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すんごいハーレムと俺

 今日もいつものように散歩をして… ぼーっと歩き回ってるだけじゃないぜ。

 ちゃんと植林した木の様子も観察しながらだ。

 さすがに、ここまで寒くなると歩くのもしんどいね。

 ……いや、寒いとかそんなのじゃなくてな。


『ぷぷぷ… 宿主さんがワンピを着て、霜柱を蹴散らしながら走り回ってる♪』


 やかましいわ。木の生育状況の全数検査は無理だから抜き取りだけどな。

 カルスの方は完璧だって事はリ・スィが保証しているんだ。

 でも植えた後のチェックをしとかないと拙いだろ。


 カルスや苗木は製造ロットごとにある程度まとめて植えてるから、抜き取り検査でも大体の傾向とかは把握できるぜ。このあたりは古城のおっさんも苦労したんだろうな。けっこう分かりやすい資料がある。

 だけど、それを実際にやるとなるとだな……


「JIS規格では、こんなものまで決めてたんだなぁ……」

『宿主さん、がんば! AQLは品質管理の基本だよ♪』


 こいつは品質管理の指標として広く使われている方法だ。ヤポネスの工業製品の品質の高さは、こういうものに支えられているんだな。

 でもな、どう言う事なのかってのはさ、ちょっと考えてくれないか。

 生産したものを全部検査するってのはどうよ? そりゃあ、5個とか10個とかなら出来るだろうよ。


 でもさ、工場で数千、数万という数を量産してたら?

 そいつを全部検査するなんて、無茶だろ。政治業界とやらで野党が垂れ流している妄想の方がよっぽどマシってもんだ。


 だから製造した総数からいくつか数を決めて検査をするんだが、こいつが抜き取検査ってやつ。だからと言って、適当に抜き取って検査しても意味がない。

 JISでは統計学の観点から、サンプルの数と合否判定の基準を決めたんだ。

 それで全数検査の悪夢から解放されたんだが……


『ねえねえ宿主さん。検査するサンプルは200本、不良率2パーセント以内で合格だよ♪』


 それでも1日で全部見て回るわけにもいかないから、何日もかかるけどな。

 今のところ生育不良っぽいのは、全体の1.5パーセントってところだ。

 数字だけを見れば、ギリギリ合格って所だな。


 こういう事情があるんで、広い範囲を走り回る事になるんだが。

 平野部分ってのは、すんごく──ガッタル平野よりも広いんだ。

 その全域を動き回るだけでも大変なんだぜ。いくら古城のおっさんが身体を強してくれた俺でも、やってらんねぇ! ってボヤきたくもなるってもんだ。


 で、今日の割り当て分を終わらせたら、うさぎ屋敷に行く事になる。

 さすがに汗だらけのまま宇宙船に帰るのもちょっと… って思うし、広い浴槽で身体を伸ばすのは悪い事じゃない。

 宇宙船の風呂も決して悪いものじゃないんだけどね。


「……ええと、お前ら何してるん?」


 風呂場に行くと、風呂桶にウサギが浮かんでいた。

 いや、文字通りの意味で仰向けになって、ぷかぁ… ってな。その右手には大きなニンジンが握られている。

 時おりぽりぽりと齧る音も聞こえるから、眠っちゃいないだろ。


「皇さま。ちょうどいい湯加減だよ。このままずっと浮かんでいたいくらい」


 さよか。なら俺も入るとするか…… かけ湯をしてから…

 ぶおぁああっ、あっついじゃないか!


「外は寒いですからね、皇さま」


 ……そう言われりゃ、そうだよね。いくら汗だらけになるまで走り回ったとはいえ、今は冬なんだ。身体だってそこそこ冷えてて当たり前だよね。


「あ"ぁぁぁぁぁぁ……」


 やっぱ風呂はイイ!

 こうやって肩までお湯につかるってのは至福の瞬間だねぇ。欧米ではシャワーが常識だって言うけど、この心地よさを知らないってのは気の毒だよ。

 人生損してるって、言ってやりたいねぇ……


「ねえねえ皇さま?」

「ん? なんだい」


 風呂を堪能していると、ウサギ達がブラシを片手に寄ってくる事がある。

 ウサギには仲間の毛づくろいをする習慣があるからだが、俺もその中に入っているらしい。

 お陰で最近は、ぼさぼさの髪型から脱出する事が出来たんだが……


「頭の毛が、ずいぶん伸びたね。このまま毛むくじゃらお化けになるの?」

「はっは、なんだそりゃ」


 毛むくじゃらお化け? なんじゃそれ。そういや昔話にそんな妖怪がいたな。

 たしか毛羽毛現(けうげげん)って言ったかな。たしか疫神だったか。


「でもおかしいね。他のところは……」


 やめろおぉおお!

 そこは観察しなくてもいいんだ、そこは! こらぁ、引っ張るなぁ!


 ……なんだかんだで毛づくろいが終わったんだけどな。

 疲れをいやしに来たのに、どっと疲れちまったぜ……

 ん? ちょっと遠い目をしてる? 気にすんな。

 オトコには色々あるんだよ、色々とな……


「それはそうと、皇さま?」


 そして、虚ろになりかかった俺に話しかけてきたウサギがいた。

 今でも砦の廃墟を探検しているグループなんだが、最近はオスが構ってくれないので色々と発散する必要があるんだとさ。

 という事は、こいつら全員…… ?


「オスには探検とかは無理だよぉ。ひ弱だし、体力ないし」

「……そうなのか?」


 役割分担というか、何というか…… ウサギは母系社会と言ったら良いのかな。

 あいつらの中ではオスの地位と言うのは、あまり高いもんじゃないらしい。


「オスの役割は巣を守って、私たちに子種を提供する事だもん」


 つまり基本は主婦… いや、この場合は主夫か。オスの仕事は家事全般と巣の防衛、と。その代わりメスは外に出て力仕事とかをするわけね。

 って事はさ、うさぎ屋敷にいるのって……


「今日は全員メスだけど?」


 うひゃひゃひゃ、って事はハーレムじゃん!

 お風呂の中で大勢の美女に囲まれて、毛づくろいとかしてもらっちゃうし。

 それもマジモノのバニーちゃん…… きゃっほぅ、やったぜ!


 なんだか知らないけど、泣けてきた……

殿方の誰もが1度は憧れる(かも知れない)ハーレム。

お風呂で佐久間君を囲んでいる美女の集団… ウサギですけど女性は女性です。

美女に囲まれた佐久間君にもモテ期が到来!?

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