裏 疑い
テロドヌス マルテテス宅 P1286年11.27
宴会の後、サキ(キノ)はメアリの絡み酒をどうにか抜け出した後、眠りについた。
その翌日。
(何だか疲れる...とりあえず、彼もやっぱり生きていることがわかりました。
...他の国の様子でも見て回りますか)
サキは友達がまだ生きていることで、安心した。
(自分がまた一人になるかと思うと、キツイものがあった...)
自らの死を体験し、異世界という孤独の中で得られた友がとっくの昔に死んでいたという事実は、サキにとって穏やかな気持ちにはなれないものであった。
しかし、自分を知っている存在がまだいる。
そのことだけで、サキの気持ちは明るくなっていた。
____________________________________
「はい。ありがとうございます。」
サキは、マルテテスに別れのあいさつをしていた。
未だ目の覚めないメアリと柏崎は寝かせたままにしている。
サキは昨日、自分を見捨てたマルテテスを恨めしそうな目で見つめている。
「う、うむ。気をつけるのだぞ!」
何となく気まずいのか、マルテテスは額に汗を流しながら頷いた。
「私はここから北の方角へ行こうかと思います。柏崎さんたちによろしくお伝えください。」
サキは、マルテテスの反応に満足したのか普段通りの目に戻る。
「うむ!昨日の報告は、こちらで済ませておくことにしよう。」
マルテテスは、町長としての仕事(面倒な事務処理)を町長補佐に丸投げする決心をした。
なお、マルテテスの町長補佐は、一週間寝ないで仕事を完遂した。
町長補佐は過労で入院することになるが、どうでもいいことである。
「そういえば、昨日、南にしばらく行ったところに先ほど騎士のような人々を見ました。魔物と殺しあっていたので止めましたが...」
サキは、マルテテスに世間話でもするような感覚で話を振る。
「何!それは本当か!?」
マルテテスは目を見開き、飛びつかんばかりにサキに詰め寄った。
「はい。それがどうしましたか?」
サキはマルテテスの食いつきに驚いた。
驚かない方がどうにかしているが、サキにとっては割と当たり前の感覚である。
3000年前、基本的に旅行感覚で戦場などの危険地帯を巡り歩いたサキにとっては、この世界で魔物と人間が殺しあうのはほぼ常識と化している。
もちろん、そんな常識は今も昔もサキだけである。
「そんな馬鹿な!!」
(ここから南はイルゥシン王国跡のはず!
人間だろうと魔物だろうとあの聖域に足を運ぶはずが...)
サキのそんな内心など露知らず、マルテテスは驚愕して体が震えている。
(何を驚いているのだろう?
この世界だと割とよくあることのような...)
サキは、異常な基準でものごとを考えているのに、気づいていない。
「ありがとう。こちらでそのことについても調べておこう」
(いずれにしても、きな臭い...トーラ協会にイルゥシン王国?
なぜこの二つがここへ?まさか...いや、それはない。)
マルテテスは平静を取り繕いながら、話を続ける。
「はい。では今度こそ失礼します!」
サキはそう言うと歩き出した。
しかし、数歩歩いてふとあることを思い出した。
サキはマルテテスに向き直り、こう言った。
「ジェニカ君に伝えておいてください。
しばらくしたら金貨を返しに行きますって!」
言い終わるとサキは振り返ることなく、北の方角へ向かう。
それを聞き、マルテテスは茫然と立ち尽くすことになる。
しばらくし、マルテテスはメアリたちの様子を見に行くことにした。
「キノ殿...あなたも××なのか?」
マルテテスの呟きは誰にも聞こえなかった。




