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サキの伝記外伝  作者: kohet
第二章 過去の伝説
28/32

常識

回想 『この世の地獄』 K87年10.5





「病気というものは、私が思うに全体的なものと個別的なものに分かれると思うんですよ。」

ウィンプルで頭を隠した修道服の女性が口早に言う。



あの運命的な出会い?の後、

女性はサキを捕まえたかと思うと『いつの間にか』空いていた小屋に放り込んだ。

テテはあまりにも突然の女性の行動に文字通り『何もできなかった』。

今、小屋にはサキと女性だけの二人だけである。

女性とサキは机をはさんで向かいあっている。

先ほどから女性がサキに一方的に話かけている状況である。




「局在性の明らかであるものとないものの区別ですか?」

サキは女性の顔色を窺いながら尋ねた。



(この女性やはり侮れない。この世界、この時代で病気というものを体系化している…)

サキはそう思って目の前の女性に対する警戒を強めた。

サキは目の前の女性が少なくとも今の自分では敵わない圧倒的格上と判断していた。




突然自分の認識外から現れた。

サキは敵う相手ではないと判断し、女性の『被検体になってくれ』というわけのわからない『命令』に従ったのだ。

テテが危害にあわないようないように間髪で入れずに即答で。

さらに、目の前の女性は学問を体系化していた。

元の世界でも15世紀頃にようやく学問を体系化したというのに。

極めつけは、サキを『いつの間にか』空いていた小屋に放り込んだという事実に。

サキはこの女性を警戒していた。




「そうです!でも、この魔法病というのはどうも区別がわからないんですよ。」

女性がサキの答えに満足したような顔をする。


「あれよくわかんないですよね。特定の部位に症状が現れたかと思って治したら、別の部位に突然症状が現れ出す...」

サキは警戒しながらもテテを魔法で治そうとした時のことを思い出す。




サキが魔法で調べた際、肝臓の辺りに病原があるとわかった。

サキは自分の覚えている限りの魔法を使い女性を治癒しようとした。

しかし、どれもあまり効果をなさなかった。治癒するとすぐにまた悪化してしまった。


世間一般で言うところの大魔法(サキはそう言われていることを知らない)を集中的に肝臓に当ててみた。

すると治りかけるように思えたが、突然肝臓の病原が消えたかと思うと腎臓の辺りに現れた。

その戸惑いから苛立って恐竜に大魔法(以下略)を放ったりした。(その恐竜は後にローンと名づけてペットにした)

どうにもならないのでやけくそで全魔力消費するという魔法使いにあるまじき手段に至ったわけだが、完治しなかった。




サキが感慨に耽っていると、

「そうなんですよ!なので私は思いました!!

この病気は体内で循環する魔力を伝っているのではないかと!!!」

女性が興奮した面持ちでサキに詰め寄る。



「...魔力を循環ですか?」

サキは思った『何言ってんだコイツ』と。




魔力というものは確かに体内にあるというのが当時の魔法の定説であった。

しかし、その魔力というのは心臓の付近を中心に存在しており、その心臓を中心に魔力を行使する。

従って、魔力は血のように循環するものではなく、ただ単に心臓付近にあるエネルギーというのが常識であった。




しかし、

『サキ君、常識は信じていいけど、守ってはいけませんよ?』

ふと、サキはある人物の言葉を思い出す。



(いや、しかしもしそうなら一応は理論上説明がつくか?)

サキは無論知っていた。この世界、いや自分の故郷、『常和』でさえまもなく21世紀になろうというのに未だすべてが正しいというわけではないということを。

そしてその間違いを正すことに人類はどれだけの時間を使うかということも。



『世の中にはね、未だに自分の考えが世界の中心だと思っている奴が多いんですよ?』

サキは再び思い出す、そういった人間にはなるなという男、野部の言葉を。




「この人だけ、数百年進んでませんか?」

サキは呟いた。



「何ですか?」

女性はサキの言葉が聞き取れなかったのか聞き返す。



「なんでもありません。それより...」

サキは女性の目をしっかりと見つめる。



女性の目はようやく話をまともに取り合ってくれる相手がいることへの喜びで満ち溢れているようであった。



「詳しく聞かせてもらえませんか?」

サキは女性に尋ねた。


サキはいつの間にか警戒よりも好奇心の方が強くなっていた。


「はい♪」

女性はなぜか嬉しそうにサキに言った。




フェルネルという人がいます。

彼は15~16世紀の人なんですが、

当時は個々の観察を集めることで満足していた時代でありながら、病気を特定の部位と関連付けをすることで学問を体系化した初めての人です。


16世紀になってようやくと思う方もいらっしゃると思いますが、学問を体系化するのってとても大きな発明なんです。


サキははっきりいってこの時代はいいとこ紀元前400~紀元前300年程度としか思ってませんし、事実その通りです。

読み書きが広まっていると思っているので、何て素晴らしい世界なんだろうとか思っていますが。

とはいえ、まだ文明の程度が古代ローマの帝政の始めすらどうか怪しい世界で、いきなりルネサンス期の体系化された知識が出てきたので驚いているわけです。


こういったところも一章でサキが3000年経っているのに全然気づかない要因なのですが…

それはまた別の話


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