表 トゥエ助教授の告白
シリアス
物語の根幹です。
エルゥファ大学資料室 P1286年12.12
ロードはこの日、トゥエ助教授に書類整理の手伝いをすると約束していた。
「すまんな。ロド。」
トゥエ助教授がロードに礼を言う。
「いいえ、ミストゥエ。私の方が言い出したことですので...」
ロードはトゥエ助教授にそう言って笑みを見せる。
「うん。そんなに人が良いのなら人から悩みを打ち明けられることも多いのだろうな。
それに引き換え私ときたら...」
トゥエ助教授はロードに感謝しつつも落ち込んでいるようであった。
「どうしました?ミストゥエ。ひょっとしてお悩みでも?」
ロードはトゥエ助教授のあからさまな様子にそう尋ねる。
「はっ!いや何でもないんだロード!!」
トゥエ助教授は慌てて否定の言葉を言う。
そこへロードは間髪入れずに、
「先生!!私は先生の味方です!!!悩みがあるなら言ってください!!!」
そうトゥエ助教授に語りかける。
「うっ!」
トゥエ助教授はロードのその言葉を聞いて感涙する。
そこへロードがトゥエ助教授を抱きしめる。
(落ちたな...)
ロードはトゥエ助教授が自分に悩みをこぼすことを確信した。
「実は...」
トゥエ助教授はロードにとって想定以上の話を話し始めた。
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エルゥファ大学二階 トゥエ助教授の研究室 P1285年6.15
「ファハハハハハハハ!!!!」
エル教授が狂ったように笑いながら、トゥエ助教授の研究室の扉を蹴破って中に入る。
「何回目だ!!エル!!!」
トゥエ助教授は毎回扉を蹴破るエル教授に向かって叫んだ。
「ファハハハ!!気にするなトゥエよ。いや、我が妻よ!!」
突然エル教授はトゥエ助教授に向かってそう言った。
「またか...寝言は死んでから言え!!!」
トゥエ助教授はエル助教授を蹴り飛ばす。
「ぐわぁあああ!!!」
エル教授はトゥエ助教授に蹴飛ばされて、二階から落ちる。
「ドォン!!」
エル教授が下の庭に落ちた。
「ふん!!死んだか。」
トゥエ助教授はエル教授がいた辺りに塩をまいた。
「酷くないか!!我が妻よ!!」
エル教授が庭から魔法で浮かび上がる。
「ちっ!死ななかったか。」
トゥエ助教授はエル教授を睨みつける。
エル教授とトゥエ助教授。こんなやり取りが学園内での日常光景だった。
しかし、この日はいつもと違った。
「フッ!まあいいだろう。」
エル教授がトゥエ助教授にそう言った。
「やっと戯言をほざく気がなくなったか。今日はお祝いだな。」
そう言って、トゥエ助教授は机の引き出しからケーキを取り出す。
「ファハハハハ!!そうだな。今日は祝いだ。私の分のケーキもくれ!!」
エル教授はトゥエ助教授にそう言う。
「はっ?...本当に終いか?」
トゥエ助教授は少し声に焦りの色を見せながら言った。
「ああ、終わりだ。」
エル教授は感慨深そうに言う。
「いや、まてやりすぎたか。ええ、ああ...」
トゥエ助教授は盛大に慌てふためく。
「どうした我が妻よ?」
エル教授は不思議そうにトゥエ助教授に尋ねる。
「ああ、良かった。いつもどおりだ。」
トゥエ助教授はホッと胸をなで下ろす。
「そうか、我が妻よ。もう知っているのだな!我が悲願熟せりし時を!!!」
エル教授はトゥエ助教授に高らかにそう宣言する。
「はぁ...なんだそれは?」
トゥエ助教授は訳がわからないという顔をする。
「とぼけなくてもいい。私が六歳の頃、約束しただろう?サキの伝記を読んだときに。
無属性魔法の正体を掴んだら結婚しようと!!!
その約束のため、エフ族のお前は私を30年も待っていてくれたのだろう?」
エル教授はトゥエ助教授に昔の約束の事を言う。
(あれって確か研究所を持てるくらい偉くなったらじゃあなかったか?)
トゥエ助教授は自分の記憶とエル教授の記憶の齟齬があったことに驚いていた。
そんなことはお構いなくエル教授は続けた
「愛の力とは偉大なり!!!ついに私はたどり着いた!!!!とはいっても多分一端なのだがな...
しかし、正体は掴んだぞ!!トゥエ!!!さあ結婚だ!
様式は何がいいか悩むと思って教会からパンフレットを買ってきた!!!!」
エル教授は教会の結婚式のパンフレットは無料であり、詐欺にあったことも知らずトゥエ助教授に言った。
「ちょっと待て!!!クリアの正体はなんだったんだ?
リファス王国辺りにでもその内容を知らせるべきではないか?」
トゥエ助教授はリファス王国の存在理由を知っているためにそう言う。
「ん?なぜだ我が妻よ。研究はみんなのものだ。
私だけというのはもちろん。それが尊敬すべき魔法大国でもだぞ?」
エル教授はリファス王国の存在理由を知らないため、トゥエ助教授に尋ねる。
「それは...」
トゥエ助教授はエル教授にリファス王国の存在理由を話す。
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「それは本当か?トゥエ。」
滅多に見せない真剣な顔でエル教授はトゥエ助教授に尋ねる。
「あ、ああ。」
トゥエ助教授は頷く。リファス王国が魔法クリアの正体を知るためにテテが作った国であると。
「...ひょっとしたら、サキ様は魔法クリア、いやなぜ文献を残さなかったのか...あの発見?」
急にエル教授は独り言を言い始める。
「魔法、魔素...想定外の死。唯一の文献『大魔法書』...まさか!!」
エル教授はあることに気づく。
「どうしたんだ、エル?」
トゥエ助教授はそんなエル教授を心配する。
「すまん。トゥエ。私はしばらく自分の研究室に籠る。」
エル教授はトゥエ助教授にそう言った。
「どうしたんだ!!エル!!!」
トゥエ助教授はエル教授に叫ぶようにして言う。
「...すまないが研究室には誰も入れないようにしてくれ。」
エル教授はそれだけ言うとトゥエ助教授から逃げるようにそこを去る。
「エル!!!!」
トゥエはエルに向かって叫んだ。何かよくわからないが、とてつもなく嫌な予感がして。
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エルゥファ大学資料室 P1286年12.12
「その一ヶ月後、やつの、いやエルの研究室が燃えた。」
トゥエ助教授はそうロードに言った。
「エルは火の不始末と言ったが多分違う。エルの目は燃えたことでホッとしているようだった。」
トゥエ助教授は泣きそうになって言葉を続ける。
「そしたら、エルが言ったんだ。『約束は守れない』って。」
トゥエ助教授は泣いた。
「あいつはそれから人のことすら気づかず、評判の良かった授業もただしゃべるだけになった。」
トゥエ助教授は泣きじゃくりながらそう言うと倒れこむ。
「わからないんだ。あいつは深い悩みを持っている。それだけはわかるのに。私には何も...」
トゥエ助教授はそう言った後はしゃべりもせずに泣き続けた。
ロードは任務すら忘れ、ただトゥエを抱きしめることしかできなかった。
サキは実はクリアを公表してもよいと考えていました。
しかし、もしサキは今が3000年後と気づいたら死んでも公表はしないでしょう。
おまけ
「表 エルゥファ大学内で その2」でのトゥエ助教授の発言について
あの時点でトゥエ助教授はエルの人間性が変わってしまった
魔法クリアに対して悪感情を持っています。
従って、あっさり存在を否定する言葉が出てきました。
ロードの発言はトゥエ助教授にとって驚きでした。
エルゥファ大学で魔法クリアのことを大真面目に考えている生徒は
一人もいないと思っていたからです。
なのでロードの問にはトゥエ助教授にとって心に響きました。
実はあの問がなければトゥエ助教授はロードに悩みを打ち明けなかったでしょう。
もちろん、それ以外にも成績優秀で親切、博愛の精神に満ちている(笑)ロードの人間性を知っていたからこそ話したワケですが...
エル教授がロードのことをどう思っているかはまたの機会に。




