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勝って文句を言われる俺

 地上でインゼクトと赤い奴と… 頑張って戦ったよね、俺。

 インゼクトの親玉との戦いに勝ったし、その後で現れた赤い奴… 影法師って言ってたか。あいつも吹き飛ばした。

 で、とりあえず解散って事にしたんだけどさ。


 赤い奴… 赤法師で良いか。あいつは本当なら強いと思うんだ。

 頑丈な鎧を着込んでてさ、動きだって白い奴と同じくらいに早かったんだ。

 いや、森の中じゃなかったら白い奴より早いかもな。

 もしも俺が身体強化無しで戦う事になったら、瞬殺される事間違いなしだ。


 だから仮にあいつともう1度戦う事になったらなら、俺が20人以上は必要かもね。俺があいつに勝てたのは、ひとえに運が良かったからだと思うんだ。

 最初の蹴りでレーザーソードを持った腕をはね上げて、投げ技をかけて。

 とどめは魔法で密度を高くした空気の塊をぶつけただけだ。


『宿主さんたら、空気の塊を打ち出した反動で両肩を脱臼したけどね♪』


 うっせ。


 コツは掴んだから、次からは大丈夫だ… たぶん、きっと、間違いなくな。

 それより威力、すごいよな。たかが空気、されど空気ってとこだ。

 うっすらと空色になるくらいに圧縮した空気の塊って、ちょっとした爆弾並みの威力があるんじゃねえか?


 赤法師は屋久杉なんか目じゃないような巨木に全身めり込ませたもんな。

 あれならしばらくは出て来れんだろ。出てきたらその時はその時だ。死ぬ気で相手をすりゃ、ちっとはマシな戦い方も出来るだろ。


 それによく考えたらさ、決して無謀な戦いとは言えないような気がするんだ。

 赤法師の強みは、レーザーソード使いと言う事だ。だけどレーザーソードなら白い奴が持ってたのをリ・スィが解析を進めているから、弱点とかも分かるかも知れない。


 それさえ何とかなれば、いくらでも戦い方はあると思うんだよね。

 あいつは白い奴ほど肉弾戦は強くなさそうだからなぁ。今度会った時に、まだ戦おうってんなら今度は壊れるまで殴るだけだ。

 白い奴の鎧のように、蹴り潰すってのもひとつのやり方かもな。


 ちなみに金色カブトムシ(むしおう)の野郎なんだがな。

 あいつったら、ちゃっかり安全地帯に避難して高みの見物を決め込んでいたんだよね。なんかムカついたんで、あいつにも空気の塊をぶつけておいた。

 あれだけ頑丈な身体なんだから、多少の事じゃ死にゃしないだろ。


「と、言う事で風呂だ、風呂! けっこう汗かいたからなぁ……」

『宿主さんも、お疲れ様ぁ。お風呂なら準備できてるよぉ♪』


 いつになくホロンも浮かれ気味のようだ。まあ、ちょっとした戦闘の後だし、こんなもんだろうな。俺はパーソナルジェットの残骸を片手に、エレベーターに乗り込んだ。


『サクマユウマ、質問があります』


 なんだい、リ・スィ。答えられる範囲なら何でも聞いてくれ。

 ただし3サイズはヒ・ミ・ツ! だよ。わはははは……


『そんなものは測定済みなので要りません。それよりも、サクマユウマ。

 なぜ援軍を待たなかったのです?』


 そんなの簡単だ。身体強化した俺なら、何とかなると思ったからだよ。あの時に金色カブトムシがひとりだけ戻ってきただろ。あいつはさ、たぶん一騎打ちを望んでいたからだと思うんだ。


『でも宿虫さん、赤法師も参戦したよねぇ?』


 っく… それは仕方がないだろ。あいつは神殿の守護者だから、あいつとは関係なく動き回ってるんだし。たまたま居合わせただけって事じゃないの?

 たぶんインゼクトとは別行動をとっていたんだと思う。


『そうですか』


 そうだよ。だって赤法師は神殿、インゼクトは森の守護者だろ。

 だから指揮系統がバラバラでもおかしくはない。つか、別組織ならそうならざるを得ないよね。

 でもさ、結果的にどっちにも勝てたから良いじゃないか。


『では、インゼクトを逃がした理由は? 彼らの本体は無傷です。

 逆襲される可能性は残されていますよ』


 いいや、それはない。

 あいつは自分の事を蟲皇(むしおう)と名乗ってたんだぜ?

 それにさ、誰に任命されたんだか知らんけど森の守護者なんだぜ。

 そういう名乗りを上げるって事はさ、すんごくプライドがある筈だ。


 そういう奴なら、卑怯な事はしないだろ。

 家来になるって宣言した時点で、問題は無くなったと考えるのが自然だよ。

 それに、何よりも今の俺には必要なんだよ。

 家来だろうが何だろうが、とにかく人手が欲しい。


 だってさ、リ・スィが提案してる森を復元ってさ。

 俺ひとりでやったら、どんだけ時間が掛かるか分からないんだぜ。

 インセクターに手伝ってもらったら、すんごく楽になると思わないか?

 とりあえず手の空いてる奴を集めてもらう事にして、この場は解散。


 いやぁ、久々にいい仕事をしたって気がするぜ。

 インセクターのお陰で森の再生は進むし、あいつらも住処が増える。

 良い事ずくめじゃないか。


『その点については異論はありませんよ、サクマユウマ』


 だろ?

 だから今日の俺は、とっても頑張ったと思うんだ。

 それについては誰にも文句は言わせないぜ。


『ところが違うんだねぇ。ひとつだけ宿主さんが忘れてる事があるんだよぉ♪

 それはね、宿主さんが自分の罪を数え忘れているって、こ・と♪』


 なんだよ、俺が何かやった?

 ワンピ破いちまったのは悪いとは思うけど、こいつはインゼクトの攻撃が防御力を上回ったって事だろ。それともあれか?

 パーソナルジェットを壊しちまった事なのか?


『あなたには自覚が無いのですか、サクマユウマ。

 私が搭載されている、この──探査船コスーニの中心人物なのですよ?

 いいですか? 私に必要なのは、私を使いこなしてくれる優秀な中心人物です。

 死にたがりで無責任な英雄など必要ではありません』


 ええと、中心人物って…… なに?

佐久間君が唱えた初めての呪文。どうやらエアハンマーの類だったようです。

高密度の空気が青く見えたのは酸素のせいという事で。

意外と知られていませんが、液体酸素の色は薄青色をしているのです。

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