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真面目に作戦を考える俺

 魔の森にゼムル帝国から騎士がやってきてから1週間。

 あいつらの行動パターンが分かってきた。これもインゼクト達が昼夜を問わずに監視を続けてくれた成果だな。俺はその結果を──ケイファル(カブトムシ)がアドバイスしてくれた通りに──秘密基地の中で見物中だ。


 あいつらがしている事は、馬に乗って森の縁に沿って歩き回るだけだ。

 どうやら森の中に入ってくる気は無いようだな。

 ひょっとして、あいつら森の復元に気が付いたか?


『それほど急激に増やしてはいませんよ、サクマユウマ』


 リ・スィはそう言うけどさ、森の復元を始めたのは事実だろ。

 苗木だって今まで1万本くらい植えてるよね?

 最初のころのは背丈の倍は超えてるよね?


『たった1万本程度で何を言っているのです。最低でも20万本の植え付けが必要なのですよ』


 おー・まい・がぁああっしゅ!


『ねえねえ宿主さん、植林の話は後にしよ。目の前の騎士に集中しなくちゃ』


 おおっと、そうだった。


 騎士は全部で40人か… 少しづつ数を削って… いや時間はかけられないか。

 警戒されないように全員を片付けるのに… せいぜい3日ってとこだな。

 それ以上時間をかけたら警戒するだろうし、撤退されちまうかも知れん。

 それだけは避けたいんだよね。


 そいつらが援軍を連れてくるような事があれば、すんごく厄介な事のなるのは目に見えている。だから今度の作戦は失敗する訳にはいかないよね。

 でもなぁ… あいつら最低でも必ず2人で動き回ってるんだよね。

 そううなると、付け入る隙は見つけにくいんだよなぁ。


 ……っと、待てよ? 別に気にする事ないか。もう少し先には都合のいい場所があるじゃないか。最初のころに、何も考えないで苗木を植えた場所がある。

 あそこなら……


『宿主さんが、フェアリーサークルだぁ、とか言って苗木で囲った場所だねぇ』


 そうだよ。最初は泡の塊を作るように、森を広げようと思ってたんだ。

 後から考えたら、それって余分に手間がかかるんだよね。だから、こいつは初日だけで、翌日からは地道に植林するようにしたんだけどね。

 今回はそのひとつを利用するんだよ……

 木の高さもいい具合だし、間隔間違えて植えたから生垣みたいになってる。


 生垣の中に入れるように隙間も作ってあるから、こっちに騎士をおびき寄せる事が出来れば…… 何をしても外にはバレないよね。

 この広い場所にいるのは、たった40人だもん。

 少しくらいの物音は仕方がないけど、そのくらいは何とかなるだろ。


 そうすりゃ、あの小屋も使わなくて済みそうだ。せっかくリ・スィが仕立ててくれた衣装も無駄になるけど、それはそれでオッケー! って事で。

 小屋はさ、森の外から見えるか見えないか… って微妙な場所に作ってるんだ。

 捕まえた捕虜を尋問するのに作ったんだけどさ、この方法なら必要ないぞ。


 ふひひひ… これぞ完璧な計画ってやつじゃないか。

 自分の才能が怖いぜぇ……


 ……って、こんな事してる場合じゃねぇ。すぐに仕込みを始めなきゃ。

 ええと、ウインドウ出して… テレパシー、テレパシーっと… これか。

 視線誘導で… ぽちっとな。


 おおいケイファル、聞こえるかぁ……


<おお、汝の連絡を待っていたぞ。我は何をすればよい?>


 アーマイザ(アリさん)を何体か出してくれないか? ……そう。あいつら地下にトンネル掘って暮らしてるんだろ?

 じゃあさ、ここから… ここんとこまで大きな落とし穴を掘らせてくんない?


 あいつらのパワーは凄いからな。体重うんぬんというより、こう言った方が分かるかな。あいつらはさ、人間と同じくらいのでっかいアリなんだ。

 アーマイザ1匹で蒸気機関車(D51)くらい簡単に引きずれるかもな。

 それに比べりゃ、騎士とか馬なんか軽いもんだろ。


<なるほど、それは面白い。承知した>


 ふっふ、テレパシーってさ、スマホより便利じゃないか? 相手の意識にに直接イメージを送り込む事が出来るから、何をしたいのか説明するのが楽だ。

 それだけに勘違いとかも無い。


 俺がアーマイザにさせたい事は大きなトンネル(おとしあな)を作らせる事だ。

 天井は誰かが上に乗ったら簡単に崩落するくらい、地上に近い所になるな。

 もちろん落とし穴の底は地面から5メートルってとこかな。


 これだけ深ければ、あいつら穴から出て来れないだろ。

 あとは、あの木の実の出番だよ。食べたらフヒヒヒ… ってなるやつ。

 地球人の俺だけがああなるかと思ったら、違ってるんだな。

 リ・スィに確かめてもらったらゼルカ星人にも効果があるみたいだ。


 問題は木の実からフヒヒヒの成分を抽出するのにかかる時間だけど……


『今夜中に何とかしますよ、サクマユウマ』


 ……だ、そうだ。落とし穴の方、いけそうか?


<問題ない。さっそく作業にかからせよう>


 気を付けなきゃならないのは、量… だな。もう想像がついてると思うんだがフヒヒヒ… になるのは実の中に含まれてるアルカロイドのせいなんだ。

 こいつはさ、大の男を(自主規制)するのに1グラムもあれば充分なんだ。


『それって飲んだり食べたりした場合だよねぇ?』


 うんにゃ、別に飲ませなくてもいいだろ。要は身体の中に入ればいいんだ。

 落とし穴の中に水でも入れといてさ、その中に混ぜりゃいいんじゃね?

 ちょっと濃度の調整が面倒だけど、しばらく浸かっていりゃ皮膚から沁み込んでいくんじゃないか?


 あ、そうだ。

 フヒヒヒ… になった奴を穴から引き上げてやらなくちゃ。

 あとは穴を埋めておかなきゃ、後から来た奴に疑われるだろうなぁ…

 まあいいか。そいつもアーマイザにやってもらえばいい。


 さあ、明日が楽しみだなぁ……

地球にいる蟻はとっても小さな生き物ですが、人間サイズにしたら1匹で蒸気機関車を引っ張る事が出来るパワーがあるそうです。

余談になりますが、セミを人間サイズにしたら鳴き声は1000キロ先でも聞こえるとか……

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