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古漬けを食べた俺

番外編(用語解説的な何か)を18時に投稿します。

本編とは直接関係がありませんが、ネタバレはあるかも。

 俺の視覚中枢にホロンとリ・スィがアクセスした事で、暗闇の中でも照明無しで動き回る事が出来るようになった。明るさ的には昼間というより、夕方になりかけって感じだが、スキルも一緒に使えば普通に動き回る事は出来るな。


「ふむぅ…… ここは廊下… みたいなもんかな」


 辺りを見回してみると… うっわぁ、こりゃ凄いな。

 ここは、他の地下室や建物とは明らかに違うんだ。


 壁も天井も、さらに床までも石のブロックで覆われてるんだが、問題はその加工精度なんだよね。他の所は石と石の間にモルタルか何かを塗っていたんだが、ここは石の継ぎ目には何も塗られていないんだよ。

 それどころか継ぎ目には半紙すら入りそうにない。


「どうやったら、こんなに正確に平面を出せるかね」

『さあ? 磨いたんじゃない?』


 おいホロン、石の研磨ってのは時間も手間もかかるんだぜ。そういう高級石材は地上部分に使うじゃないかね。間違っても地下室の内壁に使うようなもんじゃないと思うんだけどなぁ。

 それよか最初からここに地下室があって、それを隠すように砦が作られたって言われた方が、まだ納得しやすいんだが……


『サクマユウマ、それは後で。今はウサギ達の後を追うべきでは?』


 そういやそうだった。で、ウサギ達は廊下の先にいるって?

 通路の長さは大体50メートルってとこだが、通り抜けたら急に広い場所に出たぞ。まるで棚とかを取り払ったスーパーマーケットくらいは広いな。

 で、壁沿いにいくつか扉があるが…


 ひとつだけ開いた扉がある。その先からごそごそと音がしている。

 なんか樽ばっかり詰まってるみたいだけど中身は何だろう……

 いるのは… ウサギ達だったよ。


 こんちくしょう、人を置き去りにして自分たちだけで何を……

 んんんんん? 何かどこかで嗅いだことのあるような匂いがするが…

 何の匂いだ?


「皇さま、この樽の中にあったの、とっても美味しいよ」「すごくおいしいね」


 食べ物かよ! そういや、この匂いは漬け物っぽいな。

 って事は、ここも食糧の貯蔵庫かよ。

 ウサギ達は、そいつを嗅ぎつけたって… だったらこいつら犬みたいな嗅覚の持ち主って事になるけど……


「どうやって見つけたんだ?」

「動きそうな扉があったから、開けてみたの」


 つまりは、そう言う事か?

 あっちこっち歩き回って、手当たり次第に扉を開けようとしていたわけか。

 ここを見つけたのは偶然なのね……


「食べ物の入った樽をたくさん見つけたの」「皇さまも食べる?」


 こいつらはよぉ……


「……ホロン?」

『どうやら毒は入っていないみたいだねぇ。宿主さんも食べてみたら? 身体に良さそうな成分が入っていそうだよぉ♪』

「そうなのか?」


 樽の中身はキャベツの塩漬けっぽい。他にも色々は言ってるな。

 ちょっと見ただけでも、キュウリとかニンジンぽいものも入っていそうだ。

 ホロンは毒は入ってないと言ってたけど… 試しに俺も食べて……


「うおおおお、酢っぺぇええ!」


 キュウリっぽいのを1本齧ってみたんだが、こいつはキツいぜ。

 思わず口を押さえて床を転がい回りたくなっちまったよ。

 こいつは漬け物か? それも最悪の古漬けだ。発酵が進み過ぎていて、普通には食べられたもんじゃない。

 腐ってはいないけど、祖母ちゃんが作る梅干しが飴玉に思えるよ……


「ぐおおおおお……」


 こいつは乳酸発酵というより酢酸発酵かね。たぶん漬け汁には酢だけじゃなくて酒か焼酎みたいなものを使ってたのかも知れん。

 って事は、こうなる前のこいつはピクルスか何かだったのかも。

 地球でピクルスって言ったら酢と砂糖と塩だけど、こいつは香り付けにハーブの他に酒を入れたに違いない。


 時間が経って、こいつがが古漬けになるにつれて酒のアルコール分も発酵して酸っぱさが強化されたんだろう。

 とんでもない味だよ、もう……


『宿主さん、酢は体に良いっていうでしょ♪』


 おいコラ、ホロン。ごじゃっぺ言ってんじゃねぇぞ!

 物事には限度ってもんがあっぺよ、限度ってもンがよぉ!

 こんたけ濃い酢を飲んだら、歯ァはガタガタになるし、何より腹壊すべよ。

 それを平気な顔して食ってるウサギ達ってよぉ……


『でも、酢は身体にイイんだよぅ!』

「やがましい!」


 その時、俺の背中をつんつんする奴…… ウサギ、か。


「ねえ、皇さま。これ貰っていい?」


 おおおおおぉい、お前らそれ食ってるのか? 大事か? 腹壊してねぇか?

 大丈夫だと? 今まで食べた事がないくらい美味しいって、お前ら……


「……全部持っていっていいよ。なるだけ涼しい所に置いておけよ」

「わあぁあい!」


 喜びの舞いを踊るウサギ達は放っておいてだな。俺は部屋の中を見回してみた。

 それにしても、かなりの量の物資があるんだよなぁ。樽が天井までびっしり積み上げられてるよ。

 こうして見ると、やっぱり籠城でもするつもりだったのかねぇ……


 つまり、さ。皇女サマは帝国に対して謀反を企んでたんじゃないかね。

 誰も立ち寄りたがらないような魔の森の近くに砦があるんだぜ?

 さらに倉庫の中には大量の武器や食糧に加えて軍資金もたっぷりだ。武器の量に見合うだけの兵士かは、森を切り拓いたあそこに置いておけば良いかも。


 そして彼女の立てた謀反計画の最後のピース。


 それが異世界から召喚した俺… だ。

古漬けとは、付け込んでから2か月くらい経った漬け物のこと。その時に発酵が進み過ぎてヤバくなりかけたものも、そう言う事があるらしいです。


ピクルスはお店でハンバーガーを食べる時くらいしか縁のない人が多いかと。

でも所詮は洋風漬け物。野菜を水と穀物酢と砂糖と塩で作った漬け汁に付け込んでおけば、お手軽に作れます。どなたか挑戦してみては?

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