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砦の跡を探検をする俺

 小高い丘に建てらてた砦の前に着いた俺は、複雑な感情に囚われていた。


 皇女サマが召喚魔法をしたのは、この砦なんだ。

 その結果、ゼルカ星に転移中の俺が古城のおっさんと出会ったのも。

 そして、砦を脱出した俺が、この魔の森でリ・スィと出会ったのも。

 インゼクト達や、ウサギが俺の家来になったのも、だ。


 全てはここから始まったんだよなぁ。


「この門でマルダーって奴から馬を貰ったんだっけ……」


 石と煉瓦で作られた外塀や門は、あまりダメージを受けた様子はない。

 さすがに扉は焼け落ちてしまったが、全体的には問題が無いようにも見える。

 ここから見える限りでは外壁そのものも無事のようだ。

 だが、俺は知っているんだ。壁の内側で何が起きたのか。


 門をくぐった俺の目の前に広がる風景って……

 誰が何と言ってもこれこそが、ザ・廃墟。ってやつじゃないかね。

 それもその筈で、この前やってきた正規部隊が、砦をとことん焼き払ったんだ。

 その結果たるや惨憺たるものってやつだな。


 ぽつりぽつりと立っているのは、漆喰と貴金属で美しく仕上げられていた建物の壁だったものや、辺りに散らばる粉々になった瓦。そして崩れた石垣とか……

 そして、地面とか石垣っぽいのが、ところどころツルツルに──ガラス化している──って事は、かなりの高温に曝されたって事だよね。


『最低でも500から600度… 実際にはそれ以上だね♪』


 ホロンの言うとおりだ。岩石がガラス化… 表面がガラスみたいになったのはそれ相応の高温に曝された後で、短時間で冷やされた結果なんだ。


『この程度の事ならあなたも出来るはずですよ、サクマユウマ。

 高温の火の玉を使えばよいのですから』


 ファイヤーボールか。それなら… って、ちょっと待て。

 こいつはあの正規部隊の魔法使いがやったんだよね。つまりそれだけの熱量のあるファイヤーボールって、初級レベルの魔法じゃないよね?

 鉄製の武器すら熔けてるって事は、中級レベル以上の魔法じゃないか。


『でもあなたなら可能な筈ですよ、サクマユウマ』

『宿主さんの魔力なら、石垣だってドロドロにできるんじゃないかなぁ♪』


 魔法ってのは、同じ系統でも威力ごとにいくつかの呪文があるもんだ。

 この砦で使われた火炎系… とでも言ったら良いか。この魔法なんかはその典型だよ。かまどの薪に火をつける程度のものから、土や岩をガラス化するようなものまで。そして辺り一面を日の海に変えちまうようなものまで、様々だ。


 同じように魔法を使える俺だから言えるんだ。

 この砦で魔法をぶっ放した奴らは、けっこうレベルの高い魔法使いだってね。

 他にも油をまいて火をつけた奴とかもいたから、砦の中で無事な建物なんか、ひとつも残っちゃいない。


「全てが灰とガレキの山ってやつ… か」


 それでも、何もかもが焼き尽くされて灰になったわけじゃない。

 一部が焼け残った建物とかはあるし、場合によっては地下倉庫なんかがあっても不思議じゃないんだよね。

 とにかく探してみるか。


 一緒についてきたカカラーカたちは、俺の合図とともに砦のあちこちに散っていった。ウサギ達も焼け残った建物をごそごそしていたが、しばらくすると何かを引きずってきた。


「皇さま、武器が出てきましたけど、これは使えませんよぅ」


 ウサギたちと一緒になって、廃墟を漁っていたら色々なものが出てきたよ。

 地上に近い部分から掘り出したものは、かなりの高温に曝されたんだろう。

 かならずどこかが熔けてるんだもん。でもまあ無いよりはマシってヤツだ。

 とにかく回収しとくかね。リ・スィなら何とかしてくれると思うんだがね。


『それは賢明な判断ですね、サクマユウマ。金属の精製程度なら簡単な事です』


 リ・スィも乗り気じゃないか。急に砦で武器とかの回収を始めようって言い出したのはあいつだ。例の騎士さんたちの武器を調べたら、そこそこのレベルの鋼鉄で出来ているらしい。

 剣だけでもひと振りの重さが3キロくらい、そいつが100人分。

 それだけで300キロになる。予備もあるだろうから倍はいくかな。


 あとは鎧と… 建物に使われてた釘とか金具… ってとこか。

 それだけでも全部で1トンくらいは集まりそうだが……


「皇さま、武器を沢山見つけましたよぅ。これは使えそう?」


 別のウサギが鼻を牽くひくさせながら、ひと振りの剣を引きずってきた。

 俺は受け取った剣を持って… こいつはかなり重いな。それに無傷かよ。

 ところどころ錆が浮きかかってるけど、使えない訳じゃなさそうだなぁ。

 あいつらが使うには重すぎるだろうけど。


「こいつはお手柄だな。どこで見つけたんだ?」

「皇さま、こっちこっち」


 ひょこひょこと歩くウサギに案内されて着いた先は、礼拝堂か何かがあった場所らしい。というのも、焼け残った壁のステンドグラスには見覚えがあるんだ。

 さすがにここに放火するのはヤバいだろうと思ってスルーしたんだよね。


 だってさ、いくら敵地とは言ってもさ。

 礼拝堂って言ったらさ、いわば神社やお寺みたいなもんだろ?

 さすがに倉庫に火をつけるのとは訳が違うと思うんだ。

 古城のおっさんなら、何を甘い事を… とか言いそうだけどさぁ。


 で、この礼拝堂だが、他の建物なんかと同じように焼け落ちていた。

 壁がいくらか燃え残ってたんだけど、積もった灰が1か所だけ不自然にへこんでいたんだそうだ。それで灰とかを除けたら地下室が見つかったってわけだ。

 まさかこんな所にまで武器が隠してあったなんてなぁ……


「カカラーカに探させるか。お前たちもこいつで、こうやって……」


 地下の武器庫にあった槍で、灰の上から地面をずくずくと突き回ってみたんだけどさぁ、いやぁ出るわ出るわ…… 地下室がいくつも見つかったよ。

 そして中身も武器以外にも色々あったんだよね。

 地下貯蔵庫からは武器だけじゃなくて宝石とか食糧とかも出てきたんだ。


 宝石とかはアレだけど、食糧は有難いな。

 おかゆもいいけど、やっぱり固いものも食べたいもんな。小麦とかあれば、またパンも作れるしマーガリンがあるから、ホワイトソースが作れるかも。


 本当なら小麦粉はバターで炒めるのが基本だし、牛乳か生クリームでそれをのばすんだが、似たような物は作れそうだ。前にみつきが豆乳使ってたからな。

 それに無い物ねだりは粋じゃないもんね。


 うん、まあ… 何とかなるだろ。

ホワイトソースをマーガリンと豆乳で作るのはアリです。

マーガリンは身体に良くないと言う人もいるそうですけどね。

私的にはそれがどうした? ……って感じでしょうか。

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