一
毎晩眠れなかった。
好奇心って時には悪い方向に向くと思う。
だけど人は恐怖が好きなんだ。
絶叫マシーン、お化け屋敷とか。
でも恐怖が無いとストップが効かないし、恐怖体験無しに人生を生きぬくのは困難だと思う。
何かしらの恐怖体験はするだろうし。
僕はその恐怖に興味を持ってしまったんだ。
映画、小説、人から聞く話、全てのジャンルに恐怖を求めた。
稲◯淳司の怖い話なんかも良く見たし、見る時は1人で電気を消したりもした。
だからと言って、霊感が身につく訳でもなく、ただ単に怖さのレベルが上がっただけだった。
変な言い方になったけど、本当に怖い話じゃないと満足しなくなったという感じ。
それと共に作り話を見抜く力は備わったかも。
そんなレベルの上がった僕だが、恐怖心はもちろん持っている。
普通にビビるし、ゾッとする事もある。
ついこないだにもゾッとした。
僕の体験じゃないけど、弟の実体験を聞いた時だ。
弟は電車で30分ぐらいの所に住んでいる女と付き合っている。
その日もデートのため彼女を迎えに電車に乗り、一回目の乗り換えをした所だったらしい。
乗り換える電車が来て電車内に入った。
日曜日だったからか結構な混み具合だったらしく、吊り革を持って立っていたそうだ。
だけど何処からか視線を感じる。
周りを見渡してもただ人が大勢いるだけ。
なんだろと思いつつ窓側に目をやると、反対方向に進む電車もたまたま止まっていたそうだ。
何気なく中を見たらしい。
すると向かいの電車にも自分が乗っていたんだって。
ずっとこっちを見ている。
服装は全く違うのに、顔や背丈は全く一緒。
似ているとかそうゆうのでは無いらしい。
全く同じなんだって。
不思議で弟も確かめるように見ていた。
少しの間、ずっと目が合っていた。
すると突然、向かいの自分がニタっと笑ったらしい。
その瞬間、弟の視界は虹色のトンネルを抜けるようなフラッシュバックのような感覚になり、気がつくと次の駅だったそうだ。
怖くなり慌てて帰ってきた時に、僕は家にいたのでこの話を聞いた。
汗だくになり「ドッペルゲンガーを見た!死ぬかもしれない!」と言い、慌てる姿はとても嘘には見えなかった。
(ドッペルゲンガーとは容姿が全く自分と同じで、死期が近くなると現れると言う。あくまで伝説や噂ではあるが、目撃例も多く著名人が小説に書き残しその後亡くなったというのも有名である。)
ちなみに今現在も弟は生きている。
やっぱり実体験や、身近なこういった話は怖い。
僕にも少なからずそんな体験があるんだ。