第11話
私達が最初の発見者として警察の人に色々聞かれた。でも、私達は何も分からず、
「知りません」
としか答えなかった。正直、赤い目が関係していることは分かる。だが、そんな話をしても信じてもらえるはずがなく、信じてもらう気もなかった。それだけは秘密にしておいた方がいいと、自分自身でも思ったのだ。
それから一週間がすぎても、赤い目の新情報は得られず調査は進まなかった。しかし、赤い目の被害もなく、久しぶりに静かな日々が続いていた。でもそれはなぜか不安を呼び起こして、なぜか恐怖感が漂っている。そして私は、まだ美鈴と雪と仲直りをしていない。未だ複雑に糸が絡み合っている状態だ。
「美鈴……雪……」
「どうしたんだ」
「拓哉」
その拓哉とは、泉拓哉といい、同じクラスの男子。実は雪の恋している男の子。話しかけられるとちょっと気まずい。雪は高度の嫉妬症だ。少し話すだけで雪は怒る。めんどくさいけど、でもそんな雪がすき。
「んーごめん。なんでもないよ」
私はその場をなんとなくごまかした。雪に嫌われるのは嫌。とはいいつつ、もう雪には嫌われてるのかな。悲しいのか、目の奥が熱い。涙が零れ落ちそうになった。
「そ、ならいいけど」
拓哉はそれだけ言い、教室を後にする。階段を駆け下りる音がする。拓哉、休み時間だったのに私のこと気にかけてくれたんだ。ありがとう、素直に思った。
「ちょっと寒いな」
窓際の一番後ろが私の席。今日は風が強い。窓が開いていてたくさん風が入ってきた。窓を閉めようと席を立つ。窓の向こう側から聞こえる楽しそうな声が、私の耳に入ってくる。声は運動場で遊ぶみんなの声と、教室に居るみんなの声が重なり合い、なぜだかいつもより綺麗に感じる。ついでに、運動場を見てみると、目に入ったのは彼。汗をかきながら走り回る彼の姿が、眩しく見える。太陽の光のせいかな。その瞬間、後ろから声がした。
「何見てるの」
びっくりして後ろを振り返ると、そこに居たのは雪と美鈴だった。
「穂乃香。ごめんね。あれからふたりで考えたの。私が馬鹿だった。穂乃香は私たちのことを考えてくれていただけだったのに。私自分のことで精一杯で……。ごめんね。本当に……」
「穂乃香……ごめんね。私も二人のこと大好きだよ」
私は涙が溢れ出しそうなのを必死に堪えた。だけど思いは虚しく、涙は私の目から零れ落ちた。二人に抱きつき、思いっきり泣く。好き、好き、大好き。気持ちが涙に変わり、大量にあふれ出る。
もう涙が枯れ果てたかなというぐらいまで泣き崩れた。それから、少し落ち着いて二人に話をする。二人はゆっくり、何も言わず話を聞いてくれた。これから三人で居られることが嬉しい、その気持ちでいっぱいだった。
「穂乃香。今日、いつものカフェよってく」
「うん!」
また平和が戻ってきた、そう思った。もう赤い目のことなど忘れて、ちゃっかり幸せ気分を満喫していた。なんて私は馬鹿だったのだろうか。赤い目を忘れて、後に何が残る? これから大変なことが起ころうだなんて私には分かるはずもなかった……。