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廊下に出て階段を上ること、8階分。しんどすぎて逆にイライラしてきた。
「なんっでこんな階段上んだよ……!」
「はぁ……ここが、9階の……はぁ、みんなちょっと休憩」
同期たちは顔が死んでる。竹田さんもひぃひぃ言っているし、どうかしてんじゃねぇのかここは?
まさかこれから毎日この苦行が待ってるとか言わないよな?辞めたくなってきた。辞めないが。
「…………ふぅ。二度と上りたくないわね。どうかしてるわうちの機関は」
「みんな落ち着いたかな?じゃあ君たちにこれを授けよう!C級権限が付与されている社員証でーす!」
社員証?確かに今までは研修生用の臨時証だったが、なんで今――
「これがね、そこにあるエレベーターのキーになってるから。明日からはあれ使ってね」
そう言って指をさすのは階段の隣にあるエレベーター。
――は?
「おい副長さんよ。これはさっき渡しとけば楽だったよな!?」
「研修担当になったせいで毎年上らなくちゃいけない私が一番思ってるのよ!」
毎年上ってるのか……。
「だけどね、先に渡したはいいものの、忘れたり失くしたりした人が多かった時期があってねぇ……」
「紛失はダメだけど、無いのなら階段を上ればいいじゃない?なのに階段を上るのが辛いとかなんとか逆切れする人のまぁ多いこと。頭に来たから研修生にはこの苦行を味わわせてから渡してるってわけ。おかげで提案した私も味わうことになっているんだけどね……。でも、これならもう忘れることはないでしょう?これで忘れるなら、もうそれはそのときよ」
まぁ、それは確かに。こんなん二度とごめんだ。
「ちなみに臨時パスじゃ9階には行けないわ。行けるのは食堂がある2階まで。7階分は上らないといけないから、絶対忘れたりなくしたりしないでね。申請すればC級と同等の権限があるパスを臨時発行できるんだけど、かなり面倒なうえに発行した事実が君たちの経歴に永遠に刻まれるわ」
「社員証には、現場対応の時に位置情報をこちらで確認できる機能が備わっているの。その機能を使えば万が一なくしても探すことは可能ではあるわ。まぁ怒られるのには、変わりないけど」
「言っとくけど、紛失は重罪よ、マジで。拾った人間が悪意を持っていたら、機密事項も丸裸。情報漏洩なんてされてみなさい?最悪の最悪な状況になったら、現対どころか魔法庁――それで済めばいいけど、国が崩壊する事態にすらなりかねないわ。それに比べたら個人情報なんか比べるまでもないわね。私たちが扱う情報っていうのは、それくらい重いのよ」
竹田さんの話に静まり返る。そりゃそうだ。魔法使いを殺していないのに、そんなくだらないことで油を売っている暇なんかない。同期もそこまで馬鹿ではないらしい。
「あなたたちの社員証にはそこまでできるような権限は付与されていないけど、いずれ権限を持つ者として、覚えていてほしいの。私からのお願いね?」
「――さて、苦行の疲れもとれたところで、いよいよ現対の要、コントロールセンターを案内しましょうか」
お目当てのコントロールセンター。今の権限で何ができるのか。階級を上げる方法は何なのか。それを知ることで俺の野望へと一歩近づく。目指すは最短どころか、ショートカットして最高に最速で事を成す。そう考えると、これからが楽しみで仕方なくなってきたな。




