第2話
第2話
「なんで国、滅びてるの!?!?」
叫び声が、虚しく廊下に響いた。
返事は、ない。
「いや待って待って、ちょっと落ち着こう私。状況整理しよう」
深呼吸。ひとつ。
もう一回、周囲を見る。
崩れた壁。ひび割れた柱。伸び放題の草。
人の気配は、無い。
「……これ、夢とかじゃないよね?」
ほっぺをつねる。
「痛い。うん、現実」
現実だった。
「いやいやいや、なんで!?私ちょっと地下に引きこもってただけだよ!?その間に国滅びるとかある!?」
あるのかもしれない。ここ異世界だし。
「いやでも普通気付くでしょ!?音とか!避難とか!何か起きるでしょう!普通!」
今まで地上の物音など一つも気にせず地下で発明していたのは自分だが、それは一旦棚に上げる。
「……うん、詰んでるねこれ」
ぽつりと呟く。
とりあえず、このままここにいても仕方がない。
「よし、移動しよう」
切り替えは早い。
それがニーナ・アルシェルである。
くるりと踵を返して、地下へ戻る。
「こういう時こそ準備が大事!」
工房に戻ると、私は慣れた手つきで荷物をまとめ始めた。
「まずは工具一式。これは絶対必要でしょ」
ハンマー、レンチ、ドライバー的なもの。
それから自作の細かいパーツ類。
「あと設計メモも……うん、これは命より大事」
分厚いノートをしっかりと鞄に詰める。
「携帯型の簡易加熱装置も持っていこう。野外でもお湯沸かせるし」
ごそごそ、ごそごそ。
気付けば鞄はパンパンになっていた。
「よし、完璧!」
満足げに頷く。
――完璧だ、発明関係については一つも漏れは無い。
「じゃ、行きますか!」
ニーナは意気揚々と地下を後にした。
⸻
それから、どれくらい歩いただろうか。
「……暑い」
ぽつりと呟く。
「……喉、渇いた」
さらに呟く。
周囲は荒れ果てた街並み。人の姿はやはりない。
そして。
「……あれ?」
違和感に気付く。
「私……水、持ってきてなくない?」
沈黙。
嫌な予感しかしない。
「……あれぇ?」
慌てて鞄の中を確認する。
工具。
工具。
謎のパーツ。
設計メモ。
工具。
「……うん、工具はあるね!」
そうじゃない。
「いやいやいやいやいや!?水は!?食料は!?」
ない。
「なんで!?なんで持ってきてないの私!?」
答え:発明に夢中だったから。
「いや今それどころじゃないでしょ!?生きるのが最優先でしょ普通!?」
セルフツッコミを入れるが、状況は好転しない。
喉が焼けるように乾いている。足も重い。
「……やば」
視界が、少しずつぼやけていく。
「ちょっと待って、これ……普通にやばいやつ……」
ふらり、と体が傾いた。
「いやでもまだ……いけ……る……」
言い切る前に、どさり、と。
ニーナはその場に倒れ込んだ。
意識が、遠のいていく。
「……せめて、水……持ってくれば……よかった……」
最後にそんな当たり前すぎる後悔を残して。
ニーナ・アルシェルは、とても間抜けな理由で、あっさりと行き倒れた。
つづく
お読み頂きありがとうございます。少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
宜しければブクマ、評価等頂けると励みになります。




