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とりあえずいつもの装備――支給された耐撃ベストを着て、インカムと小型タブレットをカバンに入れてエントランスに来たが、これでいいのかね。
「来たか、行くから前に乗れ」
「……おう」
山浦の車で行くのかよ。というかお前の運転でわざわざ助手席に乗るの嫌なんだが。
「そんな嫌そうな顔すんなよ。俺もお前みたいな野郎を隣に座らせてもなんも嬉しくないんだから」
「じゃあなんで前なんだよ……」
と、後部座席を見ると、チビともうひとり乗っていた同類と目が合った。
「あ、ども……」
「ふっ、なんだよその挨拶」
「知らんチビに対する挨拶なんて知らねぇよ……」
「この子はアッシュ。俺のパートナーだ」
「よろしくお願い致します。セピアのパートナーさん」
「お、おう。よろしく」
なんか生真面目というかお堅いというか、ガキっぽくないなこいつ。
「じゃあ行くぞー」
そういって車を走らせる山浦。見かけによらず運転が上手い。
「それにしてもアッシュ――灰ねぇ……ウチのセピアといい、なんで色由来の名前なんだ?なぁチビ」
「私たちには元々名前が無いのです」
は?
「こいつらは魔法庁に引き取られた孤児なんだよ」
「それは前聞いたな」
「あ、そう?んで魔法庁は番号で管理してんだが――」
「いやそれは聞いてない」
人を番号で管理?あぁいや、こいつらは魔法使いだが、非人道的だなおい。
「それじゃああまりにもなんで、せめて現対所属の子たちには名づけをしているってワケ。まぁ見た目から採ってるっていうのは安直な由来だけどな」
「私は気に入ってるのです!」
「うん、私もこの名前、結構好き」
「そっかそっか、それは良かった」
おいそうなるのは分からんでもないが俺の隣で父性を出すな!
「……ちなみにどんな番号かは聞いてもいいのか?」
「うわ、お前まじか」
「しょうがないだろ気になるんだから!」
「私は別に構わないのです」
「M4のD1の015?です」
「……私はもう忘れた」
M4-D1-015。マジでなんかの管理番号みたいだな。気分悪ぃわこんなん。
「ヤバいだろ上の奴ら。だから俺らは上とは仲が良くないんだ。部長も定例会議の後にはいつもイライラしてるしな」
「だからといってこんな小さい子たちを足蹴にする方がヤだから、こうして些細な抵抗をしてるんだ。だからお前もチビなんて言ってないでちゃんと名前で呼んでやりな」
「……それとこれとは別だ。チビなんだからチビで十分だ」
「そうですか、わかりました。あなたのことは守らないので、よろしくです」
「おいそれは卑怯だぞ!」
「それとこれとは別、です」
「お前らなぁ……」
「楽しそうでよかった」
おい聞捨てならないぞ。
「アッシュチャンよぉ。だーれが楽しいだってぇおい」
「いや……うん。まぁ、いいや」
そこまで言うなら全部言えって!これだから最近のガキは――
「ほらそこらへんにしとけ。もうすぐ国東一丁目のロータリーに着くからインカム付けとけ」
「おう」
ったく、しょうもない話してたらもう現場かよ。心の準備するの忘れてたわちくしょうが。
「――ほい到着。ここで降りてあとは歩いて巡回してくれ」
「ありがとうございます!」
車から忙しなく降ろされる。いよいよだ。
「じゃあ俺らは他のメンバーと警察の面々に会いに行って避難誘導手伝ってくるから。何かあったらインカムで頼む。俺らが行くまで耐えてくれな!あと、回線はオープンにしとけよ!」
いうことだけ言って去っていきやがった。まぁ、ここまで来たらやるしかない。とりあえず言われた通りインカムの設定をオープンにして、巡回するか。
『――Hello, User. Channel opened.』
「……よし、じゃあ行くか」
「はい、行きましょう!」




