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ハイテクな風呂に入る俺

 俺がゼルカ星に召喚されてから、そろそろ4か月になる。

 地上は完璧に冬になってる。誰が何と言おうと冬なんだからな!

 苗木を植えまくった平野の部分は、歩くと地面からザクザクと音がする。

 わかるだろ、霜柱が出てるんだ。


『宿主さん、昨夜は霜も降りたみたいだねぇ』


 ホロンの言うとおり、育った苗木の葉っぱにはうっすらと霜が付いている。

 ふむ、心なしか空気も冷たくなったなぁ。髪に隠れている筈の耳たぶが、なんか痛くなってきたような気がする。

 だけど、これこそが自然の息吹なんだと思う。


 宇宙船の中ではこうはいかない。リ・スィが気温や湿度を完璧にコントロールしているから、いつでも春の盛りのまんま… 何の変化もないんだよね。

 食事にしてもそうだ。味や食感のバリエーションは増えてきたが、基本的にはお粥のような流動食なんだ。


 だからリ・スィには季節なんて暦の上でのデーターに過ぎないんだよ。

 こうして地上に出ているとそれを痛感するね。だって俺がゼルカ星に召喚された時は夏の盛りだったけど、今はもう真冬だ。

 テレビで今年もあと〇〇日になりました… てな話題が出るような季節だよ。


『早く帰還してください、サクマユウマ。大気温度が危険レベルにまで低下しています。このままでは生命の維持に支障を……』


 おっと、リ・スィからの通信だ。最近になって改良されたお出かけ服には通信機の他に骨伝導イヤホンマイクが組み込まれている。こいつのお陰でホロンを挟んでの筆談は必要なくなったんだ。


 それはいいけどさ……


『聞こえていますか、サクマユウマ。速やかに帰還してください』

『ねえねえ宿主さん、気温は6度しかないよ。風邪をひいたら大変だよぉ』


 ……これなんだよねぇ。

 ホロンはリ・スィとデーターリンク出来るから、宇宙船の通信機は自由に使えるんだ。だからホロンもこうして『声』を聞かせてくれる。

 聞かせてくれるんだが……


『サクマユウマ… マイ・コマンダー?』『宿主さぁん!』


 あいつらに両側から同時に、うあああ! な音量で話しかけられる日が来るとは思わなかったぜ。

 みつきと芹那でも… いや、あいつらもこんな感じで仲良く喧嘩していたな…

 いやそんな事はどうでもいい! 音量を落としてくれぇ。

 このまんまじゃ耳がバカに……


『その程度の損傷なら、私が30分で修復して差し上げます!』


 その程度の損傷て… 聴覚細胞ってけっこう繊細な……

 いや、あいつなら出来るか。遺伝子マニアのリ・スィのことだ。俺の遺伝子を全部解読し終わっててもおかしくはないな。だが、その話はあとにしよう。

 それよりだな……


 ヲイ、リ・スィ。地球人なめんな。

 俺達はな、そこそこ強い泡盛(あわもり)が凍り付くような土地にも住みついちゃうパワフルなイキモノなんだぜ。ちな暑いところは45度とか50度な。

 湿度だって、からっからな砂漠から、じとじとした熱帯雨林でもな。


「というわけで、この程度なら特に問題はないんだな」


 ……と、強がってはみたものの、やっぱり寒いものは寒いなぁ。

 これで雪が降ったら、今のお出かけ着じゃ外には出られないだろう。と言うのもさ、このあたりは俺の膝くらいまでは積もりそうなんだよね。

 いくら俺でもそんな所を歩き回った経験なんか無いからなぁ……


 ドゥーラでも冬には雪が降るけど、クバツ山と香取海(かとりのうみ)に挟まれてるから、降ってもせいぜい足首が埋まるくらいだもん。

 まあ、雪の話はここまでにしておこうか。


 それからな、お前らは宇宙船に戻れって言うけど、ここまで来たら宇宙船に戻るより小屋に行った方が良さそうだ。あそこなら、歩いて数分で行けるぞ。


 それに小屋ではウサギがニンジン畑の世話をしているからなぁ。母屋よりも大きな温室の他にも堆肥の山を作る区画を新しく作ったんだ。

 知ってたか? 堆肥の発酵熱だけでも結構な温度になるんだぜ。あまりピンとこないかも知れないけどさ、堆肥の発酵は初期段階でも80度くらいになる。


 堆肥の材料に何を混ぜ込んだかによっても変わるけど、時として自然発火って事もあるくらいだ。製材所で出た木屑の山ってのは、カブトムシがよく獲れるいい場所なんだが、時々火が出て消防車が来たなんて話もあるぞ。

 それを防ぐには、適当にかき混ぜて熱を散らしてやれば良いんだ。


「よう、ご苦労さん。精が出るな」「あ、皇さま」


 温室に行ったら、ウサギ達が先っぽがフォークみたいになってるスコップで堆肥の山をかき混ぜている。こいつはかなりの重労働なんだが……


「これが終わったらお風呂に入るの」「皇さまも入る?」


 こいつらの言う風呂ってのは、決して比喩なんかじゃないんだぜ。

 あるでっかい風呂桶を作ったんだ。家庭用の一般的な風呂桶で250リットルは使うんだが、こいつの4倍くらいかな。

 お湯はいつも3キロリットルは用意してるから、いつでも風呂に入れるぞ。


 必要な水は近くの川から地下トンネルを使って引いているし、それを汲み上げるためのポンプも作った。トンネルはアーマイザに掘らせたんだが、こいつを作る時間の大半は補強工事だったなぁ。ローマン・コンクリートの作り方がインストールされてなかったらアウトだよ。


 で、水が何とかなったら、次は湯沸かし器とかなんだが。

 さすがに薪をを集めてボイラーを焚く訳にはいかないから、電気給湯器がメインになるんだよね。そういう訳でポンプも電動式なんだよね。

 その電源が何かと言うとだな、実は堆肥なんだぜ。


 より正しく言えば、堆肥の発酵熱を直接電力に変換する熱電発電機のお陰だ。

 こいつで作った電気が電熱ヒーターやポンプ、照明なんかに使われてるんだな。

 熱電発電機に使われてるゼーベック素子は地球でも開発が進んでいる。

 人工衛星の電源にも使われ始めている筈だ。


 ちな、これとは逆に電力を熱に変換するのがペルチェ素子だ。こいつがあれば冷蔵庫やクーラーが作れる…

 いや、氷が作れないから意味ないか。電力もバカ食いしそうだし。

 とにかく今は風呂があるだけでも御の字だ。


 どれ、俺も風呂に入って温まるろうかな……


 宇宙船に帰ったら帰ったで、やる事が山ほどあるから英気を養ってだな。

 俺が使う装備品のアイデア出しとか、ゼムル帝国が森に攻め込んできた時の対策とか。勉強とか…… どれもこれもハードなんだよね。


 特にゼムル語の書き取り練習ってのがハードなんだ。

 連合王国で使われてた亀甲文字に似てるんだが、ちょっと違うんだよな……

国産の強いお酒と言うと焼酎を思い浮かべると思います。

でも、去年アルコール度数が80度という泡盛が売り出されたのですよ。

新潟産で46度という日本酒もあるとか。(うっとり)

一度呑んでみたいと思うけど、お医者様がお酒は駄目だって言うんです……

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