第一話 運命の出会い
「何だこれ?」
俺は自転車を道の脇に止めて、川原に下りてみた。
そして、そこに落ちていたものを拾いあげてみる。
「お~い夢路。エロ本なんか探してねぇーでちゃんと家に帰れよ~」
振り返ると近所のダチがよろよろになりながらも片手運転をし、声をかけてきた。
返事をするのが面倒だったのでダチに向けて、失笑だけをすると、手につけている腕時計をふと見た。
もう7時だった。
この腕時計もこの前に道で歩いていたチンピラから奪ったものだ。
その切符らしきものをポケットにしまい、俺は自転車にとび乗り、家に向かって走っていった。
しばらくして、路地裏辺りで「パキッ」というガラスでも踏んだような音が聞こえてきた。
もしやと思い、タイヤを見るとそのもしやだった。
パンクをしたのである。
「あ~。もう、こんな時にィ~!」
しんと静まりかえった住宅街に夢路の悲鳴とも取れる声が響いた。
まだ家までそこそこの距離があるのに自転車が使いものにならなくなってしまったのだ。
「まぁどうせ拾った自転車だろ・・・」
どこか近くでかすかに声が聞こえたので驚いて声のするほうを振り向くと、そこには杖を持った小さい男の子?が立っていた。
「おいっ!こらガキ~!こんな遅くに外に出歩いてないてないで、家に帰って、ママに絵本を読んでもらいながら、おネンネでもしてろっ!」
俺は、そう吐き捨てて、前に進みかけた。
んっ?このガキ、さっき俺のチャリは拾ったやつっていってたような気がするけど・・・なんで、わかったんだ?
今更ではあるが俺は異変に気づいたのだった。
だが、しょせんあのガキがてきとうにぬかしたんだろう。
「おまえ、ワシのことをガキだと思うてなめとるじゃろ。痛いめにあわすぞっ!!!」
「ハァ?だれがおまえだとこのクソガ・・・」
そこまでいいかけると俺の体には激しい痛みが襲い、気がつくと気を失っていた。
目が覚めるとそこは列車の中だった。
目の前には色々な風貌の人々やさっきのガキがいた。
「テメェさっきは、何をし・・・」
また、途中までしゃべりかけたところで今度は体中に電撃がはしった。
「また、暴言を吐いたら電撃くらわすぞっ!」
前に立っていたガキがいった。
どうやら、どうやったのかわからないが、このガキが何かしたらしい。
「・・あな・・たは、一体・・・?」
「ワシの名はロン。魔術や錬金術、拳法、剣術。その他のすべての物事がワシにはできる!」
そのロンという名のガキは少し胸を張り、自慢げに言った。
「この・・ガキは、本当にバカか・・・魔術とかそんな便利なもんあるわけ・・ねぇだろ・・」
俺がまたいうと再び体中に電撃がはしった。
ぐっ!・・・・・・。
ガキのくせに・・・調子にのり・・やがって!
ゆっくりと肩で息をしながらそう思った。
「まだわからないのか!日頃、お前はどんなことをしでかしておるのかっ!!!」
ロンは声を張り上げて、怒鳴った。
「・・・・・・」
「それにワシはガキじゃない。こうみえても地球が産まれる前から生きておる。つまり神ということじゃ・・・」
「そんなバカな!?・・・魔術とか・・地球がうまれる前から生きている神だとか・・意味不明なこと・・・いいやがって!」
ビリビリビリッ!
「ぐわぁーーー!」
俺の体中に再び、電撃がはしった。
「全部ウソだというなら、窓の外を見てみろっ!」
ロンは、視線を窓に送った。
―なっ!?なんだ、どういうことだ!?
見る見るうちに、夢路の目は驚きで真ん丸に近くなっていく。
窓の外を見ると地面がとても遠くに見えたのだ。
「俺・・とっ・・・飛んでる!?」
「そう、これは次元転送列車‐DIMENSION TRAIN。次元を越え、過去や未来、そして魔界にまでも行ける列車じゃ。ちなみにこの列車内や異次元ではおまえらの世界よりかなり時間が経つのが遅いし、歳もとらないんじゃよ」
ロンはえっへんといわんばかりの顔をしている。
正直いうとかなり腹が立つ。
チビのくせに・・・。
「じゃあ一生、死なねーってことじゃねーかよ」
俺は自分でもわかるくらい嬉しそうにいった。
「もしや、一生おまえはここにいる気か!?」
ロンの眉がピクッと動いた。
「そのもしやだ」
そう答えたとたん・・・。
「おまえは元の世界に戻る気が無いのかっ!」
ロンは手に持った杖を握り締めた。杖を漆黒の雷がまとう。
「見よ!これが我が得意魔術、黒雷じゃぁぁぁー!」
ロンが雷をまとった杖を俺の頭にポンと当ててきた。
はにゃ?
その攻撃はあきらかにゆるかった。
先ほどからの夢路の悲鳴を聞きつけ、二人の周りに集まってきた列車内の人々も何だ、あのへなちょ この攻撃は!?、とでも思っただろう。
それほど軽く、ロンは夢路の頭に杖を当てたのだった。
ところが・・・
「ギャァァァ~~~~~~~~~~~!」
とたんに強力な暗黒の雷が夢路の体全身をはしった。
その後も夢路の体を数秒間、電流が流れていた。
「すっ・・・すまな・・い」
俺は死に物狂いでさっきの発言を後悔し、謝った。
「ところで・・な・・・んで俺がそんな・・列車に乗せられ・・てる・・・んだ?」
俺は途切れ、途切れながら口から声を発した。
「ここにいる人たちは皆、罪を犯したり日頃の行いが悪かったりして社会に反していた人たちじゃ。日本人もおれば、外国人、魔界人などさまざまな人種の人たちがおる。ワシの仕事は、そういうおまえ達を立派な人間に育てあげることじゃ。そのおまえが拾った切符がその罰じゃ」
「ん?どう・・いうこと・・・だ!?」
ロンが何をいっているのか俺にはわからなかった。
「その切符は、おまえがここで仕事をし、立派な人間とみなされると穴が開く。つまり、おまえが仕事をし、立派になると元の世界に戻れるということじゃ」
「じゃあ、俺がもし切符を拾わなかったらどうなってたんだ?」
「それはないな」
ロンは俺の言葉をさえぎるように言った。
「なぜだっ!?・・・」
疑問が多すぎて頭が完全に混乱してきている。
「いったじゃろ。ワシは何でも出来るんじゃ。そう、あの時は時間を止めたということじゃ」
「・・・・・・」
マジかよ!こいつ・・・マジで神じゃねーかよ。
改めてそう感じ、俺は度肝を抜かれた。
「それよりおまえ、早く仕事しろ!」
ロンは大声で言い放った。
「仕事ったって・・・何をすれば・・いいんだよ!?」
夢路の電撃による体への痺れは、まだ消えない。
「あそこに板が建ってあるじゃろ。あれは仕事板っていうんじゃ。その仕事板の近くにある受付で依頼を受注するだけじゃ」
「仕事、仕事って具体的に何をどうする仕事なんだよ!?」
「その仕事は次元を越え過去や未来、魔界に行き、自分が契約した依頼をこなす仕事。
DIMENSION TRAVELERじゃ」
ロンは再び、自慢げな顔を見せた。
「そういえばおまえの名は?」
「あっ!俺の名前は向 夢路。よろしく・・・お願いします」
また、魔法を使われたりすると困るので、俺は少しかしこまってあいさつをした。
どうやら、不思議なことが多く、頭がからっぽになって自己紹介を忘れていたようだ。
「ふっ。そこまでかしこまらんでも・・・。夢路、この列車の03号車から好きな武器を選んでこい」
ロンはそういって、後ろを親指で指さした。
「03号車?・・・」
「あっ!うっかりしておった。案内がまだじゃったな。今、夢路とワシらがいるのが01号車、主に体を休める所じゃ。そしてこちらが02号車じゃ」
ドアがウィンとなって開く。
「こちらの02号車がDr・メディスンの研究所じゃ」
そういって、ロンは、そこにいた白衣をまとった男を紹介した。
「はじめまして。向 夢路です。どうも」
俺は軽く、会釈をした。
どうやら、この30歳くらいの細い体で眼鏡をかけ、いかにもエリートですといわんばかりの顔の男がどうやらDr・メディスンだそうだ。
メディスンは、こちらをチラリとも見ずに
「はじめまして、こんばんは。メディスンです」
とだけ言い、再び、研究に取り掛かった。
「おいっ!もたもたせずについてこい」
ロンは、そう言って、先に03号車がある後のドアに進みかけた。
「お、おう!」
俺は研究が気になった・・・というよりもメディスンの態度が気に食わず、ブン殴ってやろうかとも思ったがロンに遅れまいと後を追った。
もうひとつのドアが開き03号車に入ると、そこは倉庫のような所だった。
「なんだ!この棒みたいなものは?」
そこには棒のようなものが無数にあった。
「これは携帯変形武器 T‐ウェポン。おまえにひとつやろう。このT‐ウェポンは、かつてのDIMENSION TRAVELERが使ってたものじゃ」
「やろうったって、これどうやって使うんだ?」
「その質問は後でじゃ」
俺は、しぶしぶT‐ウェポンを手に取った。
「その武器は、強くなりたいなどの強い気持ちを持ち、にぎれば変形し本来の姿になるんだ。そして、戻れと思うと元の姿に戻る」
「フーン。なるほどな」
俺は一人うなずき、そして納得した。
「ちなみに全部、最初の形は同じだが、変形するとこれひとつといって同じものは存在しない。つまり、どの種のT‐ウェポンを手に入れるかは運しだいだということじゃ。どのDIMENSION TRAVELERもこれを持っておるから夢路、おまえも使えるようになっておけよ。最初に変形さすのは無理があるからまぁ、あせらずがんば・・・」
そこまでロンはいいかけたとき、バチィィィ――という激しい音が聞こえた。
「な・・な・・な・・なにごとじゃ!?」
驚き、音のするほうを見る。
すると、なんとそこには、変形したT‐ウェポンを持った夢路が立っているではないか。
「こやつ!まさか、たったの一回でT‐ウェポンを変形させたのか!!!・・・んっ!しかもあれは、もしや!?」
「なぁ・・・なんだよ。この妙に殺気のするT‐ウェポンは!」
俺が変形させたそれは、大きくていかにも斬れそうな黒いオーラが漂う鎌だった。
「そ・・そのT‐ウェポンは・・・」
ロンはゴクリとつばを飲み込んだ。
ふいに俺もゴクリとつばを飲み込んでしまったほどの殺気を満ちた鎌であった。
「次元をさまよい人ばかり斬り殺したために抹殺された伝説のDIMENSION TRAVELERが愛用したT‐ウェポン・・・人を喰らう大鎌、その名もヒューマンイーターではないか!!!」
「ヒューマンイーター!?」
驚きのあまり俺は、声が裏返ってしまった。
「そう。これは伝説のT‐ウェポン、6Tのうちのひとつじゃ!」
「6T?」
「そう。6Tとは、ひとつはおまえの持つヒューマンイーター、そして影斬、狂鬼。そして火・風・雷、三つの属性をつかさどる三種類のST‐ウェポンという種類のT‐ウェポン、この六つをあわせたのが6Tじゃ」
「何かよく分からんがスゲーな!」
俺は一人で勝手に感心していた。
「さぁ。01号車の仕事板の自分のしたい依頼に練習がてら受注してこい!」
「お、おうっ!」
そして、俺は依頼板に向けて歩きだしたのだった。
仕事板の前にたどり着くと、さっそく依頼を見わたした。
「気になる依頼は、っと・・・三種の魔獣の血を採取せよ!?」
そこには、そう書かれていた。これはDr・メディスンの依頼と書いてある。
ロンの声が聞こえたので隣を見ると、いつの間にかロンが突っ立っていた。
「じゃあ、俺はこの依頼にいってくるぜ」
ロンへのあいさつと受付をすませ、至急品の注射器を受け取った。
「ちなみに依頼には、おまえ以外のDIMENSION TRAVELERも来ている場合もあるから気をつけろよ。そして必ず無事、依頼を成功させろっ!」
「おうっ!まかせろ」
「健闘を祈る」
俺とロンが会話を終えると、俺の体がスッと消え、視界が真っ白になって異界の地へと転送されていったのであった。




