第10話
ただやみくもに走る。どこへ走っているのか分からなかった。でも、いつのまにか悠樹さんのクラスへと走っていた。教室につくと、悠樹さんの姿は無かった。それもそうだ、と思いながら教室の窓からグラウンドを覗いてみた。そこには、ありえない方向に曲がった手足と、白目をむいている悠樹さんが居た。
「え……悠樹……さん」
急いで階段を駆け下り、悠樹の元へと向かう。
「悠樹……さん? 悠樹さんだよね。なんで? ねえ、なんで」
そこに、美鈴と雪もやってきた。
「悠樹……」
その一言だけをいい、美鈴は泣き出した。大声で号泣している美鈴に、私は何も言えなかった。ただただ、可哀相で、見ているのも辛くなってこの場から逃げ出したくなった。
悠樹の手の辺りから、赤い血が点々とグランドの向こう側まで続いていた。それがとっても気になった私は、ゆっくりとその赤い血を辿って歩いた。
「んっ」
そこにあったものは、全身が真っ赤に染まり、白目をむいている恵介の死体だった。それはもはや、人間ではなく、今までに見たことのないような醜い姿だった。
「恵介……」
雪も来て、一言呟く。雪の声は震えているようだった。もしかしたら泣いているのかな、なんて思ったから雪のほうを向くことが出来なかった。でも、恵介のことをずっと見ているのもなんか酷で、私は後ろを向いた。でも、そこには校舎に大きく書かれた『コロシテヤル』の文字があった。それは、赤い色、つまり赤い血で書かれたものだった。
「何……あれ」
「ん。どした」
「校舎にコロシテヤルって」
「何あれ! なんか怖いよ」
「でも……これで終わりってこともあるかもしれないよ」
私はバカだった。こんなんで終るはずが無い。あの美由紀が、私達への復讐をこれだけで終らせるはずが無かった。そう、これは
終わりではなく
これはまだ始まりにすぎなかった――。