第9話
「穂乃香……」
「雪、美鈴?」
「穂乃香さ、なんか忘れてない」
突然だった。何のことを言っているのか全然分からなかった。忘れてる? 何を……。知らない、そんなの分からないよ。
「え……」
「穂乃香、私たちのこと大事な友達だって言ってくれたよね? なのに、何であの時mmを返してくれなかったの?」
mm……。そうか。分かったよ。私が2人に振り回されてるから、もうmmするのがめんどくさい、そう思った時だね。でも、あれは……。
「ごめん。あの時疲れてて、寝ちゃったんだ。だから気づかなかったの。その後はもう返すの忘れてたよ。二人のことで頭がいっぱいでさ」
「そんなのただの言い訳じゃん」
「そうだよ、穂乃香ひどいよ」
その言葉を聞いて、私は思わず言ってしまった。
「なにそれ。mm返してたらよかったの? そんなの二人だってたくさんあるじゃん。ひどいのはそっちでしょう。ありえないよ、何でそんなこと……。私は大事な友達だって、本当に思ってたんだけどな……。でも二人はそう思えないってことだよね」
怒りが爆発した。でも、それとともに悲しさや淋しさも爆発した。今にも涙があふれ出そうな勢いだった。
「そうじゃないけど」
「知らないよ。だって、私のことをそれっぽっちのことで怒ってるんだよ。意味が分からない。もういいよ、もういい……」
いやだった。もう話すのも嫌だった、家に帰って一人になりたかった。でもそれは無理だった。美鈴に電話が掛かってきた。
「そんな……」
「何」
雪が聞き返す。
「悠樹が……突然居なくなったって」
そこには、ただ
沈黙が流れた。
きっとそれは、赤い目の仕業。
私達の友情が砕け散った今は、
もうそんなこと考えられる余裕が無かった。
でも、悠樹さんが死んでしまったら
もう元には戻れない。そんな気がした。
私は無意識に
動き出していた――。