表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

第14話 道の影響の拡散

その予感は、残酷なまでに的中した。


ゴーストルード――魂の通り道の亀裂は、静かに、しかし確実に幻想郷の大地に食い込み始めていた。

最初に異変を覚えたのは人里の住民だった。晴れ渡っていた空がふいに曇り、風に混じって聞こえるのは人の声とも風の唸りともつかぬ呻き。振り仰げば、雲の切れ間から黒い影が垂れ下がり、無数の幽霊が群れを成して舞い降りていた。子供たちの悲鳴、大人たちのざわめき、必死に祈祷を行う寺の僧侶たち――日常の営みは一瞬にして恐怖に塗り潰される。


一方、妖怪の山では更に深刻な兆候が現れた。山の渓流を遡っていた河童たちが目撃したのは、白濁した奔流のように押し寄せる怨霊の群れ。彼らは怒涛の濁流となって樹々を揺らし、獣道を埋め尽くして進む。

「山そのものが呻いている……」と烏天狗が震える声で呟いた時、空に走ったのは稲妻ではなく、亀裂そのものから漏れ出す幽光だった。


紅魔館の湖畔もまた、侵食を免れなかった。静謐であったはずの湖面が突如波打ち、夜の帳を思わせる黒い霧が立ち昇る。湖に映る月はぼやけ、代わりに幾つもの亡霊の顔が水面に浮かび上がった。咲夜が見張りに出た時、既に妖精メイドたちは不安げにざわめき、湖畔を飛び交う小さな妖精たちでさえ怨霊の瘴気に呑まれ、普段の無邪気さを失っていた。


幻想郷のあちこちで、似たような歪みが報告されていく。

花畑に漂う霊火、竹林の奥に響く泣き声、夜空を覆う異様な光の筋――。

生者と死者の境界は揺らぎ、これまで「幻想」として守られてきた日常が、静かに崩れ落ちようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ