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“Effects of selfishness/利己主義の影響”(Another story of Civil war)  作者: 河崎浩


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10/13

利己主義の影響(10)

(外交交渉)

(LA)

(ロシアを去勢する欧州)

(外交交渉)

夕刻になり、石田は、オンラインでドイツ首相と秘密会談を持った。

このEUの中心に在る国は、絶対に、EUで、中心的な立場を執ろうとはしない事でも、自身の考えに相通じるものがある事は、解っていた。

だが今日は、胸襟を開いて、自身の考えを述べ、彼が、どう反応するかを見定めるのが、主目的で有った。

「首相、お忙しい中、お時間を作って頂き有難うございます」

実は、石田もそうだが、ドイツ首相も英語が堪能であり、今日は、正に通訳官も入れず、差しの話し合いの場で、有った(とは言え、双方共レコーダーは、回していた)

「いいえ、私も石田さんとは、今年はサミットも無いので、こうして直に話をできる機会を楽しみに待っておりました」

そう合衆国の内戦を受けて、ここ数年の間、G7サミットは、有耶無耶の中で中止となっていた。

「貴国が、東欧や、北欧の首脳のコンセンサスを纏め上げ、フランス。イタリアと共に、UKそしてスペイン、ポルトガルそしてバチカンに迄、過去の贖罪をさせた事は、非常に感銘を受けました。唯、合衆国の内戦を受けて、貴国及びEU地域のエネルギー事情が、贖罪をした南米やアフリカからの産物だけで、代替できるとは考えて居りません。実際、EU加盟国の中でも、ロシアにすり寄る勢力、ウクライナの問題を我が事とは捉えていない勢力が、未だ、無くなっては、いないと聞いております」

石田が一気にまくし立てたが、この見方は、ドイツ首相や、EUの中心メンバー国の懸念点でもあった。

既にウクライナ紛争(戦争)は、関係国の経済規模に比例して、規模こそ縮小傾向にはあったが、継戦期間は、先の大戦を超えて、一進一退を繰り返しながらも、昔のシリアや、中東問題と同じ形で継続していた。

又、合衆国の内戦は、イスラエルに対する外国からの歯止めが、無くなった事を意味し、良好な関係を築き始めた、アフリカや中東情勢も暗澹とさせていた。

「そうですね。我が国も、自然エネルギー比率を40%迄は、維持できていますが、残念ですが、フランスの協力を得て、原子力を使わざるを得ない処迄、追いつめられているのは、事実です。まぁ、電気自動車等のバッテリー技術や資源等は、アフリカ諸国の理解と協力もあり、心配は、していないので、此の方面では、自信が有るのですが」

「という事は、ロシア由来のエネルギーや、大陸産のレアメタルには、関心は、もう無いと考えてもよろしいのでしょうか?」

「いや、そう云う訳では無いのですが、実際問題として、あの国、地域からの産物は、変数と捉えています」

「そうですね、古くは、ナポレオン、最近は貴国も、ロシアの征服には、失敗していますからね」

石田はジョークっぽく言って見せた。しかし、ドイツ首相は、そうは、受け取らなかった様だった。

「征服、他国を犠牲にして、我が意を通す、いかにも、チンギスハンを生んだ、アジアらしい発想だ」

彼は、むっとして答えた。

「お気を害したならば、お詫びします。しかし、彼の国のロシア系と言われるスラブ人は、我々アジア人に執っては『癌』である事は、紛れもない事実です」

今度は、石田も少し強く言い放った。

「未だに、タタールの頸木とか言う700年前の事を引き合いに出し、我々の領土や隣国のルーツを蹂躙している事実は、事実で、貴国やEUの皆様が、昨今、アフリカや南米など旧植民地国家に執った態度とは180度異なる姿勢を未だ『是』としています。その成れの果てが、今次ウクライナ紛争で有り、今迄永世中立を守り通していたスカンジナビアの二ヶ国がNATOに加盟を申請し、CSTO内でキリスト教国だった、アルメニアや、ジョージア、ソ連崩壊を待って、バルト諸国が、とっとと、スラブ系ロシア人に三下り半を投げかけ、分離独立しNATOに加盟した『理由』では無いでしょうか?貴国が生んだ、ヒトラーやナチスの理屈と、今次、貴国が『核』となってEUに執らせた理屈とは180度異なる見解です」

ドイツ首相は、この石田の見解と言葉の強さに少し狼狽えた。

「歴史的な事実を申し上げれば、あのスラブ人は、不凍港を求め、西へ、南へ、彷徨しましたが、当時帝国主義を是としていた貴方達は、それを許さなかった。故に、彼等は、貴方達が執った手段で、清(満州人)のルーツでもある、沿海州に辿り着き、清に対し、今となっては、違法で無慈悲な帝国主義的な条約を武力で脅し、締結させた。又、シベリアと言われる地域は、元々アジア系の、匈奴や、突厥そして(モン)(ゴル)系の人達が、穏やかに暮らしていた土地だった。其処を騙し取り、フランスや、イギリス、スペインや、ポルトガルと同じ手段で、宗教以外の言葉や習慣迄、奪い取った。と言うのが我々から見た、歴史的な事実です。ケーニッヒスベルグも、元々は、そんな場所でしょう?何か、反論できる、要素が、御座いますか?」

「しかし、其れは、歴史的帰結で有って・・・」

ドイツ首相は、言い澱んだ。

「ならば何故?アフリカや南米の先住民に、あの様な、お詫びのステートメントをそして具体的には、旧欧州の植民地支配をしてきた国々に対し、被植民地国家や征服された土地への、過去行ってきた統治方法の根本的な誤りを謝らせ、EUとして和解の助力を惜しまないと発表する先頭に立たれたのですか?単にイタリアや、バルカン半島経由で、地中海方面から来る異教徒でもある不法移民対策。と言う訳では無いでしょう?貴方は、何故、その様な行為が『EUとして必要だった』と、お考えになられたのでしょう?それこそ、歴史的な誤りを正すのに、時間など、関係が、無かった。イスラエルの、いいやユダヤ人の一部が、今、アラブの人々に強いている、人を人として扱う事を拒絶した行為を過去のドイツが執った行為に縛られ、正せない。この反省に、貴方ご自身が、立って居るからでは、無いですか?EUは、公明正大な態度で、今後は、臨む。故に、今、貴方方、ポリティカルコレクトネス、いや公平公正な態度を『核』として、EU加盟の皆さんは、アフリカの皆様をアフリカに、南米や、中東の人々は、そもそもの居住地で、安寧で、安定した生活を送って貰うには、どうすべきか?を合衆国に代わり、提案し、築こうとしているのでは、ないですか?今迄、以前合衆国と言われた地域に住む人々の抱える問題は、何か?を貴方ご自身は、本質的に理解して、いらっしゃるから『こそ』でしょう?」

「石田さん。その通りです」

ドイツ首相は、この男が見抜いた事を全て肯定するかの様に話し始めた。

「今、アメリカ人は、共通項を認め合って(コミュ)合体(ニティー)を継続するより、些末な違いをお互いに論って(あげつらって)、純化を求め分離する道を選んでいます。自身の考え方や、やり方と少しでも異なる考え方を許さず。許しが無いだけに、存在を消し合っているとしか思えません。内戦が進むに連れ『意見の合わない人間やコミュニティーに対する虐殺や絶滅』我々が、憧れていた、古き良きアメリカの持つ、大らかさ、懐の深さや合衆国の建国の理想。我々が、かつて『犯した』とんでもない過ちを『打倒』した後に見せた『懐の深さ』は、何処へ消えてしまったのでしょう」

首相は、幼い時分テレビで見た、民族浄化(コソボ紛争)と言う行為を思い返し、力なく呟く様に語った。それは、石田など日本側の首脳陣の見立てと一致していた。

「首相、お解り頂けましたか。国家間の、いいや人間同士の、決め事、行為行動ですから、其処に、嘘や誤魔化しは有ると思います。只、これだけ情報に触れる機会が増えた人類にとって、もうダブルスタンダードと言う名の『我儘』を世界、地球に住む人類皆に、強いる事が、許される様な、国家や民族、いや勢力は、無くなったのです。ですから、過去、その様な身勝手を他国に強いた国や、民族は、その過去の事実を素直に現状で詫びた後、未来志向の考えに則って関係性の再構築。やり為す事を求められたのでしょう?」

石田は、諭す様な口調で話しを続けた。

「今、そのような行動基準に基づいた姿勢の修正が求められている国家は、アメリカを除けば、ロシアだけ。だと思います。同じ文化的背景と価値観を持つ、同じスラブ民族が犯した、ユーゴスラビア紛争、民族浄化と言う『愚』を近くで見て居たにも拘らず、其処から、何も学んでいない。」

「勿論、我々の隣にある大国も、その惧れは『在ります』が、ロシアの様に、グリーディー(貪欲)なビヘイビア(行為)は、未だ我々周囲にいる者達が、執らせてはいません。歴史的な価値観をそして今は、民主主義と自由という新たな価値観を共有する、我々の隣国である、韓国、そして、貴方達、欧州の国々に依り搾取される側でも有ったASEANの民主国家群で、その様な行為は、我々が(いにしえ)から持つ、彼の国から生まれた、歴史的価値(道徳)観に悖る。と言う方向性で、彼等、特に宋さんには、ロシア的な行動を採らせない事を既に伝え、説得しています」

「オオ!」

ドイツ首相は、感嘆した。

「これらの策動は、韓国政府が中心になってくれています。我々が先頭に立たない。此れは、我々も、貴方達同様に、過去の行為に縛られているからです。しかも、我々は、貴方達より、もっと『狡かった』かも知れない。何故なら、過去の行為に対する、万人、嫌、被害者が納得する形で認める『総括』を未だ行っていない」

「からです。まぁ此れは、私の右腕(官房長官)の考えでは、あるのですが」

石田は、頭を搔きながら話した。

「実際、我々の見立てでは、大陸の内政は、やはり彼の所属する党の方針の方向性で、どうにかなる様な『モノ』ではなく、権威主義的な強権も、これだけ正確な情報が得やすくなった今、いつかは破綻し、世界と共存しなければ、一国一民族、一方向の考え方だけでは、立ち行かない。という事に、宋総書記も、気付き始めている様です。従って、その為に、何時まで?権威主義的な独裁を続ける気なのか、そこは内政干渉になるので、口出しは、しませんが、我々、彼等と同根の道徳観を持つ勢力が、寄って嵩って、彼等に、其の見方と懸念を伝えるつもりです。彼等自身が気付き、自主的に態度を改めて貰う。これが我々流のやり方で、外堀は埋めて、攻め易い環境は整えても、本丸には攻撃(手出し)しない。ただロシアに対しては、過去の彼等の行動様式を鑑みて、宋総書記が指導する地域とは、同じ手段、考え方では、対応出来ない。と考えているだけです」

「我々は、今、貴方に、我々の手の内を曝け出しました。依って、EUとして、どの様な旗幟を示されるのか?それを加盟国の皆さんで話し合い、鮮明に掲げて頂きたい。と云うのが、今回の話の趣旨です。皆様方の出された結果が、我々の思惑と外れても、それは、それで、貴方達の、ディシジョン(決定)と言う事で尊重致します。しかし、価値観を共有する貴国や、EUの核を成す国々と、我々は、同じ方向性を向く事を期待します。特に今、我々の価値観の大本(おおもと)となった、一方の旗頭でもあった、合衆国と言う存在が、世界から消えたので、この価値観の維持は、我々の祖父母の代の権威主義者が起こした戦争で、徹底的に負けて、この民主主義と自由主義と言う価値観の大切さを『心底』解らされた、国民の代表として。貴国と貴方には、私共と共にある事を期待しております」

石田は一連の交渉経緯を、山田以下政権幹部にレコーダー録音として聞かせ。韓国大統領以下韓国政権幹部にも、詳しくその方向性をさしで説明し、彼と、その側近。政権幹部への理解と、了解を得た。台湾政権へは、韓国政権がこの考え方の大筋を説明した様であった。


(LA)

パサディナ近郊に在る、その高級コンドミニアムは、カルフォルニア工科大学の日本人教授のレジデンスでもあった。彼は、政府の指令で、日米共同で自然由来(対環境性能が高い)の、航空機用高出力新燃料の開発に従事していたが、内戦を機に、一旦、日本へ帰国していたので、其処は、空き家でも有った。此処を山本夫妻と田中は、前線基地とする事にした。全ての通信機材をサンアントニオの実家に置いて来た、彼等に執って、流石に、政府系の研究者なので、秘匿性の高い通信環境等が、完備されているファシリティーを宛がわれたのは、大きかった。

又、近所、とは言っても日本の感覚とは、かなり異なるが、彼等にも、同じ人種の山本等の姿は、全く怪しまれる事は無く、周辺風景に溶け込めていた。

カリフォルニア州は、全米でも最も、銃規制が、厳しい州で有り、コンシールドキャリー(銃を秘匿した状態で携帯する事)であっても、銃の普段からの携帯は、厳しく罰せられていたのだが、内戦勃発後、その規制は、一時的に、リベラルな知事の命令で緩められていたので、皆が皆、テキサスの様に、武装をあからさまにしていた。

やはり、憲法修正第二条『規律ある民兵(ミリシア)は、自由な国家に必要であるから、人民が武器を保持し携帯する権利は、奪われない』それと、二〇〇八年の連邦高裁違憲判決の内容は、カリフォルニアの様なリベラルな州でも、しっかり根付いていた。

この家の隣人は、華人アジア系の二世でもあったが『規律ある民兵』の、一人でもあった。同じアジア系という事で、彼等は、この家に引っ越して来た山本等を見て、直ぐにホームパーティーに誘った。この感覚も日本的ではなく、エイリアンを理解するには、彼等流で、『友人になる』事で、『放置して、無関係で距離を保ち、無視する』事ではない、と言う、アメリカの典型的な価値観を彼等も、有していた。

田中は勿論、山本夫妻が、元の隣人と、どのような関係にあるのか、此の説明(先住者との関係性)は、専ら、山本が熟し(こなし)たが、此処に至るまでの道程。その説明は、彼等、隣人一家には、大層受けた。それにも増して、山本の妻が、生粋のテキサス、しかもそのアッパークラス出身の人間という事もあるが、山本と田中の語学力や立ち振る舞いが、完璧にネイティブで、都会的(洗練されていた)な事で、彼等は、田中を含む山本等が、自分達と同じ階層(無学な貧乏人ではない)と確信し、安心した様でもあった。

彼等の祖父母は、先の文化大革命の時に、命からがら、大陸から脱出した家族の、孫と曾孫でもあった。苦学の結果、父の代で、今の地位を確立し、この場所に至っていたので、彼等は、大陸を『現在』統べっている政体を心から嫌ってもいた。

ダウンタウンや、スーパーには、間に、旗幟を鮮明にしない州に囲まれたテキサスとは、異なり、十分で種類に富んだ商品が供給されているのが、大きな違いで、カリフォルニアからオレゴン、ワシントン州と言う西部連合(太平洋に面した州)は、基本、エネルギーや食糧。そして昨今の地球環境の異変から激増していた山火事対策の為、今や、シンガポールを支えているカルフォルニア州のLAに、本部がある会社製の『海水淡水化装置(実証実験プラント)』の正式稼働により供給される潤沢な水のおかげで、フーバーダムがある、未だ、旗幟を鮮明にしない州でもある、アリゾナやネバダを頼らずとも、水を含む全生活物資や、オリジナル政府の頸木から離れた事で、リーズナブルコストで連合国民に提供できる、衣類や小物、部品類も、メキシコやカナダから輸入する事が出来ていた。軍事物資や関連情報以外は、産業物資に関しても、シェアーでき、サプライも出来ていた。勿論。その行為は、民主的に選出された地元立法機関と、それにコントロールされた行政機関が代行していた。

だから彼等は、従来と、全く変わらない『アメリカ的』な優雅な生活が、内戦勃発後も、、享受できていた。敢えて問題を挙げるならば、情報の自由さが、一部制限されえいる事位であった。

従って彼等の興味は、北部ではなく、隣接する、基本産業が農業でもある、アイダホ州。そして、今や、カリフォルニア州の別荘地化しつつある、ネバダ州を仲間に入れるか?どうか?だけと言っても過言では無かった。

特に西部連合のもう一方の中心であるテキサスと、カリフォルニアの間に在るアリゾナの帰属が最大の関心事であった。

価値観が非常に近いと、他国からは客観的に見えたが、『絶対』と言う概念に於いて、相容れなかった、北部連合とは異なり、基本、距離的な問題もあって、アリゾナの帰属が、西部連合に採ってはライオリティの第一で在り、北部連合との関係性の再構築は、西部連合に執って、喫緊の問題とは、なっていなかった。

その様な中で、彼等の琴線に『劇的』に触れる事件をオリジナルと称する、高慢で、単眼的な『神を信じる』絶対の白人達がワシントンで、仕出かした。

そう、DCに在るリンカーンメモリアルが、彼等の手により― 後で、これは、一部の過激主義者による誤爆と言い訳をしたが― 爆破破壊されたのであった。この結果、西部連合は、正式にオリジナルと自称する、WASP主体のアメリカ合衆国オリジナルに対し宣戦を布告し、(彼等に言わせると『似非』)アメリカ正副大統領と、その閣僚全員を民主主義に対する犯罪人として、訴追した。(最終的に生死を問わず“捕獲”する命令が下された)

各州に点在する米軍は、西部連合により、何れか?への帰属が求められた。

西部連合は、核を搭載しているミサイル、そのICBMが格納されているサイロの殆どを保管している、隣接するネバダとニューメキシコ州の篭絡に、直ちに執りかかっていた。

勿論、そこは、一方の管理者であった、カナダの強い要請により、NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)の管理から外れ、既に単に核ミサイル(ICBM)の保管庫としてのみの存在では、あった。

しかし、ここに来て、北米大陸の中心に位置するNORADのヘッドクオーターが有る、日和見州のコロラド(スプリング)をオリジナルとリベラル州の何れが抑えるか?がプライオリティの上位に挙がって来た事は確かであった。よって、旧合衆国/オリジナルの軍(首脳部)は、在外米軍の所属に迄、いよいよ手が回らなくなっていた。

既に日韓と欧州に駐留する陸上部隊及び、九と八を除く全空軍と、三から六迄の戦略原潜部隊を含む海軍艦隊は、西部又は北部連合の麾下に完璧に属していたが、最大の空軍基地である、ラングレーの帰属と東海岸にある一部の海軍基地及び各州の州兵(陸軍)は、未だ、その態度を鮮明に表してはいなかった。しかし、彼等を養える(維持できる)州(連合)は何処か?を突き詰めていくと、その帰結は、自ずと決まって行った。

その様な、最中(さなか)での、オリジナル内の過激主義者による、感情に基づく犯行で有った。

此の様な緊迫した、アメリカ国内の事情は、山本と田中の現地レポートを待たず、CNN等のメディアや、個々人の持つアカウント(ソーシャルメディア)経由で全世界へと、瞬く間にオンタイムで伝播して行った。(彼等は、各政府系の持つ強力なファイヤーウォールを破る手段を構築する事に成功していた)

橋爪と刈谷は、彼等を経ずに得られる民間ベースの情報で、凡そ、米国民の民意を判断できる程度になってきた事もあって、市ヶ谷の橋爪の居室で、そろそろ彼等の帰還をさせるタイミングを計り始めていた。


(ロシアを去勢する欧州)

挿絵(By みてみん)

ロシア大統領は、アメリカの政権が代わり、内政問題を重視し、とても内向きな政権へと様変わりした結果、米国に執って内政問題でもあるイスラエル(ユダヤ人の歓心を買う)に対して、米国内、特に現政権の支持者に執っては、一文の得にもならないウクライナへの武器援助への魅力が、相対的に薄くなり、結果、無くなり、ロシアに執っての目の上のたん瘤が消え、シリアへの影響力が無くなった後、悲願の、黒海への自由航行権が手に入る事を最近迄、夢見ていた。

しかし、対岸のトルコそして、最近までエネルギーで、首根っこを押さえていると、見做していたアルメニア、ジョージア、そしてカザフスタンのCSTO(集団安全保障条約国内の隠然たる反ロシア勢力)に対する、ドイツを中心とした、欧州諸国(NATO)から、ウクライナに対するのと同程度の、武器援助が、途絶えなかった点にプラスして、彼等が仏韓の技術をベースとした原子力を含む再生可能エネルギー技術の供与で、これらの地域にコミットし出した事は、誤算であり、その姿勢に苛立ちを覚えていた。

ベラルーシを除く彼等、元ソビエト構成国。即ち、CSTO(集団安全保障条約国)は、昨今、大ぴらにロシアの行動に対し不快感を表明する様になって行った。

しかも誘導兵器やドローンに使用する半導体の供給先(と信じていた)同盟国からの供給も、先細りして来ている。

しかも、彼等は、此れ等旧ソビエト構成のCSTO諸国に対し太陽電子パネルなどの再生可能エネルギー生産用の物品を提供しているのが気掛かりであった。そう彼は、この最大の同盟国も西側から、その為の加工機(と補修部品)の供給が滞り、彼等自身が、最先端部品の作成に四苦八苦している事は、知っていた。

故に、彼等の歓心を買う為の行為が、此処までエスカレートする事は想定外でもあった。

そして、決定的な彼の国との差は、隣国共〇党は、それら武器に転用可能な製品や部品の対ロシア輸出が無くても、一般民生品の得意技術により生み出された産品の輸出が世界に受け入れられれば、そして、それ等産品が、国内で正しく消費されるだけで、自国民を生き残らせる(十分に稼ぐ)事が出来た。又、ロシアやアメリカ以外に、彼等に食料や民生を売りたい国は、沢山あった(彼等は、購買力のある市場でもあった)。

其の上、彼等自身が、ロシアとは決定的に異なり、オリガルヒの様な、党の言う事を聞かない裕福な人口(層)が、(基本)いない。又は、党指導部の完全な指導下に在った。

要は、社会の根本が、党指導の許、強権下で、維持されていた。そして最も大きな差は、彼等は、ロシアと異なり、アメリカ市場無き後、西側に採って、世界経済に大きな影響がある『市場』でいる事が可能であると考えていた。

現状ウクライナ対策だけでも手一杯だった処へ、何者か(多分トルコ)の入れ知恵で、アルメニア、ジョージアなどのコーカサス諸国に続き、CSTOの中でも最もロシア寄りと思われていた、イスラム国家のカザフスタンが、多民族国家。故に其の統合を宗教に頼り始めた結果、国民をまとめる為に、正教(キリスト教)を強く前面に押し出していたロシアと『(たもと)』を分かつ事と成ったのも、誤算であった。

また、衛生、緩衝国の一つと見做していたモンゴルも、今や日本の影響の方が、ロシアより大きくなっていた。

このモンゴルからの誘因も、民族的に近く母語がロシア語ではなくモンゴル語と同じアルタイ語族になるシベリアの諸州や国家群には、スラブ系民族に対する反感もあり受け入れやすかった。

今や、東に開いている窓は、クリル(千島)やサハリン(樺太)、沿海州部に、移住して居る極少数のスラブ人を除くと、我々が指導的な立場でもある、同盟国の北朝鮮だけ。という状態でもあった。

長引くこの紛争により、ロシア国民内に蔓延している、厭戦気分を打破するには、喫緊の優先課題は、何としても、ウクライナとの紛争をロシア側の完全勝利の内に終了させ、自身の求心力を維持・増加する事。

そして持てる武力を出来るだけ速やかに、ウクライナから周辺部の、安定に、そして勢力の維持に回す事であった。

しかし、実際、東部にモスボール保存していた旧型兵器のストックも枯渇し、新規兵器を作る余力は、失われつつあった。彼等の思惑(見込み)は、彼等が当初、思い描いていた思惑とは、相反していた。

ブリュッセルのNATO会議でドイツ首相は、あらゆるメディアを完全にシャットアウトした閉鎖会議場で、フランス大統領、イタリア首相そして、北欧出身のNATO司令官に対し、日本の首相と交わした密談の内容を説明していた。其の上で、彼等は、北極海沿岸に散らばる、ロシアの資源地帯に対するEU/NATOによる占領政策を話し始めていた。

要は、日本の首相の提案は、NATO軍の総司令がアメリカからスウェーデンそしてフィンランドに代わった事で得た欧州人による,NATOコマンドに関するフリーハンドを持って、ロシア人から、台所を残し、財布を全て、取り上げる(国際=EUの管理下にする)事。即ち、ロシアを完全去勢する事をNATOと共にアジア版のNATOであるインド太平洋条約機構軍(IPTO)で共同作戦として提案されたことを打ち明けた。

本作戦の実行開始時期は、韓国政府が、宗総書記を説得したタイミングで有ると説明した。

宗総書記の国との貿易量は、フランス、ドイツ共に小さくはなかったが、この結果が齎す、彼の国の民主化が適えば、その貿易ルールは、我々が有する理念通りに変容する。と云う算段も示されていた。

又、南極で問題視されていたオゾンホールが、今、当に北極でも拡大化している事態で、この地域を国際共同管理する事で、地球環境に対する管理と監視の責務を我々(EU)が、果たす事が出来る。EUが、国際的な発言力を増す事も、日本の首相は、期待している旨も説明した。イタリア首相とNATO司令官は疑いも無く、日本の提案に賛意を示したが、フランス大統領のみが、余りにも、我々EUに都合が良過ぎて、且つ、提案元で有る日本が、ほゞ表に出てこない条件を訝った。

この件に関しては、ドイツが、何故、今、この状態(欧州の中心国)と成れたか、その歴史的経緯を、未だ日本は、果たしていない。故に、最前線には、立てない。と云う姿勢を石田首相が示した。と云う説明をした事で、全体からの納得は、得た。

「まぁ、残る課題はトルコ(の面目/誇りを“どう”保つか)だけだな」

と言うのが衆目の一致する懸念点ではあった。

日本の提案では、現在ウクライナ戦争に従軍させられている、ロシア軍の中核をなす兵隊を輩出させられている、シベリア地域のアジア系の韃靼(モンゴル系)やウズベク系民族をロシアから『完全に独立(自立)』させる事を図る。

結果、ロシア軍の弱体化(最終的には無力化)。と言う処方箋も含まれていた。

この提案方向で韓国が、モンゴルとカザフの協力の下、大陸の旧ソ連構成国家(CSTO)の理解を得る努力をする事も説明した。そう大陸の国々は、ロシアに奪われた失地をこの作戦に協力する事で回復させる。

特に、宋総書記の国は、その最も『大きな果実』を得る事が出来る。これがこの作戦の『肝』でもあった。

基本構想は、シベリアを三分割し、ノボシビルスクと呼ばれる街を核とした地域は、カザフスタンとエカテリンブルグに常駐して貰うトルコが管理し、ブリヤートと、ザバイカルは、モンゴルの管理下に、サハから、カムチャツカ半島に至るエリアは、南極の様に国際共同管理下とし、我々民主主義国家群が、内戦下にある対米監視をゆくゆくは地球環境監視をカナダと共にする拠点と成す。

従って、この国際管理地域の資源開発は、南極同様に一切させない。

中央アジアの元ソ連構成国で有った、イスラム国家の、カザフスタンを中心とするイスラム国家群とイスラム教を国教とするが世俗主義の国家であるトルコが、バイカル湖以西からオビ湾とウラル山脈を結ぶ線迄の『西シベリア』と、呼ばれていた地区の共同管理の任に当たり、オブザーバーとして、彼等と潜在的に価値観が合わない、キリスト教国のコーカサス諸国にも、加わって貰う。結局日本や、西側諸国の考え方は、トルコが主導権を握りこの地域の宗教色を排し、世俗主義で纏めて貰う事で、この地域が潜在的に持つ、宗教を根底に持つテロリズムの排除が掲げられていた。この地域の産業や資源は、その考え方を担保するに十二分なポテンシャルがあると日本(山田)は、見ていた。

決定打は、沿海州と呼ばれた地域。旧満州族にとって、彼等の故郷の奪還。と言うモノであった。

勿論、北極海の沿岸部のエネルギーの供給拠点足る地帯は、EU(NATO)が、唱える環境保護政策の下、管理の責務を負う事で、ロシア(のエネルギー資源)に、すり寄ろうとしている、権威主義勢力や、ウクライナの紛争を我が事とは、捉えてはいない、ロシアと地続きではないEU内の反動勢力に対しても、納得させる事が、可能と云うのが、日本側の描いたシナリオであった。


又、この方向で作戦を進めれば、非キリスト教国と云う事で、EUの仲間には、してもらえない、NATO加盟国のトルコの面目も経つというオマケも、説明された。

トルコには、立地的にも宗教的にも、西シベリア地区最大の州都でもあり、11世紀からロシア人の支配地でもあった、エカテリンブルグと呼ばれた、ウラルの入り口に位置する都市に常駐し、アフガニスタンのような問題国と共に、イランの様に、自由主義、民主主義とは、価値観が合わない『国』の抑え。そしてロシアの軍事的な動きを『監視して貰う』と云う、オスマン的な民族主義を満足させる形での『重要な責務』を負わせる事が、決まった。

要は、スラブ系ロシア人をナルバ川以東からウラル山脈以西の間、元々のスラブ系ロシア人の居住地域に押し込め外(凍らない海)へ出る出口は、トルコやEUの管理地を経由しない限り、与えない。という案が、アジア側からの提案の骨子で有った。元々。多く見積もってみても、一億六千万弱程度のロシア系のスラブ系人口を元々の居住地であったエリアに押し込める。

とは言っても、其の人口密度は、アジア諸国のそれに比べれば、相当、余裕が有り、且つ、ノブゴロド沿岸の食料生産に適した地帯を領内に残す事で、食料自給に関しても、其の人口が、完全に自足出来る領土テリトリーを残して置く。と言うモノであった。

日本側の懸念点は、唯一、彼等の生産した、核を含む、膨大な兵器の管理体制だけ、であった。エカテリンブルグに駐留が求められているトルコには、その責務の一端も、担って貰う事が求められた。

NATOからの、ロシア軍が、装備している、核を含む全兵器に関するNATOとしての管理の具体案(策)。その答えだけを日本と韓国は、待っていた。

EU首脳会議で、大筋の合意を見た事で、これらの『提案』をEU拡大会議(但し非公開)、そしてNATOの会議で決議し、プレスリリースのタイミングは、先程述べた、韓国からの指示を待つことになった。イギリスや、EU内の未だ完全に自由で民主化がされては、いない小国からの若干の抵抗が有ったが、ロシア軍の核を含む兵器の管理体制の責任は、ドイツとフランスが企画の責任を負い、具体的に動くのは、スペイン、スウェーデンとポーランド軍及びトルコ軍。そして九〇年近く前の『冬戦争』と呼ばれるロシア(旧ソ連)との戦いで領土を失ったフィンランドが中心と成った。

連合王国(UK)は、ブリクジットを仕出かしEUから分離した事。合衆国の様に、些細な違いを『言い立て』て、イングランド、スコットランド、アイルランドと言う3か国に分裂する国内諸問題が、顕在化しており、その対策(解決策の提案と了承)が、先決と諭されていた。

この流れはポーランドやスペインの元々ネオナチ的(自己中心的)傾向があった農民の執った行動が起点となった。

彼等は、元々は自己中、要は、狭い地域が平和に繁栄すれば、他所の事は、どうでも良い。という考え方であった。しかし彼等は、自身だけではもう生きて行けない事を、此の米国の内戦で痛い程、解らされた。その帰結であった。

庶民、底辺の反乱は、過去の革命と同様、世界を動かした。

スペインのバスクや、カタルニアのスペイン、ポルトガル、そしてベルギーの執った旧植民地への謝罪。

トルコを重要なプレーヤーの一人として扱う事で、EU/NATOは、人種や、宗教に関しては、あくまでも中立(ニュートラル)であると云う姿勢も絡み、イギリス人の選択が、我儘な行動と捉えられ、他のEU諸国から全く賛同を得られなかった結果の帰結でもあった。

故に、連合王国(UK)にもインドや、アジア・アフリカ諸国への英語を公用語にしなければならなかった、旧植民地への公な『謝罪』(内省の発表)が、先ず、EUの構成国民から求められていたので、一連のEUの所業(ビヘイビア)に付き合った、英国政府は、対外的な事より、内政面で大童。と云うのが、実態で有った。英国国内の、伝統守旧派(大英帝国時代の、ノスタルジーに、固執する連中)から『納得を得る事』は大変な事(内政問題)は、理解されていた。

しかし彼等のEUやNATOに於けるポジションは、既に、仏独等と同じ、中核の地位では無く、単なる、核を保有する周辺国の『一つ』に過ぎなくなって行った。

余談ではあるが、この連合王国の一連の混乱の中、国王を元首として扱う事を、オセアニア諸国とカナダと云う、元々、連合王国としては大きな勢力は、そのポジションを『辞め』て、オセアニア諸国は国旗からユニオンジャックが真っ先に外され、ユニオンジャックを国旗の中に取り入れる旧英国植民地国家は地上から事実上消えて行った。

核兵器自体や、あらゆるミサイルで、非核保有国を脅す効果は、此のウクライナ紛争の過程で、日本が開発した、新素材を使ったクリーンな衛星兵器により、SLBMを除き、ほぼ無力化されつつあった。

今や、大量破壊兵器より、確実で、生身の人減に対して容赦や仮借の無い対人兵器。所謂ドローンを始めとするAI搭載のロボットや精密誘導兵器。代表例としての米墨国境地帯に完備されていた『ウォール』や生物兵器の方が、人類には、脅威に感じられていた。

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