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「んなっ!?」
「ガキとは失礼しちゃうわね〜?この娘は貴方のパートナーよ、海野君」
酷いわね〜と、一緒に入ってきた竹田さんが言っている。いや、だって――
「こんなちんちくりんが、現対の魔法使い……?」
暗めの茶髪が腰のあたりまで伸びている、どう見ても、どう見積もっても小学生のチビだ。そこらの小学生と違うのは、嫌な予感がする、濃い赤色の首輪を嵌めているくらいか。能力が発現するのは基本的に成人までだから、こいつが魔法使いなのは理解できる。普通なら。
「なぁ副長。ここは一応、庁と付くからには行政機関なんだよな?」
「えぇ、そうね」
「このガキがなんだって?」
「だから、現対の魔法使いで、貴方のパートナーになる娘ね」
「いや……えぇ……?」
嘘だと言ってくれ。理解したくない。
「どう考えても――いや、考えなくても犯罪だろこれ。普通小学生を働かすか?それともアレか?この見た目で『実は合法です』ってワケか?」
「そう思うけど、お上が認めている以上犯罪じゃないのよ」
「この娘は見た目通りの子どもよ。ほら、失礼な金髪に自己紹介して」
「は、初めまして、セピアです!10歳です!働いているので、ガキでもちんちくりんでもないですが!よろしくお願いします!」
よくできました~とセピアと名乗った子どもの頭を撫でている。ガキでもちんちくりんでもないらしい目の前の子どもは、照れくさそうにしながらも、どこか嬉しそうな顔をしている。……いやいや。
「とりあえず、色々と説明してくださいませんか。副長サン」
「そうね。まず、セピアちゃんを含めたウチの魔法使いは、全員が孤児なの。で、引き取られた彼女たちは、9歳までは魔法庁が運営している施設で暮らしながら教育を受けて、10歳に配属先が決まるわ。セピアちゃんは現対ね。配属先ではこの娘を含めた魔法使いが4人一部屋の寮生活って感じ。普段はそれまで同様勉強しながら、現場対応時には貴方とともに行動するわ。以上。あとは貴方の知るところではないわね」
「……その首輪は」
俺がガキの首輪を指差すと、ガキはきょとんとしている。
「私たちの社員証と似たようなものね。対応時に位置情報がわかるようになっているわ」
「あとは貴方がお察しの通り、そういうことになるわね。この場では言わないけど」
――最悪だ。つまり、俺が押したあのスイッチがトリガーとなって首輪が作動し、爆発でもすんのかは知らんが、死ぬんだろう。
違う。俺はこんな、こんな何も知らなそうなガキを殺したかったわけじゃない。魔法使いはヒトの言葉が通じないが、少なくともこんなガキを殺すほど落ちぶれちゃいない。
「ごめんな、チビ」
「……?謝られる理由が分からないのです。あとチビって呼ばないでください!まだ成長するのです!」
俺は魔法使いを許せない。それでも、それはなんか違うと思った。
「とりあえず今日は簡単な顔合わせだけだから、後々の話はまたにしましょうか。親睦を深めるって意味も込めて、はじめのうちは週一で会うことになるから、ふたりとも頼んだわよ?」
「了解です!」
「それはいいんすけど、――いや、嫌なんすけど、親睦を深めるってのに週一すか?」
「そりゃ貴方と違って勉強を疎かにできないじゃないの。あなたと違って」
「……うっす」
なんで2回言ったし。
しっかし、親睦ねぇ……厳密には小学生じゃないんだが、俺の半分も歳を取ってないチビッ子との親睦を深めるって、話が通じるのか?大丈夫か俺。
「じゃあこれにて解散!私はセピアちゃんを送ってくから、貴方は帰りなさい」
「なんでだよ!?」
「病院に行けって言ってんの!そんな湿布だけで済まして、後に響いたらどうすんの!」
「……うっす」
世話焼き副長様に命じられ、早退することになってしまった。




