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スフィンクスとキマイラ

■スフィンクス


 スフィンクスはエジプト神話を発祥とする、身体が獅子で頭部が人間という姿の獣である。

 エジプトにおけるスフィンクスは王権=ファラオのシンボルあるいは神々の化身とされ、古来より人々に崇められていた。王権を象徴する幻獣としては中世ヨーロッパのドラゴンも挙げられるが、これは古代エジプトと比べればだいぶ最近の話である。

 ギザの大スフィンクスは、ファラオを模したものとして有名である。定説では、紀元前2500年ごろ、第四王朝カフラーの命により、第2ピラミッドと共に作られたとされる。このスフィンクスは獅子の身体に男性の顔を持ち、古代エジプト美術様式の三つ編みにされたあごひげがついていたとされるが、今では破損してあごひげは無い。その顔は古代エジプトのファラオを模したものであり、大スフィンクスは王の偉大さを象徴するものとされた。

 ただしエジプトのスフィンクスすべてが王の顔を持つというわけではなく、中には、獅子の身体に、さまざまな動物の頭部を組み合わせたものもある。

 例えば、カルナック神殿にあるスフィンクスは、獅子の身体に山羊の頭部を持つ姿をしており、そのほかにも隼や鷹の頭部を持つものもある。

 これらはエジプト神話の神々を模したもので、牝羊はエジプト神話の主神とされたアモン、隼や鷹は天空と太陽を司るホルスをそれぞれ表していたとされる。

 こうしたことから、エジプトでのスフィンクスは、偉大な王あるいは神の象徴で、人々を守護する神聖な存在とされた。性別はオスであった。

 

 ちなみにナイル川の流れるエジプトにおいては、ワニはワニというだけで神聖なものとされるのが普通で、ドラゴンのような抽象的な存在へと進化することはなかった。セベク神はワニそのもの、またはワニの頭を持ち、角・太陽円盤・羽根を組み合わせた頭飾りを付けた男の姿で表される。

 

 

 ギリシャ神話のスフィンクスは、テューポーンあるいはオルトロスとエキドナの「娘」で、獅子の身体と女性の顔、さらに鷲の翼を持つ怪物とされる。メソポタミア神話でも同様の扱いを受け、人々の死を見守る存在と見られていた。

 ギリシャ神話のスフィンクスは高い知性を持っており、謎解きやゲームを好むとされた。このスフィンクスにまつわる物語として有名なのは、旅人に謎かけをするものであろう。

 女神ヘラから、堕落したテーバイの人々を懲らしめるよう命じられたスフィンクスは、テーバイにあるフェキオン山に棲みつくと、そこで通りかかる旅人を捕らえては謎かけを行い、謎が解けぬ者を喰らうようになる。

 

「朝は4本、昼は2本、夜は3本足で歩く生き物はなにか?」


 テーバイの人間は誰もこの謎を解くことができず、多くの者がスフィンクスに喰い殺された。そんななか、オイディプスという青年だけは、その答えが「人間」であると見抜き、謎を解かれたスフィンクスは、悔しさのあまり崖の上から身を投げて死んだという。

 

 

 総合するに、古代エジプトでのスフィンクス信仰(ファラオであり、神であり、男性)→古代ギリシャ神話(スフィンクスはここで神から怪物へと凋落ちょうらくし、女性化)→ローマ帝国、中世ヨーロッパではギリシャ神話の一部、創作のモチーフとして生き延びる、という流れが見て取れるだろう。

 

 

■キマイラ


 一方ギリシア神話では、古代エジプトから伝わったスフィンクスを吸収する一方、独自の様々な合成獣が生み出されていた。その筆頭が、キマイラ。頭は獅子で胴体は山羊、尻尾は蛇という姿の怪物である。容姿には諸説あり、獅子と山羊と蛇の三つの頭を持つともいわれる。

 キマイラはその姿が奇妙で現実的ではないことから、今日においても「不可解な物事」のたとえとして使われる場合がある。また、生物学における「キメラ」の語源ともなった。

 

 古代ギリシアの詩人ホメロスの『イリアス』において始めて登場したとされ、そこでは前述のような特徴と共に、「人間ではなく神族に属す」と記されている。

 実際、キマイラの両親は半人半獣の巨人族テューポーンとエキドナとされる。テューポーンは怪物とされることが多いが、その血筋はギリシア神話の主神ゼウスと同じ、ウラヌスとガイアである。

 つまり、テューポーンとゼウスとは親戚関係にあるわけで、そういった意味では、その子であるキマイラも神族に属する者といえるだろう。

 

 ちなみに、キマイラは一般的にメスであるとされる。これは、この怪物を従えていたカリア王アミソダレスが、キマイラのことをたびたび「娘」と呼んだことに起因している。

 

 元はヒッタイトで神聖視された季節を表す聖獣で、ライオンが春、山羊が夏、蛇が冬を象徴していた。他地域の聖獣がギリシアに伝わり、メスに性転換され、怪物として退治されるという点においてはスフィンクスと境遇が似ている。

 

 キマイラは中世のキリスト教では、主に「淫欲」や「悪魔」といった意味付けを持って描かれた。あるいは、元の動物がなんであっても、合成獣をひとまとめにキマイラと呼ぶようにもなっていった。

 

■合成獣とは何か

 

 多くの合成獣は決まって陸上最強の肉食獣である獅子ライオンをモチーフにしている。また、スフィンクスにおいては、空を飛ぶための翼があとから付与されていたりする。当時は翼があれば誰でも空を飛べると信じられていたのだ。キマイラにおいては、しっぽも毒蛇として有効活用している。

 ファンタジーの世界ではキメラといえばもはやなんでもありを意味する語で、鳥の頭と翼を持つ蛇の姿であったり、ハエ人間であったりする。TRPGテーブルトークアールピージーにおいては、二つ首三つ首は当たり前。出会えばパーティー全滅もありうる強めのモンスターとなっている。トレーディングカードゲームであるマジック・ザ・ギャザリングにおけるキマイラ像は、亀の姿で描かれている。

 

 いずれにせよ、

 

「僕の考えた最強のモンスター」

 

 それが神話の根底にあったことは、いかに賢明な学者といえども否定できないであろう。


 最後となりますが、多くを「幻獣イラスト大事典Ex」および「Wikipedia」より引用させていただきました。この場を借りて感謝致します。

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