バハムートとリヴァイアサン
「でっかいは正義!」ということで今回はバハムートとリヴァイアサンについて。
両者はどちらも水属性っぽい存在なのですが、イスラム教とキリスト教という差があります。「FFシリーズ」や「バハムートラグーン」、古いところでは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のせいで竜のイメージが強いバハムートですが、れっきとした「お魚さん」です。対してリヴァイアサンは、地の獣ベヒモスと対を成す「海の獣」というイメージが強いです。
■バハムートは、もともとはイスラム神話に登場する巨大な魚であった。
イスラムの神が天地創造を行ったとき、大地を支える土台が無かったため、天使を創って大地を支えさせた。しかし天使を支えるものが無かったため、神はルビーの岩で作った山を置き、そのルビーの岩山を支えるために巨大な牝牛クジャタを置き、さらにクジャタを支えるために巨大な魚であるバハムートを創り出したという。
「バハムートの鼻孔のひとつに海を置いたとしても、砂漠に置かれた芥子菜の種のように遥かに小さい」と言われている。
ちなみにクジャタはイスラエルで伝えられている大きな聖なる牡牛のことで、巨大な魚であるバハムートの背に乗っており、四千の目、耳、足を持つとされる。ある目から別の目へ、あるいはある耳から別の耳へ移動するには五百年かかるという。これはこれで途方も無いサイズです。
地の獣ベヒモスの綴りがbehemothに対し、バハムートの綴りはbahamut。ベヒモスがイスラム圏に伝わったときに、アラビア語としての読みに変化したのではないかと言われている。このときリヴァイアサンの特徴との混同が起こり、「お魚さん」として伝わったのでは、という説がある。
■リヴァイアサンは、地の獣ベヒモスの対を成すものレヴィアタン(leviathan)として旧約聖書に出てくる。ヘブライ語で渦を巻くという意味の「liwjatan」が語源のこの怪物は、カナン人のウガリット神話に起源があるとされる。
その神話では「曲がりくねった蛇」「七つ頭のとぐろを巻くもの」と描写されており、これは旧約聖書におけるリヴァイアサンの描写とほぼ一致する。
旧約聖書の『ヨブ記』には各部分の詳細も書かれており、それによればリヴァイアサンの体は、鋭い陶器の破片が並べられたかのような腹と、風の吹き込む隙間も無いほどびっしりと盾に覆われた背中を持ち、あらゆる武器が通じないとされる。また口からは火炎が、鼻からは煙が吹き出し、神々も恐れおののき逃げるほどの存在であり、すべての誇り高い獣の王とされた。
「彼はおののきを知らぬものとして造られている。驕り高ぶるもの全てを見下し、誇り高い獣全ての上に君臨している。」
中世になるとキリスト教の伝播にともない、リヴァイアサンはめでたく地獄の海軍大提督という地位に「就任」し、七大罪のうちの「嫉妬」を司る大悪魔として知られることになる。その姿は巨大な蛇やドラゴンとして描かれ、悪の象徴とされた。大航海時代には、船を沈める恐ろしい魔物として実在を信じられていた。
単に(海にいる)大きな怪物という意味合いで使われることも多く、17世紀イギリスの政治哲学者トマス・ホッブズの著書のタイトルにも使われている。
■比較
比べてみると大きさではイスラム世界を支える大魚バハムート(あるいは竜としてのバハムート)が圧勝しているのですが、「世界的に見てどちらが有名か?」と問うならば、海の怪物リヴァイアサンに軍配が上がります。キリスト教が悪魔の筆頭に指名したことで、むしろその知名度と影響力は増しました。また、バハムートと違い「もしかして実在するのでは?」と信じられるサイズだったことも重要だったと思います。
地球が丸いことが分かるにつれて、また宇宙がどうなっているかが分かるにつれて、天動説に基づくイスラムの天地創造は比較的マイナーな神話になっていってしまいました。しかし先述した日本のゲーム等によって、バハムートは水を司る善きドラゴンとして復活しました。これを期に、イスラムの創世神話にも光が当たり、その「お魚さん」としての特徴が明らかになることを願うばかりです。
最後となりますが、多くを「幻獣イラスト大事典Ex」および「Wikipedia」より引用させていただきました。この場を借りて感謝致します。