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先史文明の遺跡と俺

 祭祀場の焼け跡で拾ったティアラだが、意外な事にホロンが調べさせろって言い始めたんだ。俺の感覚中枢にアクセスしただけじゃ足りないらしく、壺のセンサーにもリンクしてるから、あいつも本気… かな。


「…これは、ティアラって奴だよね」

『ねえねえ宿主さん、裏側も見せて… そうそう、そこんとこの赤いやつ。

 ……ふむふむ、これはなかなかいい仕事してるねぇ♪』


 俺はホロンの言われるままに、ひっくり返して内側を見たり遠くから眺めたり。

 あいつは俺を無視して、何かひとりでぶつぶつ言ってるが……


『ねえねえ宿主さん、これはすんごいオタカラだよぉ。宝石飾りの部分は金と銀の合金だし、銀色に見えるのはプラチナだねぇ。宝石の研磨も完璧に近いから、地球なら宿主さんはこれひとつで大富豪間違いなし♪』


 地球に還れればな。まあいいか、手に持ってるのも難だから頭に乗せて…

 おお? サイズは自動的に調整してくれんのか。まるで野球帽みたいにぴったりじゃないか。ちょっと頭を振ったくらいじゃ取れな… やばっ!?

 ひょっとして呪いのアイテムとか……


 ふう… 大丈夫だった。取ろうと思えば簡単に取れる、と。

 そんなに重いものでもないし、面白いから頭に乗せておくか。

 そういえば……


「…あいつらどこ行った?」

『声が聞こえるねぇ… ちょっと待って、方向は… 入り口のあたりかなぁ。

 音源は水平面よりも下… ひょっとして地下室があるのかな』


 ウサギ達の姿が見えなくなったと思ったら、先に行ってたってわけかよ。

 ええと、出入り口のあたり… ああ、爆風が吹き抜けたあたりだな。

 入り口の脇にあった控えの間に隠し扉があったとはな。


「広めの階段に手すりまであるとはな。……けっこう深いな」


 下り階段を覗き込んでみたんだが、今までの地下室とは雰囲気が違うんだ。

 たぶんこいつが、ウサギ達が言っていたつるつるな壁の洞窟なのかも知れん。


『ウサギさん達の声は、この中から聞こえるねぇ♪』

「じゃあ、俺たちも行ってみるか」


 俺は壺から降りて、地下室への階段に近付いた。

 ウサギ達が無事に通り抜けたって事は、トラップなんか無いか、あっても解除済みだろう。

 でもよくもまあ、こんな暗い所を自由に動き回る事が出来るもんだ。


 そう思いながら俺はゆっくりと階段を下りて行ったんだが。

 たしかにウサギ達の言うとおりだ。地下2階を過ぎたあたりから先は壁がつるつるだ。床も似たようなものだが、ちょっとざらついてるのは滑り止めのつもりなんだろうか。


「間違いなく階段は後付けだよね。祭祀場の地下にも地下室を作ろうとしたら、この通路──先史文明の遺跡を掘り当てたんだろうなぁ」


 面倒な事にならないように、遺跡に通じる穴を埋めてしまっても良かったんだけど、そうしなかったのは皇女サマの指図だろうなぁ。

 地下からの階段と遺跡の間にある継ぎ目… 継ぎ目の上は、漆喰で石の隙間を埋めて平らにはなっているけど、基本的には石積みだ。


 お城の石垣に野面積みとか穴太積みってのがあるけど、基本的にはアレに近い積み方をしているみたいだ。そして、斜行エレベーターのレールが取り付けられている。リフトは地下に降ろしたままなのかもな。


「それにしても長い階段だな。そろそろ地下4階くらい行ってないか?」

『宿主さん、暗くなってきたから滑って転ばないでね♪』


 果たして階段は地下4階で終わっていた。途中に踊り場ぽいものがあったから、そういう事なんだろう。それにしても、だな。

 壁にはところどころ篝火の跡があるから、換気システムが生きてるのかな

 かすかに空気が動いているから、そういう事だと思っておこう。


 さすがに、地下4階までは陽も射さないから、完全な暗闇世界だよなぁ。

 でも鼻を摘ままれても分からない暗闇の中でも、スキルのお陰で何となく通路の様子は分かるから良いんだが。これだととっさの判断が出来ないんだよなぁ。

 ここから先は魔法で光を生み出すしかないか…… 小さいのでいいかな。


「ヘーアー フォーザンメ」


 おおっ、3メートルくらい先まで照らせるぞ。でもその外側の暗闇に何が潜んでいるかは、近づいてからじゃないと分からないんだよね。

 それがヤバいモノだったら……


『ねえねえ宿主さん、視力の調整をしよう』

「どゆこと? ここから先は完全な暗闇じゃん。暗視スコープなんか……」

『宿主さんが認識してなくても、宿主さんの目は光を受け取ってるんだよ』


 まだるっこしいな、ホロン。一体何を言いたいんだよ。

 目は俺が認識してない光を受け取って… どういう事だ?


『サクマユウマ、壺を呼び寄せてください。この空間なら使用可能です』


 たしかにこの通路って広いよね。でも壺を呼び寄せても、ここは真っ暗だ。

 ここであんなピーキーな壺に乗っても壁や天井に衝突するのが関の山だぜ。


『サクマユウマ。可視光線だけが光ではないでしょう?』


 人間の目で認識できる色──可視光線──というのは、光の中でも一定の波長帯に過ぎない。ではそれ以外の色は無いのかと言うと、単に人間の目では認識できないだけのこと。たとえば昆虫はより波長の短い菫外線、ヘビは赤外線を色として認識する事が出来るのだ。


 地球でも、このような生物は決して少なくはない。

 だけどそいつらの目は、そういう風に進化した結果でそうなったってだけだ。

 人間の目では、そう言う事は出来ないぞ。


『宿主さんのボケに付き合ってたら話が進まないので……』

『サクマユウマ。緊急事態を宣言します。視覚中枢にアクセスを!』


 ななななな?

 たしかにこの暗闇の中では満足に動き回る事さえ出来ないさ。罠が仕掛けられてたり、伏兵がいても対処は… わかった、わかったよ。

 視覚中枢にアクセスしてくれ。


『はいはーい、これで暗闇も怖くないねぇ♪』


 うっせ、暗闇が怖いのは本能的なもんだ。自己保存本能とか… まあいいか。

 急に視界が明るくなると、周りが見渡せるようになった。


 ここは……けっこう広いじゃないか。

ようやく、つるつるな壁の洞窟に着いた佐久間君。

ここから先はダンジョンの探索という事に… なるのかなぁ。

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