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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

童話『さかなのお母さんと、おおかみの子ども』

作者: しんかのん/sin qua non
掲載日:2025/12/13

 むかしむかし…今ほど、生きものの、さかい目がはっきりしていなかったころのお話。

 

 ある小さな川にさかながいました。

 さかなは、まいにち、川面かわもに、ちる虫を食べたり、いわえるコケを食べてくらしていました。

 その川は、大変たいへんきれいな川でしたから、さかなは川面かわもの上に空があり、川のまわりには、川べりが、そのむこうには、ふかい森があることを、しっていました。

 そして、さかなは、自分じぶんは、この川からでることは、できないことを、しっていました。

 さかなは自分じぶんをなげき、そして神さまにおねがいしました。

「ああ、神さま

 わたしはさかなです、一生いっしょう、この、せまい川のなかで、くらしていくのは、しかたありません。

 でも、わたしの子どもには、もっと広いせかいで生きてほしい。

 だから、自分の子どもは、さかなではない、おかや森でくらすことのできる、つよくてかしこい生きものにしてください」

 神さまは、たいそうなやんだあと、そのさかなのねがいを聞き入れました。

 そして、しばらくして、さかなは、子どもを産みました。

 それは、陸で生きることのできる、つよくてかしこい生きもの。

 おおかみの子でした。


 おおかみの子は、さかなのお母さんがねがったとおり、つよく、かしこく、そして大変なははおやおもいでした。

 川べりにすみ、さかなを食べるために、川に近づいてくる、キツネやクマとたたかって、おいはらいました。

 川の中に入って、お母さんをたすけることもありました。

 ですが、ざんねんなことに、お母さんは、川の中のこと、水の中のことしか分かりません。

 ですから、おおかみの子が、なぜ、ときどきキズだらけになるのか、「あぶない!」とさけぶのか、どうして川の中にはいってくるのかも、わかりませんでした。


 時がながれ、おおかみの子は、少しづつおおきくなっていきました。

 おおかみの子は、森の中のこと、そのむこうの、しらない世界のことを、もっとしりたい!と思い、少しづつ川からはなれることが、ふえていきました。

 さかなのお母さんは、自分のそばにおおかみの子がいないときは、いつも不安でした。

 森からやってきたキツネやクマに、いつおそわれて、食べられてしまうのではないか?と、気が気ではありませんでした。

 ですが、お母さんは、おおかみの子が、いつまで川のそばにいるのだろう?と、ふしぎに思っていました。

 あれだけすばらしい子なのだから、この川をはなれて遠いところでもっとりっぱになってほしい、と思っていました。


 やがて、さかなのお母さんは、おおかみの子が、ずっと川のそばにいるのは、およげないからだ、と思うようになりました。

 おおかみの子は、あれだけかしこいのだから、水の中を自由じゆうおよぐことができたら、川をくだって、やがて、遠い遠い森や川のおわりのはてにあると聞く、広い広いうみにもたどりつくことが、できるにちがいない。

 さかなのお母さんは、そう考えました。

 そして、あの自分にはついていない、じゃまな二本の後ろ足を切り落せば、きっとあの子も自由じゆうに、水の中をおよげるようになるに、ちがいない!


 そこでさかなのお母さんは、神さまにおねがいをしました。

「あの子の、じゃまなあしを切り落とすための、おのをかしてください!」

 これを聞いた神さまは、大変たいへんおどろきました。

 そして、さかなのお母さんに答えました。

「そんなおそろしいことのために、おのをかすわけにはいかないよ?」

 神さまのこたえを聞いた、さかなのお母さんは、なげき、かなしみました。

「神さまは、ひどい、おかや森でくらすことのできる、つよい生きものを、おねがいしたのに、川でおよぐこともできず、どこにも行けない子どもを、おしつけるなんて!」


 これをいた悪魔あくまは、さっそくおのをもって、さかなのお母さんのところに行きました。

「お母さん、たいへんなことになりましたね、でももうだいじょうぶですよ。このおので、子どもの足を切ってあげましょう。」

 さかなのお母さんは、たいへんよろこびました。

 そして、悪魔あくまからおのをうけとると、よる、おおかみの子どもがねているあいだに、足を切ってしまいました。

 おおかみの子どもは、おどろいて、聞きました。

「おかあさん!、どうしてぼくの足を切ったのですか?!」

 さかなのお母さんは、ほこらしげに、答えました。

「おまえは、後ろに足があるから、川の中で、じゆうにおよげなかったのです。だから、じゃまな足をきったのです。これからは水の中をじゆうにおよいで、どこにでも行けるようになるでしょう。」


 あしを切られた、おおかみの子どもは、歩けなくなったので、じゆうにりにいくことも、できなくなり、川からはなれることも、できなくなりました。

 そして、だんだんと、やせて、げんきがなくなっていきました。


 さかなのお母さんは、なげきか、なしみました。

「なんということでしょう。これだけのことを、してあげたのに、あの子は、まだおよごうともしないし、うごこうともしない!」

 それをいた悪魔あくまは、もういちど、さかなのお母さんのところに、行きました。

「おかあさん、あの子をよくみてください。あの子のくびにはエラがない!。これでは、足がなくても、水の中でいきをして、およぐことは、できませんよ?」

 さかなのお母さんは、悪魔あくまのいうことは、もっともだと、かんしんしました。

 そして、つぎの夜。おおかみの子どもがねている間に、首をきってしまったのです。

 おおかみの子どもは、とても、とても、おどろきましたが、首をきられたので、もう何も言うことができませんでした。

 おおかみの子供は、おもいました。

「ああ、ぼくは、おかの上で、あるきまわることしか、できなかった。足がなくなったら、あるくことも、できなくなってしまった。

 もし、ぼくが空の上から、おかや川をみおろして、おかあさんを、みまもることができたら、たすけることができたら、どんなによかっただろう?」

 そして、おおかみの子供は、首から血をふいて死にました。


 さかなのお母さんは、とても、とても、おどろき、なげき、そして、だれよりも、かなしみました。

「なんということでしょう!。こどもが、死んでしまった!。わたしの、たいせつな、たいせつな、子どもが、しんでしまった!。どうして、死んでしまったのでしょう?。」

 でも、さかなのお母さんには、おおかみの子どもが、なぜ死んだのか、わからないままでした。


 神さまは、これをみて、たいそうおなげきになりました。

 そして、死んだ、おおかみの子のたましいを、天にげ、そのかけらで、よるのそらに、かぞえきれないほど、たくさんのきらきらした、うつくしくかがやく、星ぼしをつくりました。

 それからの、おおかみたちは、夜の空を見上みあげて、そのきらきらした、うつくしい星ぼしに、とどくように、かなしく、大きく、長くほえるように、なりました。

 

 神さまは、そのあと、さかなの子どもは、さかなに、おおかみの子どもは、おおかみに、と、きめて、生きものの、さかいめをはっきりさせた、ということです。


(おしまい)

 このお話のいみは、よんだみんなが、ひとりひとり考えてみてください。

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