。ただの呪いだったとしても、私達には関係のない話のはずだった。私はこんな話に首を突っ込んでいてもいいのだろうか。そう、突然不安になった。でも、龍の真っ直ぐな瞳を見ていたら、不安なんか一気に消えた。
――ピーンポーン
「あの、貴志さん」
「おう、龍やないか。久しぶりやな」
「貴志さん、赤い目について聞きたいんですが」
「……そうか。まあ入れ」
「はい。ありがとうございます」
『赤い目』という言葉を聞いた時、貴志の顔が変わったのが目に見えて解った。やはり、何かあるんだと。
「俺の名前は増田貴志。よろしゅうな。ちなみに、関西出身やねん。あ、自己紹介はここまでな」
「は、はい」
「そんで、何を話せばええんや」
「10年前の話だよ。10年前、赤い目はどうやって終ったんだよ」
「話は長くなるが、まあええやろう」
十何人が死んで皆が明け暮れていた頃、女性記者がある真実を発見した。それは、赤い目の事件に大きな影響を与える情報だった。赤い目には、呪いに罹ったことが解る証拠に、赤くなった目と、もう一つあるというのだ。それは、腕に赤く浮かび上がる文字だった。最初に犠牲者になったであろう本宮理沙は、おひつじ座を意味する『ひ』の文字。次の犠牲者は、おうし座を意味する『う』の文字。その上、その犠牲者達はみんな文字と同じ正座だった。
それからは、警察もたくさんの人が動き出し、史上最強のモノによる、凶悪殺人事件として捜査が行われた。しかし、この事件は到底人間の仕業とは思えなく、醜い姿での死が訪れる。捜査は難航した。新しい情報も無く、少しの手掛かりで捜査を続ける警官達。事情徴収だらけの捜査は、皮肉にも無意味と思われていた。
警察も諦めはじめ、捜査が打ち切りになろうとしていた頃、突然赤い目の呪いが忽然と姿を消した。それから世界は平和になり、今の時代では、赤い目のことを知る人物は数少ない。しかし、この出来事は絶対に裏があるはずだと考えている。ただ、それはなんなのか、誰もわからない。
「結局、未解決のまま……ってことか」
「そういうことや。誰が犯人なのか、どうして突然終ったのか、そんなの誰も解らないんや。でも、今お前らがここに居るってことは、赤い目がまた始まったんやろ」
「はい。俺の彼女は赤い目の被害になったんです。だから、絶対犯人を見つけてやろうって」
「もしかしたら、赤い目には犯人なんて居ないんちゃうか」
「え……」
「元から犯人なんて存在しいひんねん。きっと」
増田から、10年前の話を聞くことは出来たが、まだわからないことだらけだった。たった一つ、『腕に浮かび上がるあざのような物』が犠牲者にはあるということがわかっただけだった。しかし、これが事件解決への糸口となる、ということは、まだ誰も気づいていなかった。