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滅びた国の王女は魔王城をうっかり堕落させる~異世界で快適発明ライフ~  作者: 幽々子由馬


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第5話

第5話


 自動茶沸かし器についてひとしきり喋り込んだ後、ニーナはふと天井を見上げた。

 ここに飛ばされて、最初に思ったことがある。


「……暗くない?」


 広間から続く廊下の方まで見回し、ぽつりと呟いた。

 壁に等間隔で設置された照明はある。

 けれど、その光はどこか不安定で、ちらちらと揺れていた。


「これ、どうやって光らせてるんですか?」


 近くにいた魔族に聞く。


「……魔力だ」


 当然のように返ってきた。


「一定時間ごとに、装置へ魔力を注ぎ込む」


「へぇー」


 なるほど。


「……え?」


 今なんて?


「……それ、何回くらいやるんですか?」


「昼と夜、それぞれ三度ずつだな」


「昼と夜三回!?」


 思わず声が裏返る。


「昼の勤務者と、夜勤で当番が回る」


「夜勤制ありなの!?」


 なにそれブラック!!

 ちらり、と周囲を見る。

 壁際に設置された装置の前で、魔族が無表情で手をかざしている。

 じわ、と光が強くなる。

 でもその顔、めちゃくちゃだるそう。


(あー……これは……)


 完全に理解した。


(めんどくさいやつだ)


 そして私は、にやりと笑う。


「任せてください」


「……何?」


「それ、なくせます」


 ――数時間後。


「はい、完成です!」


 太陽の光を背に受けながら、胸を張る。

 場所は城の中庭。

 見上げれば、屋根の上にずらりと並んだ板状の装置。

 そしてその横には、大きめの箱。


「……なんだ、それは」


 魔王が腕を組んだまま問う。


「ソーラーパネルと蓄電池です!」


「そーら……?」


 完全に未知単語である。


「太陽の光を使ってエネルギーを作って、それを溜めておくんです!」


 びしっ、と屋根を指差す。


「昼間に勝手に充電されるので――」


 次に蓄電池の箱に手を置く。


「夜でもそのエネルギーで照明がつきます!」


 ニーナはどや顔で箱を叩いた。

 しばしの、沈黙。


「……つまり」


 魔王がゆっくりと口を開く。


「魔力を使わずに、照明が維持されると?」


「はい!完全自動です!」


 にっこり笑う。


「もう当番とかいりません!」


 ――ざわっ。

 空気が、一気に揺れた。


「な……」


「当番が……不要……?」


「そんな馬鹿な……」


 魔族たちがざわめく。

 その中の一人が、思わず声を上げた。


「では……あの作業は……もう……?」


「やらなくていいです!」


 即答。


「え」


「え?」


「え!?」


 一斉にざわつく。

 誰かがその場に膝をついた。


「……解放、された……?」


 めちゃくちゃ感動してる。


(そんなに嫌だったんだ)


 ちょっと引く。


「試しに見てください!」


 私は壁の照明を指差した。

 昼間だが、ほのかに光っている。


「もう魔力流してないですよね?」


「……ああ」


「でも消えてないですよね?」


 にっこり。


「これが“自動化”です!」


 ――沈黙が流れる。


「……」


 魔王が、静かに天井の照明を見上げる。

 揺らぎのない光。

 安定した明るさ。

 何もせずとも、維持されている光。


「……なるほど」


 ぽつりと、呟く。

 その声は低く、静かで。


「無駄がない」


 わずかに、満足を含んでいた。

 その一言が、落ちた瞬間――。


「うおおおおおおおおお!!」


「解放だぁぁぁぁぁ!!」


「二度とあの作業をしなくていいのか!?」


「やったぞぉぉぉ!!」


 魔族たちが、一斉に叫び声を上げる。


 誰かは拳を突き上げ、誰かはその場で崩れ落ち、誰かは隣のやつの肩を掴んで揺さぶっている。


「もう夜中に起こされないんだな……!」


「交代忘れて怒鳴られることも……!」


「俺たち……自由だ……!」


 中には、目元を押さえている者までいた。


(そんなに!?)


 思わず一歩引く。

 いや、うん、確かに面倒そうではあったけど、ここまでとは思わなかった。

 おまけに。


「ニーナ様!!」


「え?」


 突然、呼ばれる。

 振り向くと、さっき水を渡してくれた魔族がいた。

 目が、キラキラしている。


「あなたは……救世主だ……!」


「いやそこまでじゃないよ!?」


 全力で否定する。

 でも止まらない。


「これからも……ついていきます!!」


「いや部下にした覚えないんだけど!?」


 ツッコミが追いつかない。

 その様子を、魔王は静かに見下ろしていた。


「……」


 何も言わない。

 けれどその視線は、わずかに細められている。

 歓喜に沸く魔族たちと。

 その中心で振り回されている人間。


「……なるほど」


 もう一度、小さく呟く。


「確かに……必要だな」


 その評価は、静かに、しかし確実に下された。


 

 つづく

お読み頂きありがとうございます。少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。

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