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生まれたモノに驚く俺

 インゼクト達って──なんか家来っぽいけど、そこまでは知らん。

 分かったのは、あの金色カブトムシが、王様だったって事くらいだね。

 そして、こいつはすんごくラッキーな事だって事だ。

 この森がどんだけ広いのか分かんないけど、家来が増えるのは有難いんだよ。


 だってさ、帝国の奴らが焼き払った森ってさ。イガルタよりも広いんだぜ?

 そんな所に、一人で植林作業って… 終いにはヤッテラレッケー! って事にならない筈ないよ。

 つか、3日以内に仕事を放り出せる自信があるね、うん。


 というわけで。


 リ・スィからは、この戦いが終わってからの方が大変だったんだよね。

 戦いが終わってから、部屋に戻った俺はさ…… イソギンチャクもどきに服をひん剥かれた挙句、風呂場に連行されたんだよ。

 あのガラスみたいなので出来た壺の中な?


 それもイソギンチャクもどきがぎちぎちに詰まってるから、逃げ出すことも出来ないときたもんだ。そこで、全身をわしゃられるかと思いきや、これが違ってたんだよね。そしてさぁ……


『いいですですか、サクマユウマ。私に必要なのは、私を使いこなしてくれる優秀な中心人物です。死にたがりで無責任な英雄など必要ではありません』


 ……てな事をさ、延々と1時間も聞かされ続けたんだよ。

 ホロンも良く付き合うもんだなぁ。


 それで、この長々と続くお説教で分ったんだが、どうやらリ・スィのいう中心人物ってのは、基地司令官… 調査宇宙船だから船長? ……てな立場らしい。


 ナパーア星人の価値観というか、社会システムは魔力至上主義なんだな。そして、俺が持ってる魔力量はナパーア星人の基準でも規格外なんだってさ。この魔力量──この場合は最大値の事だが──ってのがステータスなんだそうだ。

 お金とかにも魔力を封じ込んでるって言ってたから、なんかなぁ……


 そう言うわけで、リ・スィの言い分は何となく分かった。…ような気がする。

 でも、なんでホロンが一緒になって俺に説教してるんだよ。


『宿主さんが死んで困るのは、私もおんなじ。つか、私も消滅しちゃうんだからね。そのあたり、分かっててあいつと戦ったんですかね。どう考えても、そうは思えないんですケド?』


 う…… だってしょーがないだろ。金色カブトムシ──名前ケイファルって言うんだけどね──と戦わなかったら、この宇宙船だって危なかったんだぜ。

 リ・スィはああいうイキモノについて、よく知らんだろうけどさ。敵に回すとけっこう厄介なんだぜ?


 たとえばリヴェレイ。地球にも同じようなのがいてさ。いやいや、大きさは全然違うよ? 長さ10センチくらいだ。トンボって言うんだけどさ。

 捕まえるのって簡単なんだけど、下手すると指とか齧られんのよ。

 小さいころ我慢比べだ、おらぁ! とか言って、齧られ過ぎて血ィ止まらなくなっちゃった奴がいたんだよなぁ。


 傑作なのは、その後だ。家に帰って液体絆創膏を塗ろうとしたんだが、瞬着を垂らしたんだよ。こっちの方が早く固まるとか言ってな。親指押さえて、のたうち回ってたのまでは憶えてるぜ。結局、医者に連れていかれたけどな。


 あとはさ、もうひとつ厄介なのがいたよ。

 アーマイザってやつ。地球だと俺の爪に乗るくらいの小さいんだ。アリって言うんだけど、あいつら地面に穴掘って暮らしてるし、なにより群れで行動するんだよ。そん中でも凶悪なのに軍隊アリってのが……


 ……細かい事はホロンにでも聞いてくれ。

 とにかくケイファルが連れてきた子分は、この基地の攻略に成功したかもしれないってこと。小さな虫でも甘く見ると大変な事になるよ?

 だからと言って、全滅させるわけにもいかんだろ。


『それで、具体的には何をしたいのですか、サクマユウマ。』


 決まってるだろ。何もしないよ。

 この森の本来の住人はインゼクト達だろ。俺たちはさ、あいつらの居場所を増やせるようにするだけでいい。森の再生──植林とかも手伝わせれば、かなり効率良いはずだぜ?


 そうすりゃ、かなり便利だと思うし、何よりもデメリットは皆無だ。

 さっきも言ったけどさ、森を再生すりゃインゼクトが助かる。元々こいつらが棲んでた場所だから、侵入者に対しても敏感だ。

 森に棲んでいる、物騒なオトモダチ… ってやつだな。


 ここまで来ればリ・スィでも分かるだろ。

 この森じたいが、この基地の防衛システムになるんだよ。これって、お前が言い出した事だかんな。まさか忘れてないだろうな?

 で、いざ何かあったらバックアップに徹する。


 それだけで良いはずだと思うんだが?


『そういう事なら、納得しておきましょう。では、次は私の番ですね』


 ん? どゆこと?


『あなたが採集してきた植物サンプルについてですよ』


 そういや遺伝子をいじって、成長スピードを爆発的に早めるって言ってたね。

 あれ、完成したん?


『当然の帰結ですよ、サクマユウマ。明日には植え付けが出来るでしょう』


 ねえリ・スィさん?

 たぶんあの容れ物に入ってるのって、培養液か何かだと思うんですが。

 そう、洗面器くらいのそれ。中に入ってる赤黒い… なんかでろっとしたの。


 やっぱり?


 そしてさぁ……


 その中でびっくんびっくんって動いてるやつ。

 それって苗木なん?


『この部屋だけで全部で1000本の苗木を培養中ですよ、サクマユウマ』


 ちょっと待てい!? この部屋だけで… って言ったよね? という事は、まだまだ他にもこんな部屋があるって事?


 おぃぃ… 数、多過ぎだろ……

遺伝子組み換え…じゃなくて、書き換え植物……

さあ、佐久間君。頑張って植えようねぇ。

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