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「おい起きろアホ」
「――――あ……こ、ここは……?」
「しっかりしろ間抜け。小さい子をひとり置いてくな。今は現場対応中だ」
げんば……たいおう…………
「――そうだ、チビと対応すんのに現場で女の人に声をかけて、それで……ッ!そうだあの女!あの女が僕たちを!みんなを!」
あの能力のせいで姉ちゃんが!健太が!みんなが!僕の手足が!
「戻ってこい!何を見たのかは知らないが、少なくともお前の探してる奴じゃないだろ!」
「……冷静に考えろ、目の前の対象が推定いくつで、お前が探している人間は何年前の出来事だ」
「…………あぁ、いや、そうだな。それっぽいだけで能力の系統も違うし、何より若すぎる」
……そうだ。あれはもう10年以上前のことだ。
「時間が無い、やるべきことを思い出せ。傾向からしてもうセピアちゃんは何回ももたないぞ。義足はまだ動くな?俺はもう行くぞ」
「――お待たせ。僕は行くから、セピアちゃんは海野と一緒に頑張って。できれば、アッシュのことも守ってくれると助かるよ」
「了解です!」
っ!義手が死んでやがる!義足も違和感あるし、何より全身痛ぇし、なんて日だよちくしょう!
「――こちら海野。ひとまず無事です。対象は依然錯乱中。見た限りの症状からして、精神汚染深度Ⅱ……いや、深度Ⅲは行ってるかもしれません」
『こちら桐生。無事を聞いて安心した。どこまで聞いたか知らんが、山浦が消防隊に指示を出した。散水・消火・救護のやつらがそちらにすぐ到着する。深度Ⅲならまだ戻せる。対象の無力化を優先し行動しろ。周囲の家屋の損害は国がある程度補填する方向で臨時会議が行われたから、あとは持ち主たちが保険に加入していることを祈るぞ。だからといって進んで壊そうとするなよ!あと深度Ⅳに潜らせることだけは絶対に避けろ!以上』
国が出してくれるってのは不幸中の幸いだな。口の無い財布からよく取り出せたもんだ。
「じゃあ行ってくる。よろしく!」
山浦、なにして――
「――ッ!わたしの家に勝手に入るなッ!」
「させません!」
――っ!あいつの言った通りだ、あんな使い方じゃもたねぇぞ!
「がァ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」
「セピア!」
「海野さん!動いて平気なのですか!?」
「あぁ、大丈夫だ。それよりお前、能力の使い方何とかしろ!」
「今のところ寝てただけの役に立ってない人に能力について何か言われたくないのですけど!」
はぁ!?
「今見てただけでも、お前が何も考えずに使ってることくらい分かるわ!」
「いいか、その能力の発動起点はどこだ?」
「手のひらです」
「範囲は固定なのか?」
「そうです!」
「両手を前に出すのか?」
「そうですってば!」
「前に出さないと防げないのか?」
「だ!か!ら!そうですって!」
「そうですそうですって、試したのか!?」
「試したも何も、そうやって教わって!実際その通りなのです!」
なんなんだこいつは。それとも魔法庁がそうさせてるのか?
「……おい、ふざけるなよ?」
「自分の能力を他人に決めさせんじゃねぇ!それはお前のもんだろ!」
「私を嘲笑う奴は全員殺してやる!」
「テメェが死ね!こっちは今教育してんだよ!黙んねぇと殺すぞ!」
――――あ。
「……やっべ!」
離れてるアッシュを回収しねぇと……!
「舐めた口きいてんじゃねぇ!」
「アッシュすまん、担ぐぞ!セピア!バリア張れ!」
「んなっ!?――ぐっ、海野さんのアホ!」
「あっぶねぇ……」
「海野さんのせいでちょっと緩みました」
何が!?膀胱が!?
「……あまりに失礼な顔してますね、海野さん」
――雨が降ってきた。いや、部長が言ってた散水か?
「なんでもいいが、アッシュのインカムをセピアに貸してやってくれ」
「セピア、それをクローズで使え。今よりもマシな能力の使い方を教えてやる」
『――Private pairing. ――――Connected. Hello, Users.』
「こうやって話すのはダメなんですか?」
「お前、もうそろそろガス欠なんだろ?散水で少しは勢いが落ちるだろうから義足がもつ間は囮くらいはする」
これ、義足もそうだが、壊れた義手の買い替え費用は出してくれんだよな……?
「……わかりました。でも、無茶はしないでください」
「おいおい、当たり前だろ」
ふぅ……。
「よし、行ってくる!」




