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“Effects of selfishness/利己主義の影響”(Another story of Civil war)  作者: 河崎浩


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11/13

利己主義の影響(11)

(外務省のスタンス)

(防衛省のスタンス)

(NIS/韓国国家情報院・韓国国情院)

(総書記の決断)

(外務省のスタンス)

今や、アメリカと言うオーソリティーを喪った、外務省の元々の主流派(北米局)は、その発言が悉く、現外務大臣から拒絶され、否定されていた。

特に旧日米合同委員会に関与していた官僚は、その発言が、無視こそされなかったが、余り、採り上げられる事は、無かった。(排除こそされなかった)

北米局に代わり此処の処、外務省で、伸しているのがアジア太平洋局と、欧州局で有った。只、彼の、個人的な相談役を兼ねた結果、大臣のお気に入りはアフリカ局内で干され気味だった歴史好オタクの参事官であった。彼は、今まで言いたい事が言えなかった鬱憤を晴らすかの様に、好き勝手を言い出していたが、外務大臣は、その鬱憤の捌け口宜しく、聞き役に徹し、普段なら口に出す事さえ憚られるような、多様な考えを自身の考えとして取り入れていた。

そして、最後に『流石キャリア!』と彼の言質を褒め称え、彼の心のハードルを一気に下げ、彼の引き出しの物を漁っていた。

彼を含む外務省の現主流派の信条の第一は『国民は、馬鹿では、無いのだから、事実を事実の儘、何らバイアスを掛けずに伝え、国民の判断を仰ぐ事』であった。

例え、それが、首相や官房長官の、目指す方向と相容れなくても、それこそが、現時点での国民の総意であり、これを首相が目指す方向に変えるのが、大臣以下政治家の力量であると言う事であった。、

唯、その為には、バカな国民が直ぐ飛びつく様な、個々人、特に、著名人や裕福な階層が引き起こすスキャンダルや、ゴシップを騒ぎ立てる様な、メディアが、排除されている、彼流に言わせると『知的環境』の整理が必要。とも考えていた。

故にゴシップ誌と呼ばれるような大衆芸能雑誌は、規制ではなく、廃刊。

要は、その存在すらを『許さない』環境に持ち込むべき。とも考えていた。

其処だけは、大臣が『恐ろしい』と内心考えている。エリート意識の結晶でもあった。

有名人のスキャンダルや、ゴシップは、事故を起こした本人の資質故、としか考えない人種、(彼等が世俗に与えた影響が原因ではないと考えた)それが本邦のエリートの根幹的な世俗への『捉え方』で有った。

只、その情報ソースは、自身と同じエリートの一部(調査部門)のリークからである。

自身と同じ高級官僚が、その様な市井の些事を追いかけさせられている。

という事実を彼等は、知らなかった。

要は、時の為政者が指示をして、公安や調査部門、彼等の元指導者だった、アメリカ(政府)が、日米合同委員会を利用してリークする情報は、国民に関心を持って貰いたくない、営利企業でもある民間メディアに、まともに、報道をして欲しくは無い『事柄』を秘密裏に日本政府(行政府)と相談(指導)し、国民の目に触れる事なく何時の間にか、国や、対米国との決定事項とする時、愚民(と彼等は国民を看過していた)が飛びつきそうで、此の本質とは、全く縁遠い愚民が直ぐ飛びつき(関心を持ち)そうな、ゴシップや、芸能スキャンダルを懇意の記者や、記者クラブと言う名の御用組織に、意図的にリークする。独自取材や調査報道等、責任と苦労する事はナンセンスで、大本営発表を垂れ流すだけが、日本の有力ゴシップ誌やマスコミの実態。という事以外には、此の高級官僚も、関心は及ばず、興味も持たなかった。

しかし、彼等も、冷静に思い返せば、何人もの権力者が、そのリークに基づき、政治生命を絶たれてはいたし、何時の間にか、選択肢がない、高額な米国製兵器を買わされていたり、その手順も、通常の商社経由の海外との商取引ではなく、FMC(有償軍事援助)に代わり、結果高い買い物(税金の浪費)にさせられていた。

つい最近迄、日米合同委員会を専任で扱う、自省の北米局が、なんだかんだ言っても、省内で指導的立場に君臨していた事態を思えば、当然の事でもあった。

今や、そのような、愚かな頸木は無くなった。とは言え、だからこそ、外相は、専ら個人的な相談は、最もメインストリームから遠い立場に居た、このエリートを使った。

唯、公の判断を下す前には、必ず北米局長に打診し、或る程度『考え』をまとめ、アジア太平洋局と、欧州局長が、自身と、この彼(知恵袋であるアフリカ局の参事官)が、此の腹案に首を縦に振る事で『決』としていた。

この為、即決即断は少なくなったが、これは、彼が専ら話していた、仕事の出来る奴の判断に、答え(仕事)を集中させない。と云う信条にも、基づいていた。

時差の関係が有るので、只でさえ時間外労働や、残業が多い、此の省の労働改革(賃金改革)という思惑も其処には含まれていた。

現代の科挙を勝ち抜いて来た、エリートは、上の人間が『帰れ』と、指示しない限り、知的好奇心と上司からの命令を金科玉条にして、ズルズルと仕事(らしき事)をし、ワーク・ライフ・バランス。何の為に働き、賃金を得ているのか?と云う人としての根本感覚が、欠如しているのが、欧米の同種のエリートとの決定的差である。と、常々、彼は感じていた。

「楽しくなければ仕事じゃないが、プライベートが充実してこそだろう?良いアイディアの源泉は。面倒な連中だ」

彼の良く吐く、独り言でもあった。

しかし山田は、此の外務大臣が居ればこそ、という信念を持っていた。

彼が倒れたり、居なくなれば、此の省や此の国は、どうなるのだろう?システムとして、この外相の『考える方向』に体制を確立、構築せねば。と云うのが山田の本音でもあった。


(防衛省のスタンス)

彼女は、若い時、民主党のヒラリークリントンの選対でボランティアをしていた位、ヒラリーを敬愛していた。

故に、現状のアメリカで起こった事態は、青天の霹靂でもあった。

だからか?彼女が、石田に政権への参画を打診された時の希望が、この『防衛大臣』という職責で有った。

これは彼女自身に執って、ガラスの天井への挑戦であり、かつ最も幹部職員構成の女性比率の低い省庁へ乗り込む。要は、彼女は、此の省こそ、最初に、クオーター制を持ち込むべき国家(行政)部門。

それが『此処(防衛省)』との認識が有った。

しかし、その様な彼女も、石田が連れて来た、刈谷一尉による現状国防に関するレクチャーを受け、自身が矜持として持っていた『一国平和主義』が机上の空論に過ぎない。と自覚しつつあった。

しかも昨今の沖縄の若い海兵隊員による人権。特に『女性の人権を無視した乱暴狼藉』は、看過できないレベルに達しつつあり、故に、沖縄駐留海兵隊の去勢は、専権事項と捉えていた。

その様な時に、防衛省最強の外郭団体でもある防衛装備庁の、彼女が引き上げた女性技官が、日本のファインセラミックスの第一人者を自称する会社の、いち研究者を伴って、面会を求めて来ていた。

「これは何ですか?」

其処にはゴルフボール程度の大きさの、黒く(ただ)れた『石』が置かれていた。

「はい、先頃打ち上げた、観測衛星(軍事偵察衛星)から地上に発射した『弾』です」

「はい?(その様な実験を前任者は許していたのか?)それが、どうしたと、云うのですか」

彼女は、この技官の、意図が未だ解らなかった。

「実態は、このサンプルの様な長さ10センチ程度の先が円錐形の円柱体だったのですが。大気との摩擦熱や、地上のオブジェクトとの衝突に於いても、此の程度の原型を残す事が出来ました」

と言って発射前の見本と見比べて貰えるように、彼女の眼前に2つの物体を置いた。

民間研究者の彼は、その様な、彼女の事は、さておき、この球体のすばらしさを熱弁した。

「しかも、狙って貫通した標準的なICBMサイロの蓋と同じ厚さの100ミリの鉄筋コンクリート(ターゲット)とのEFG(標的からの誤差)は3インチ(10センチ)以内に収まっています」

技官の説明が、彼女の言葉に続いた。

「何を仰りたいのか?私には皆目、見当が付きません?」

彼女(防衛大臣)が言い放ったのを見兼ねて。彼女の政務秘書官が、彼女に耳打ちをした。

此の秘書官は、彼(研究者)の言葉の意味を理解していた様だった。

「ちょっと待ってください。という事は、これは衛星兵器に転用可能という事なのですか?」

「はい」

女性技官と研究者、二人の答えは、ハモった。

「でどの程度の威力が有るのですか?」

看兼ねた政務秘書官が、彼女を遮って質問をした。

「はい、先程も申し上げた通り、100ミリ(10cm)のコンクリートを誤差100ミリ以内の精度で貫通しても、この原型を止めていると云う事は、もう少し(マテリアルの形状が)改善できれば、大概のサイロの隔壁は、上部から貫通できると考えます。勿論、その中身も使い物には、ならなくなると(多分)思います。しかも、衝突だけですので、この弾頭自体は、特に爆発は無しに、対象のみを破壊する事が可能と推量されます」

「ランチャーからの発射速度は?」

「あ。はい。精度の問題にもなりますが、夜間・昼間を問わず、合成開口レーダーと、セットと言う前提であれば、ターゲット確認後、3分以内に発射可能。着弾は、地表近辺の天候にも依りましょうが、高度三六00キロで数分以内、下手をすれば、数十秒と思います。光学レーダーでロックオンが可能だと、もう少しレスポンスを早くする事も可能かと考えます」

「3分以内!それは凄いですね!」

「はい、ミサイルの様に、特に推進薬を使用し発射させる訳でもなく、物理的に射出後は単に、引力に任せて、目標に落ちて行くだけ。と考えて頂ければと」

「風や気候・環境からの影響はないの?」

「その点は、まだ実験はしていませんが、スパコンによる弾道シミュレーションでは、対地速度は、マッハ10を軽く超えておりますので、台風程度の風雨ならば、特に影響は、無いかと、勿論、材質と構造上、地磁気等の影響も受けません」

此処迄の技官と秘書の遣り取りを聞いていて、やっと此れが、何であるか?理解し、その能力も理解した様だったので防衛大臣として質問をした。

「『核』では無いのね?」

「勿論。弾頭の材質は、劣化ウランとかでは、ありません。弾頭自体が、目標物に衝突した際に、破裂する事も有りません(ターゲットがどうなるか迄は、実験していないので、解らなかった)ただ、射程の長い巡航ミサイル(12式改)とは異なり、自身が爆発して、敵にダメージを与える様な攻撃兵器では、ありませんが、それよりは、確実に、敵基地に対する対物(オブジェクト)攻撃能力、と言う点では、凌駕しているのではと考えています。と言うより、純粋に、敵基地や、敵のテリトリー内の目的物『のみ』を使い物にしなくする為の、単なる硬い塊という事になります」

「迎撃される可能性は?」

「はい通常の地上発射型ミサイルだと、発見しても、軌道を変える事は出来ても、迎撃は不可能だと考えます。まぁ、先ずレーダーに発見される様な(弾体)サイズでは無いですし、迎撃態勢を採っている間に着弾してしまうと考えております。他国の衛星から、当方の衛星に対する攻撃に関しては、未だ確たる資料が無いので何とも言えません」

「只、地上からの軌道は、我が国の早期警戒衛星(静止衛星)と同じ二五〇〇〇から三九〇〇〇キロですので…」

「懸念材料は、確実に現行憲法下では、敵陣に対する対地攻撃能力の保持は、果てしなくグレー。と言う訳ね?」

以下のセンテンスに関する、技官の答えは、歯切れが悪かった。

「はい」

「少し技術的な質問をさせて貰うけど、これを積む『衛星』は、特別なモノなの?外観的に、何か、特徴は変わるの?今迄の物に比べ?」

「いえ、外観的には、通常のレーダーを装備した早期警戒衛星(静止衛星)に搭載する、此の発射装置(付属装置)は、口径110ミリ、ランチャーの厚さは、10ミリ以下で、長さが、700ミリ程度の筒状で、一機当たりの重さも。僅か数キロですから、大掛かりな改造は、不要です。弾頭の推進装置も僅かなサイズアップで、単純な構造で済みますので、衛星自身に、特に、大きな改造は要しません。勿論、我々が部局長に対しても秘密に出来た実験ですから、全費用(トータルコスト)も最新の12式改に比べれば、極僅か。非常に安価な武器です」

「外国で、この事や実験結果を知っている国は有るの?」

「多分無いと思います。勿論、私と、彼のスタッフ以外、全て、この存在は、知らないと、思いますし、関係する全スタッフには、強い箝口令は、引いてあり、使用した計算装置も、設計データも、外部に繋がるネットワークとは、完全に切り離してあります。弾頭を除く、製造装置も今回の実験装置は全て、手作りで在りますし通常、民間の市場に流通している素材だけで賄えますので、何を作っていたのか?をその情報だけで判断するのは、不可能と考えます」

「勿論、担当した、施設庁とJAXA職員には、特定秘密保護法を熟知している、上級職員のみを当てております」

彼女(女性技官)は、俯き加減に説明を加えた。

「トンでも無いモノを作ったわねぇ」

防衛大臣としてではなく、根っ子が、一国平和主義者の女性としてボヤいた。

「いえ、彼が、会社で、このようなモノが出来上がったけれど『硬いだけで、加工性が、とても悪く、使い様がない』と言う相談を個人的に受けましたので」

そう、この技官と民間の研究者は、大学の同窓同期と言うよりも、付き合っている様だった。

「私も、その時は、未だ、今の様なポジションでは、無かったので、単なる知的好奇心から気軽に彼の実績を試してみたくなりまして・・・」

「実際、発射装置の設計と製造は、当時の私の裁量でも、何とか出来る、予算範囲で収まりました。又、この度の、偵察衛星=早期警戒衛星(静止衛星)の製造元には、院時代の同期が、複数おりまして、彼等とも話し合って、この実験装置を、この度の、衛星に忍ばせた、その実験結果が、今日の、御報告になります」

血相を変えた政務秘書官が、詰問調に口を挟んだ。

「彼等にも『箝口令』は、敷いたのでしょうね?ちなみに、彼等や、全関係者の名簿の様な物は有るの?」

「はい。此処に」

流石に彼女は、単に装備庁の技官である前に、キャリアとしての常識は、持ち合わせていた様だった。そして彼女は、政務秘書官が、この実験が失敗した場合の責任等という、下らない質問を発しなかった事にも『ホッと』していた。

「彼等の身体検査はまだ済んでいないのでしょう?」

「オフィシャルには、未だ」

「判ったわ」

と言うなり、彼女の横に控えていた、政務秘書官は、秘匿回線を使い内庁のキャリアを呼んでいた。

アメリカの内戦が、世に広まって、一か月後の事であった。

(共◇党の革命)

党是であった、日米安保の破棄が、事実上、有耶無耶になり、党のNo.2である山田が、政権で官房長官を務める今、自衛隊の敵基地攻撃能力に関しては、党として絶対反対の旗幟は、未だ鮮明にしていた、共◇党ではあったが、此処の処、山田経由で、今迄の政府が秘匿していた、周辺環境の実態を知るにつけ、その様な事を『大ぴら』に公言する事が、『お花畑の住人』と、党内外から揶揄される様になり、党内のコンセンサスも、新たに、増えた若い支持者を中心とした自衛隊への支持の動向もあり、憲法九条の見直しや、集団安全保障に対するスタンスを変えざるを得ないと云う『空気感』が党内で醸成されて来ている実感が、彼女にはあった。

ただ党No.2の山田が、官房長官として『憲法九条の戦力不保持』の観点から『自衛隊の諸君には、申し訳ないが、名誉ある継子の儘で居て欲しい』と宣言し、官房長官就任に際し

「『天皇制』に関しては、未だ存続の可否の態度は、保留とさせて頂いております。皇居なる場所に伺ったのも、そこで彼(首相)に信任される儀式も『国家元首』たる彼の命令ですので、伺った迄です」

と言った線から、彼女(党書記局長/委員長)も党も、その姿勢を未だ、逸脱はしていなかった。

故に、国歌と国旗、元号に関しての姿勢は、1999年から一貫して反対の姿勢。正確には、未だ、国内で、正確、且つ、正式な情報の共有を伴う、議論、所謂、戦時中の大日本帝国の後継としての日本国の姿勢に関する、総決算の議論をする環境醸成総括が、未だ、『出来ていない』と言う理由で、国際的慣習に基づく、商船旗しょうせんきと自衛艦旗以外での日章旗や旭日旗の使用に関しては、態度を『保留』としていた。

山田は、官房長官就任以来、政府関連のプレス向けの発表時、一度も正面右手横に掲げられていた日章旗に、お辞儀処か一瞥すらしてはいなかった。

又、故に、当然、現行憲法下では国家元首は、内閣総理大臣であり、天皇の存在は、否定こそ、してはいなかったが、現憲法が定める日本国民の統合のシンボル(象徴)に過ぎず、国家元首と国会の承認の下に『在る』存在であって、日本に、君臨する事を認めてはいなかった。

只、大統領等の役職を首班(国家元首)とする、共和制迄は、指向していなかった。

又、“君が代”と云う国歌に関しては『君』と言う意味が、君主を指す限りに於いては、認めておらず、英語で云う『国民(YOU)』と言う意味であるならば、と言う条件迄は、考えを緩和はしていて、掲げていた。

まぁ山田個人としては、新日本人の在るべきメンタリティとしては“365歩のマーチ”の方が国歌として、相応しいと考えては、いた。

しかし、その山田や、防衛以下各所管大臣から齎された、現実の国際情報により、戦略論ではなく戦術レベルで、敵基地攻撃能力は、反撃能力ではなく、事前の戦争回避の為の国が持つべき『やむを得ない』能力であり、その能力の保持自体は、憲法が定める、国権の発動としての武力行為には、当たらない。と言う解釈を真剣に考える時期に来ていると、新たに増えた支持者を中心に、党内のコンセンサスをまとめるべき、と、山田以下、主だった党内ブレーンや、党出身の閣僚から訴えられていた。

そこで、現、党書記局長/委員長である彼女は、戦後初、しかし二〇世紀末に、スパイとして除名された、党書記局長まで勤め上げた、野◇参三の自衛戦争と侵略戦争を分けた、『自衛権を放棄すれば民族の独立を危くする』と言う、文言を引っ張り出して来て、武力の行使に繋がる『交戦権』に関しても、自衛の場合に於いては、許容される。と言う考え方で、党を纏め上げる様、或る程度の情報を世間に開示し、交戦状況下では、自衛隊現場職員の判断を是認するベクトルで、書記局を通し党員に働きかけざるを得ないという判断に、傾いて行った。要は『撃たれない限り撃たない』と云うバカげた制約を捨てるべきと判断した。

又、平和的に戦後のドサクサに紛れソビエト連邦・ロシアに不法占拠されていた北海道北部の島嶼部や、北樺太から『ロシア』の息を世界、特に、隣国が納得する形で、完全に排除する為には、憲法九条の『国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』と言う条文内容は死守しておく必要があると云う、山田の掲げる理論は『尤もだ』と考える様になっていたった。

全ては、相手が、脅威と感じる程度の武威を隠し持った上での、話し合い(外交努力)で納め、国際的な『承認』と『信任』を得なければ、主権の範囲の拡張・回復がならない事は、アメリカという存在が無くなった今だからこそ、必須条件である。とも考えていた。

しかも、この処の外務大臣のスタンドプレーの結果、九条二項の『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない』という事の、現行憲法の解釈に関し、隣のパートナー国からの理解を得る好機でもあった。

『自衛隊は、継子の儘』しかし自衛隊は、実質的な『国防力』である事を内外、いや国内に周知徹底させる役目を、その事に最も反対していた『我が党』が、率先して、見直さねばならない事に、彼女(党書記局長)は、頭を抱えていた。

それを強く推進して欲しいという男(山田)は居ても、その様な『悩み』を打ち明ける相手が、彼女には居なかった。先輩諸氏に、その様な悩みを打ち明ければ、此れ幸いと、旧体制的な誤った、時代錯誤な考え方に『逆戻り』させられる事は、必定。

それは、彼女の代で、急激に伸長して来た党勢や議席を確実に失い、保守層と言われている1910年から45年迄の、悪しき日本の旧道徳観を信奉する、伝統墨守派『以外』の、一般的な国民や、我が党に対する見方を変えつつあった産業界からの支持も、完全・確実且つ一気に失う事を意味した。

今や一の子分でもある、山田も、多分、彼女から離れていく事になるだろう。

かと言って、隣国共◇党やロシアの様に、国権を使用した短絡的、強権的な粛清等の手段で、世論を仮に維持する様な所業、自党の政敵を粛正して貰う様な対応は、自由主義者の石田政権下で、望むべくもない。故に、民主的かつ自由を尊重する様な姿勢へのドラスティックな変貌は、あくまで、平和的な外国交渉に委ね、先制攻撃を図らずも喰らった。と言った環境以外で、実力(武力)を伴う『国権の発動』が“どうしても”必要な場合は、憲法の縛りの無い、NATO(EU)か自衛隊以外のインド太平洋条約機構(IPTO)軍に先陣を切って助けて貰わなければならない。

しかし自衛隊からIPTOに加わっている隊員(幹部指揮官)はその様な、日本の我儘、詭弁は許さないだろう。彼等には申し訳ないが、(任命派遣時に)因果を含んでエスケープゴートに成って貰おう。

で、百歩譲って、隣国からの実力行使に関しては、一旦、その幹部だけ矢面に立って貰い、我が自衛隊の執る実力行使(武力攻撃)は、IPTO等に、依頼され、『仕方なく執った』と言う形が、必要である。

只、IPTO軍加盟国が、その様な考え方に至る、我国への信頼に足るだけの姿勢を我々は不断に見せ、理解を得た上での、敵基地攻撃能力(武力)の保持であり、その為には、前提条件として、今や、政権側に在る我が党が革命的な変革をし、分裂した米国を除く、世界の民主主義陣営から日本の共◇党は、所謂(いわゆる)、従来の共◇主義を信奉する党とは『異なる』と認知して貰わなければならなかった。

その様な、彼女の悩みを知ってか知らずか?は、分からなかったが、〇旗の編集委員が、明日の朝刊のコラムのゲラ(記事)内容の、確認の為、委員長室を訪ねてきた。

基本、党の幹部に関しては、この部屋には、ノーアポで、入れる様な、風通しの良さを彼女の代には、誇っていた。

翌日の、〇旗紙面には、革命的な記事が掲載される事が、此れで決まった。

只、この内容に疑念を持った編集委員から事前の連絡を受け、山田が、霞が関から代々木にすっ飛んできた。

「委員長、本当ですか?」

これが彼の第一声であった。それ程、書記長の考えは、彼流に言わせれば『ブッ飛んで』いた。

「委員長この宣言を『大ぴら』にするのはもう少しお待ち頂けないでしょうか?」

山田の第二声で、あった。

「どうして?もう我が党も、ドラスティックに、現実的な国際情勢を受け入れなければならない時期に来ていて、今が、そのタイミングでは、ないの?私は、その方法論(筋道)を此処で表明しておくべき。と考えたのですけど、何か間違っていて?」

彼女は、まさか、此処で、この考え方の推進力でもある、山田からストップが掛かる事は、想定もしていなかった。

「いや、永田町に席を貰うと、色々な情報が入ってきます、たった今、耳にした情報が、二つありますが、一つは防衛省から、もう一つは沖縄県知事からのモノです」

彼女は、山田の言を聞き、訝る表情を見せた。

「それで?」

「はいこの二つの情報が、もし、正しいのであれば、効果的に、委員長声明(のお考え)を使用し、しかる後に、委員長の口から、この方向性で、談話を発表する方が党勢の拡大にも繋がると思います」

「なに?政局絡み?」

増々、彼女の表情は、曇って行った。そう彼女は、国内政局と云うモノが、自党のウィークポイントと云う自覚が、あった。共◇党は、現状では、大きな政府を志向する勢力。

片や石田を始めとする、現体制は、地方自治を推し進め、国家行政自体は、小さな政府を志向している事は、自明であった。かく言う山田自体が、今や、小さな政府を志向する、自由主義者リバタリアンに近い考えに変わって来ている実感が、彼女には、あった。

故に、財界、産業界も、彼が居る、我が党支持をしているのが現状認識であった。

彼女は、この問題に関わる(顕在化させる)事を慎重に避けていたのだ。

「ご安心ください、委員長、そこ迄の、話では、ございません」

山田は、彼女の懸念点を全て理解していた様であった。

「実は、先程、防衛大臣が、異常に加工性が悪い、しかし『偉く硬い』素材を発見した事その様な報告を上げてきました」

「それがどう関係しているの?」

「はい、もし、これを弾頭に使用すれば、非核で、非常に強力な、対核ミサイル(対ICBM)兵器に転用可能と云う報告を受けています」

「え!」

山田は、そこから『延々』と、この弾頭の可能性に関して、彼女に説明した、勿論、そこには、彼の得意分野である、ミリタリーな知識が、ちりばめられていたので、このレクには、質疑応答を含め、一時間以上の時間を要した。

彼女は、やわら電話を取り。

「木村君(編集局長)を大至急呼んで!」

山田は、此れで、第一関門はクリアした。と感じた。次の項目の説明には、〇旗の編集委員や記者も、同席させる『ベキ』と考えていたので、この委員長の行動は、渡りに船であった。

「君にも知っていて欲しいのだが、沖縄の実態は、東京に居る、我々の想像を絶するようだ。県知事からは、悲鳴に近い声が永田町(私)の下へも、届いている。具体的には、ソロソロ本格的に、沖縄の若い海兵隊員を本国へ帰す『潮時』だと感じている。但し、本作戦を実行に移せば、喜ぶのは、隣国だけだろう。故に、我々は、米国本国の、実態、状況を独自に、キャッチアップして来ていた。具体的に言えば、ヒューミントと言われる存在を、米本国に、残している。彼等からの現地情報を詳らかにして、今、沖縄(米国外)で得られる情報以上の事実を沖縄の若い隊員に知って貰い、それでも、本国に戻りたいかを?質すことから、始めようと考えている」

編集委員長も記者も、勿論、委員長にとっても、初耳の事実であった。勿論、韓国軍により制御されている、在韓米軍に比べ、沖縄の若い海兵隊員の蛮行が、『酷い事』になってきている、と言う事は、報道を通じて、知ってはいた。そして日本の自衛隊は、韓国陸軍と同じ戦法を取れない。軍ではない。依って、全ての事案は、県警が対応しなければならない事も、知ってはいた。

「具体的に言えば、内戦下の米国に彼等を戻すと言う事は、彼等は、即、内戦に即戦力として巻き込まれる事を意味する。グアムやハワイに彼等が滞在できる十分な軍のファシリティーは、未だ無く、且つ、ハワイにある太平洋軍、艦隊、勿論、西部連合も、この機に軍事予算の内、固定費(人件費)の削減を狙う事は明白で、彼等を従分満足させる為の待遇の用意も、養うだけの資金も体力もないし、西部連合の有権者・支持者は、それを浪費と考えるだろう」

「結果『彼等が、帰国したい』と言う希望を適える事は、彼等を内戦下の、彼等の出身地に戻すか、又は、今以下の待遇に落とす事を彼等、若い海兵隊員に許容して貰う事に“なる”以外は、無い」

「二十歳か?そこいらの無学な若者でも、帰国が何を意味するかは、理解が出来るだろう。昨日迄、同じ隊舎に居た『同僚』が、明日は、敵となって、彼等各々が用途や使用法を熟知している『優秀な武器』で、殺し合いをする事になる。又、西部連合に戻れば、殆どの若者は、ホームレス(ジョブレス)な“ただ飯喰らい”に過ぎなくなる。その残酷な、現実、意味を彼等の前に、突きつける。それでも、帰国を選択する者は、仕方が、ないだろう。在日米海兵隊の責任で帰国をして貰おう」

「勿論、残る事を選択した彼等には、米国の内戦が落ち着き、現状の隣国との情勢が落ち着く迄は、今と変わらない生活(対隣国への抑止力として存在して貰う事)は、保障しよう。但し、故に、日本の国内法を日本国民と同等に絶対遵守して貰う。武器等の管理は、自衛隊流で貫き、武器一切の保持(メイン)管理(テナンス)は、我が国の出費で負担する。国内での生活は、ドル建て(昇給昇格が無い)現状維持の儘だが、我国が責任を持って面倒を見、その代わり国内法規を徹底して貰う。この件に関しては、既に、マンスフリー駐日大使以下、横田の在日米軍の総司令官は、了承済みで、今、ハワイのインド太平洋軍からの返答を待っている状況である。此処迄は、私からの、ソースと言う事で、明日の紙面を飾っても構わない。但しゲラのチェックは、させろよ」

山田は、ニヤッとしながら木村編集局長の方を向いた。

「まぁ、問題は、この金(沖縄の海兵隊戦力の維持費)をどの名目で、拠出するか?だけです、委員長。私の個人的見解では、防衛費から、と云う『一択』なのですが、そうなると確実に日本の防衛費は、対GDP比2%を越えます。この辺を党として、書記長には、党内世論を纏め上げて『欲しい』と、考えております。ですから、書記長のお考えの発露は、そのタイミングを見極めてからで、お願いしたいと思います。と言う事で木村君。申し訳ないが、先程の書記長談話は、今回は、全没だ」

「まったく山田は!」

と言いながら彼女は、苦笑いをし、山田は、にやけていた。

話し終わると、山田は、早々に永田町のオフィスに戻って行った。


(NIS/韓国国家情報院・韓国国情院)

アメリカからの偵察衛星情報の入手が、事実上無くなり、自国の偵察衛星はEUのアリアンロケットから発射された一機と、何とかロシアの技術とアメリカの協力と言うハイブリッドで、ケープ基地から打ち上げた1機、それに対して日本は、既に1ダース以上の静止衛星を含む軍事偵察衛星と、7機以上の準天頂衛星システムと言われる独自GPSそして3機の軍事通信衛星を独自で打ち上げ、このエリアで運用し、それ以外に、我国も民間活用させて貰っている、やはり、日本が独自独力で打ち上げた、大地観測と気象衛星が複数ある。結果、現在の隣国のミサイル情報は、今は、専ら日本からの情報が主であった。

しかも、それは、アメリカから従来得ていた内容に比し、精度が高く、日本が、このような情報を我国に与える事自体に、彼等は、驚きが有った。

其処へ来ての、昨今の、自国ポピュリスト政権と、日本政権の関係改善。

国情院は、日本に対し、現政権以上の親近感を覚えていた。

現場職員自体の年齢構成は、勿論、理に適っていない、反日教育を基礎教育時代に受けてきた世代。

とは言え、学生時代を含め、既に何度も東京以下、日本国内旅行を経験し、現状日本の実態を経験しているので、上の世代の様な、観念的な反日思想に、生理的違和感を持つ世代でもあった。

その様な環境下、彼等が、日本のインテリジェンスの新しい旗手と、看ていた、自衛隊情報保全隊情報管理室室長ではあるが、ハンサムで、優秀な、未だ三十代後半の(独身の)刈谷が、日本の外務大臣と防衛大臣の命令で訪問して来ていた。NISの若手女性職員(主に技官)が、色めき立つのは、仕方が無かった。

しかし、彼は、とんでもない情報を国情院に齎せる使者であった。

日本の偵察衛星は、既に隣国の移動式ミサイル全ての隠匿場所も位置情報、行動範囲も、正確に把握している。しかも、固形・液化式燃料の両方の移動式ミサイルの発射、其のタイミング迄を把握していた。

しかし、彼等は、憲法の制約上、そして国際法を遵守する。と既に宣言していた対外的な立場上、知っていても、その詳細を詳らかにする事が出来なかった。

従って、日本のマスコミやJアラートと呼ばれる、一般国民向け、ミサイル警戒情報は、全て、従来は、アメリカや韓国が発見し、齎す情報を基にしていた。しかし、其れは全て、我国や、日本の一般国民を欺く為の『ポーズ』に過ぎなかった。と云う事が、開示されたのであった。

彼等の持つ装備や、技術力から言って、その事実は、驚きでは、あったが昨今迄の国力差から『当然』と受け止められる程度の事実ではあった。しかし、刈谷が持参した、此処で見せられた日本側の齎した実験データと、このビデオ内容は、彼等に執っても、衝撃であった。

そう日本は、それら(北の移動式ミサイル)を全て、発射直前に破壊できる『技術』を既に実験で、実証した上で、保有していたのだ。しかも、それは一切、核が関与していない技術。しかも従来の兵器の概念を変える安価なコストで出来ていた。

要は、其の破壊装置は、大気の摩擦以外の熱源を発しない物。

要は、人工的な隕石の様なモノでも、あった。

只、それは、日本の国際的な立場上も、それ以前に、日本国憲法を順守する体制下では、使用できない技術でもあった。故に、我が国に、その技術を委譲し活用してもらう相談。

と云うのが砕けた表現を使えば、今回の刈谷三佐の訪問趣旨であった。

只、その技術の、根幹部を提供する訳には、行かないが、使用する為の探索装置、条件、そして発射スイッチの提供を『我国の大統領』に委任したい。と云う事で在った。

今回は、その根回し、内示の為の来訪であった。

此処迄、日本との同盟関係が、我国の現体制下で深化している事に、関係者は、感銘を受けていた。

この会談内容は、トップであり、大統領と直接話せる国家情報院長と、刈谷のカウンタパート足り得る情報管理官のみが知り得る情報であったが、情報管理官は、専門職でもある、情報室長(中~大佐相当)も、この席に同席させていた。両名共に、元々が軍人であったので、勢い官位が低い刈谷は、下手に出なければならないが、此処は、全て、その(気を遣う)必要が、無い、英語での会話で押し通していた。

基本、国家情報院長は、そのまま大統領に、日本側の意向を伝え、彼の個人的感触では、刈谷以下、日本側の意向に沿う形で、話は進むだろうという事であった。

要は、韓国には、其処迄の、素材開発技術や生産設備が無く、且つ、衛星やロケットに関しても、軍事用のミサイルは、ともかく、民生用に関しては、日本には、(治験段階ですら)まだ遠く及んでいないのだから、この結論は、当然の帰結であった。

しかし、韓国の面子を保つ意味で、北にある隣国への布告(要は、今後、一切のミサイル発射テストは、許容せず、休戦協定違反として、実力でも阻止する)及び、此処迄の経緯の作文ステートメントの用意、運用に関しては、韓国側に任せる(日本政府は、一切関与しない)。という事が、付随条件として日本側から提示された。

刈谷は、韓国側からの同意の反応を受けた上で、

「貴国の良い様に、作文しても、構いませんが、貴国が、五百年前の朝鮮戦役で、然も、勝って秀吉軍を駆逐した、かの様な、貴国に都合の良い『嘘』と同じ様に喧伝されるならば、我々は、この件に関して、提案その物を引っ込めざるを得なくなります」

と釘を刺す事を忘れなかった。この言い様には、流石に国家情報院長は、むっとした顔を見せたが。先の外務大臣の訪韓以来、過去韓国が教えてきた、歴史上の『事実』が、徐々に、過去の政権=体制側が、でっち上げた『嘘』である事が、韓国内でも常識化して来ていたので、刈谷の言葉が、何を意味するのか、刈谷のカウンタパートである、情報管理官や、室長は、理解していた。そこで、管理官は、刈谷に、斯う切り替えした。

「という事は、この素材や技術の提供は日本から、と申し上げても仕方が無いのですよね?」

この質問こそ、刈谷が求めていたモノで在り、その回答は、既に想定済みであった。

「はい。あくまで、我が国は、技術や装置、その使い方と言ったリソースを提供した。に過ぎない。その運用の主体は、あくまで貴国。韓国の独自判断である。と言う形に、して頂ければ、有り難く存じます。此れは、あくまで防衛装備品の移転ではなく、貴国に対する信頼の証、としての技術提供に過ぎないと」

其処に居た、三名の刈谷より年長の韓国人は、満足そうに頷いた。

「さて、では、刈谷さんのお話は、此処迄でしょう。で、今晩のご予定は?」

情報管理官は、刈谷を夜の宴席へ誘った、しかし刈谷は、彼と歳の近い、情報室長に向かって

「貴殿の部下の皆さんと、お近づきに成れる、席を設けて頂ければ有難いのですが、しかも皆さんが普段、良く行かれる場所が、有難いのですが、只、情報室の方々をお誘いしたいので、皆さん最低、室長程度に英語か日本語は、おできになりますよね?」

刈谷は、悪戯っぽい目で、室長を見た。

「管理官や、院長は、お疲れでしょうし、大統領に、今日の内容を明日『正確に』お伝えして頂かねばなりませんので、私、如き者の為に、御気を使わないで頂きたい。私は、明日の便で帰るだけの身ですし、実際の、現場(運用担当者)の皆さんの声も、聞きたいですし、個人的な知己も得て置きたいので、出来れば、室長に、ご迷惑をお掛けする程度で済ませたいのですが」

要は、刈谷は、『責任者は、税金で飲み食いする暇が有れば、職責に応じた仕事をしろ!』と云う事を婉曲に管理官と、院長に対し諭していた。この裏の意味は、三名には、伝わった様で、三名とも

「GOT IT」

と言い管理官は、

「イー君(室長は、イー・チオンと言うそうだ)宜しく頼むよ!」

と言って、彼の財布から、彼のカードを室長に手渡していた。それがプライベートカードなのか、カンパニーカードなのかは、刈谷の知る処では無かった。

「さて、室長の部下の『ハニートラップ』にでも、引っ掛かってやろう」

刈谷は、日本語で呟き、ついでに担当者の身体検査をできるだけ、しようと考えていた。


(総書記の決断)

韓国大統領からの電話は、宋にとっては、青天の霹靂的な提案であった。

「総書記、すみません、何時になるかは分かりませんが、貴国と同盟関係に在る、我が隣国が、次回ミサイル発射実験を実施した時点で、我々は、それを完璧に、実力で阻止して見せます。その事を明日発表致します。今日は、その事前の、連絡をしました」

それが、韓国大統領の第一声であった。

「どのようにして?」

「それは、貴国の持つ監視衛星で、ご確認ください。但し、我々は、一切ミサイルや、核兵器は用いない事。又特殊部隊などの人員も、派遣する様な事も致しません。要するに、周辺環境に、悪影響を及ぼす、又は貴国の外交に影響を及ぼす様な攻撃は、一切しない事を御約束します」

そして翌日、大統領府の発表として、同内容は、世界に発信された。しかし、今回の韓国大統領からの提案は、それ以上の衝撃が有った。勿論、発表と時を置かず、隣国は、遺憾を通り越し、此れが事実ならば、それは、韓日による我が国への宣戦布告と見做す。と云う、想定内の、談話を発表した。

「総書記、九段線の確保や、台湾への侵攻、勿論、日本との領土問題は、忘れて頂けませんか?まぁ日本とは、日本が、貴国との間には、領土問題は存在しない。と言っていますし、我国も、貴国との間に領土問題等、『ない』と云うのが、公式な立場です。しかし、それでは、総書記の御立場が、保てなくなるでしょう。そこで、我々としては、一八六〇年前後に、貴国の前身である『清国』が、当時の帝政ロシアによる武力威嚇で締結させられた、『璦琿(アイグン)条約』と『北京条約』の破棄、この不平等条約で奪われた所謂、外満州とも言われる沿海州全域の完璧な『奪還』を支持致します。要は、第二の香港奪還と同様な貴国民の執っての『祝祭』を総書記の外交力で、成し得る為の側面援助をお約束致します」

「勿論、此の事は、日本,EU諸国の利害とも一致しますので、彼等としても、如何なる協力をも惜しみません。」

「ウラジオストク/東方を支配する町(Conqueror Of The East)ではなく、其処は、元々の地名である、海參崴ハイシェンワイナホトカではなく灠溝崴セキコウワイに戻るべき。ハバロフスクは、ロシアが帰国から奪って作った都市と云うのが我々の考えです」

「そう我々の眼前から、スラブ人と云う存在を駆逐する事をご提案させて頂きます。結果、ロシアは、ウクライナにも負け、その領土は、一七世紀以前ロマノフ家がロシアを支配し始めた時点に迄、戻る事となります。貴国には、隣国のモンゴルやカザフと同様に、ウクライナの側に立つ。という旗幟を鮮明に揚げて頂きたく存じます」

「御主旨、理解しました。只、即答は避けたい、ご理解頂けますか?」

「では何時迄に、お答えを戴けますか?貴殿からの、貴国としての責任ある答えを世界は、待っております」

大統領は、総書記を逃がすつもりはなかった。でダメを押した。

「この会談内容は、大統領府として世界へ、プレスリリースと云う形で、流す予定です。我が国を含む『西側』は、この件に関し、既にコンセンサスを得ております。私の立場は、貴国から最も近い位置に居る隣人。で在り、西側の代弁者と云う立場に過ぎず、自由民主主義諸国の総意を代表しているに過ぎない事をご理解ください」

「あ。勿論この『西側』にアメリカは、含まれては、おりません」

「判りました。我々の時間で、明日までにお答えを提示します」

この辺に関しては、独裁者の『跡継ぎ』と言われる、宗の言葉は、明快であった。彼も又、汚職追放という美文を用いて、既に、彼の『核心的』な政敵の駆除・排除には『成功』していた。

只、それは、彼の周囲に、彼に執って『イエスマンしか、周囲に残ってはいない』という事を意味した。

前任者の様に、経済問題に精通したライバルすら居ない事は、問題。と大統領は、感じ、考えていた。


翌早朝二時、未だ宵が開けていない、平壌の北方三百キロの東倉里トンチャンリにある発射場は、既に、複数の合成開口レーダーと光学式レーダーを搭載した日本の情報収集衛星団が、常時監視していた。

此の地の動きに異変を感じた日本のNSCは、データ中継衛星を使用し、ソウルのNISと、この情報を共有していた。其処、官邸(青瓦台)のバンカー内には、韓国大統領も居て、彼の指先には、赤いボタンが用意されていた。

NISの情報分析官が、画面を通し、敵ミサイルがアクティベートした事を大統領に伝え、彼は躊躇なく、机上の、赤いボタンを押した。画面は、程なくして、敵ミサイルの姿が、衛星画像から目標のシグナルに変わった。

三秒後、壁に掛けた監視画面は、ブラックアウト(要は、搭載カメラが、大気圏内に突入し停止モードに入った)し、数十秒後、その場所で、大火災が発生している事を示す絵が、壁に掛けてある情報収集衛星からのライブ衛星画像と言う形で、映し出されていた。

後から解析し判った事だが、北の最新の極超音速ミサイルは、完全に破壊されていた。

しかし、弾頭によって破壊された、ミサイルの胴体部分に搭載されていた燃料が、破壊された穴から洩れ、それが、台車と弾頭の摩擦熱で引火し、其処では、大火災が発生している。と云うのが、この攻撃自体の成果であった。

しかし、一発の通常ではないが、完璧な非核弾頭、非炸裂弾で、周囲のミサイル発射に関連する装備が、全て燃え尽きている事を、衛星から送られてくる画面は、示していた。

しかもこの弾頭はミサイル自身だけでなくそれを搭載している台車、を貫通し、舗装された路面に迄、かなり深くめり込んでいたそうである。そして、幸いな事に、対象は威嚇の為のミサイルであったらしく、極超音速弾頭部は、模擬弾頭であり、それ自体に爆発は、起こらなかった。が、燃え尽きてはいた。

要は、核(弾頭)による汚染は、周囲には無かったが、引火した液体燃料により、弾頭や発射装置自体は、燃え尽きた様では、あった?この結果、隣国は、虎の子の発射装置まで失い、当分の間、同種の最新型の極超音速ミサイルの発射実験を同所で実施する事は、不可能になる事が、想定された。

未だ、北の、極超音速ミサイルの燃料は固体燃料ではなく、液体燃料である事が国際的に暴露されたが、日本に執っては、この弾頭の最終実験。

しかし韓国に執っては、此の威嚇は、大成功であった。

この事実は、隣国以外にも世界に向けて『大きな衝撃』を与えるだろう。

この画面は、当然日本も共有していたが、世界に対して発表する栄誉

『地上の何処に移動式ミサイルを隠匿しても発見でき次第、この様に“安全確実に”破壊できる』

『またサイロに格納されたICBMも、サイロの位置さえ特定できれば破壊可能』というステートメントは、韓国政府によって為された。

此れは、核の傘の“かなり”が『無効化する』という意味でもあった。

現地時間の当日昼には、世界中のメディアが、ソウル発で、この事実を動画付きで報じる事と成った。

この結果を受け、宗総書記以下、隣の首脳部の反応は素早かった。

「大統領。貴国の措置には驚きました。あのようなモノをお持ちだったのですね?」

「はい、只、あれは全て日本から提供されたモノです」

「しかし、日本は、憲法の縛りが有るので、使う事が出来ず、其の儘、装備一式が無条件に、我国に提供されたのです」

韓国の大統領は、自国製の兵器では無い事を素直に伝えた。

「貴国と、日本の同盟関係は、其処迄、深化しているのですか。驚きです」

「そうですか?石田首相とは既に、何度か。面と向かって話し合いをし、盃も交わしています。彼の為人(ひととなり)、そして彼の政権の持つ“素直さ”を私は、個人的に評価しています。出なければ、このような手段の提供も無いでしょう。故に私は、日本との同盟を深化させる方向に、舵を切ったのです」

この韓国の態度は、宗を驚かせた。彼が未だ韓国で野党時代。そう、彼の政党は、どちらかと言えば反日、反米的であり、宗以下、隣国の党に執っては、御しやすい『相手』だと見ていた。

しかし、今の彼等の態度は、当時とは真逆である。

「総書記。先ずは、相手を深く知る事です。因習に囚われず、相手の言葉に『言に耳を傾ける』事からお始めになられては、如何でしょう?」

『意外』以外の何物でもなかった。

「解りました、貴国の提案を吞みましょう」

「そうですね。それが、賢明な、この地域で最も大きな国の指導者としての御判断だと、考えます。で、この結果を西側いや、私共の属する同盟国達に報告させて頂いても構いませんね?」

「勿論」

「では、貴国と我が国の間にある離於島イオドは、当然、我国の領海内に在り、我国の英語表記の基となった『高麗』等の歴史問題に関しても、貴国としては、我々の考え方に対し何ら異存はない。という事で、今後、国際的に発表致します。宜しいですね」

宗は、この質問に対して“だけ”は、無言を通したが、日本の尖閣列島海域を遊弋していた中国海警局や人民海軍の船は、この日を境にして霧消していた。又、南シナ海の海警局の船も、目立った威嚇的行動を執らなくなって行った。

隣国は、ロシアの対ウクライナ戦争は、明らかにウクライナに対する侵略行為であって、隣国としては、今後一切この事に関して国際的に、ロシアを支持しない旨、公式に、発表した。唯、この時点では、西側(NATO)と同一歩調を取るとも、一切言わなかった。

週末、急遽、東アジアの自由主義2ヶ国、プラスASEANの権威主義国(隣国の衛星国)以外の首脳会議が、マニラで開催される事が発表された。

この会議にはEUの議長(大統領)と欧州委員会委員長、そして、NATOの関係者が、オブザーバーとして参加する事になった。

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