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迫りくるアレに恐怖する俺

 刻々と基地に近づいてくる虫の群れ。

 その数も凄いけど、虫の大きさってのがなぁ……

 一番小さなコガネムシでも、サイズはネコ並みだ。その後ろに俺の身体くらいはある、でっかいアリとかカマキリとかが続いてるんだが。


 最後に歩いてくるのが金色のカブトムシだ。偵察メカの情報を分析してみたら大きさは相撲取りくらいはありそうだ。

 あの横綱の… そうそう、春場所で優勝した常磐(ひたち)って力士。

 なんでそんな事を言うかと言うとだな。


 いいか、ここ大切なとこだから、よく聞けよ。

 あのカブトムシはだな、2本の足で… 歩いてるんだ!


 それで分かると思うけど問題はまさに、この森の中を進んでる虫の大群なんだ。

 あの金色のを中心にした虫の大群… 何ていうか、大名行列みたいにも見える。

 少なくても前衛だけで200はいるよ。それが、整然と隊列を組んで… だな。

 俺たちのいる宇宙船の入り口を目指して行進中なんだよ。


『宿主さん、お待たせぇ。戦術ファイルのロードは終わったよ♪』


 ホロンか。さすがに手際が良いな。だが、今回は別の作戦で行くぞ。

 言っておくけど正面から攻撃とか無しだかんな。放電もしないからな?


 あの雷撃は魔力をバカ食いするから、連射は無理!

 それ以前に敵の集団のど真ん中で動きを止めると言うのは悪手だろ。あれだけの数をを一撃で全滅させるのは無理だと思うし。

 いくら魔法と肉弾戦は分業出来るにしても、多勢に無勢もいいところだ。


 どんな魔法であれ、2発目を撃つ前に生き残りから集中攻撃を喰らうぞ。

 それにあれだけの数を相手に肉弾戦は、はっきり言って無謀だよ。

 普通に──正面から戦ったら…… 間違いなく俺たち死ぬぞ?

 だから作戦を練ろうか。たとえばだな……


『うっ…… 宿主さんって。それ勇者のする事じゃないよ?』


 うっせ。これは近代戦なんかじゃ基本中の基本だぞ。第2次世界大戦で使われ始めた新しい戦術ってやつだ。それに勇者のする事じゃないとか関係ねぇ。

 だいいち、どこの世界にスカートはいた男勇者がいるってんだよ。

 ここにいるとかヌカしたら、自爆前提で突撃すんぞ?


 ……とにかく、だ。お前は電子戦の担当な。間違いなく、あの金色のがあの群れの親玉だ。あいつを何とかすれば、何とかなると思うんだ。

 他の奴はこの前のGと一緒で、図体がデカい昆虫の群れ… だといいな。


『サクマユウマ。作戦の目的を明確にしてください』


 ぐぬぬ… いいか、リ・スィ。

 あいつらの意思疎通ってどうしてるか、考えて事あるか?

 今の俺たちが、こうやって話をしているように、だ。

 データーリンクも、コンピューター同士の会話──意思疎通だろ。


 そういう『何か』が無かったら、あれだけ統制のとれた動きが出来るか?

 あいつらが俺の知ってるのと似たようなもんだとすれば、絶対に必要だよ。

 金色のカブトムシっぽいのが司令塔で、群れの全てを操ってると見た!

 だったら、そいつを何とかすりゃいい。


『それでは電子戦とは、どのような作戦なのですか?』


 言葉のあやだ。やりたいのは金色が出す命令を無効に出来ないかって事だな。

 要は通信妨害のような事をして、あいつらの統制を崩す。そこに出来た隙をついて個別撃破していくしかないだろ。

 リ・スィ、ホロンと協力してそいつを探れ!


『ねえねえ宿主さん、今から出撃すれば撃破できるんじゃない?』


 言ったろ。俺は平和主義者なんだ。好き好んで喧嘩なんかしたかないね。

 ひょっとしたら、今はまだあいつらここを目指しているけど、ここが最終目的地とは限らないだろ? この先にはさ、あの白いのが置きっぱなしに……


『それならば、すでに回収済みですよ、サクマユウマ。まだ調査を始めたばかりなので何も分かっていませんが』


 うわぁ、あれってかなり重かったんじゃない? 頭って言うか、兜だけでも、すんごく重かったんだけど。それを全部持って来たなんて。

 あのイソギンチャクもどきって、結構パワーがあるんだなぁ。

 あ、そういう専用のがあるの。そうだよね、採掘した鉱物サンプルとか運ばなくちゃならないもんね……


 ……てな事を話しているうちに、1時間が過ぎた。

 あいつらの意思疎通の方法は、まだ分からない──どの虫も時々、ぎちぎちと音を立ててるから、それがあいつらの『声』なのかも知れないけどな。

 でも、そこで終わっちゃダメだ。その先も考えておかないと。


『でもサクマユウマ。あの集団から出ている音波には規則性がありますよ』


 やっぱり会話してるのか。あのぎちぎちが『声』だったら無効化できる。

 最近のオーディオにノイズキャンセラーが付いてるのは当たり前だろ。同じ事なら出来るんじゃないかな。

 そんな機械なんか作ってる暇はないから、ここは魔法の出番ってわけだ。


 ホロン、お前なら分かるだろ? 静音の魔法とか会ったじゃん。あの音が聞こえなくなるやつ。そいつを応用すりゃいい。音ってのは空気の振動だ。

 あれは範囲は限られてるけど、空気の振動を制御してるんだと思うんだ。

 だったらさ、その範囲をもっと絞りこんであいつらの『声』をキャンセルできるんじゃないか?


『たぶん… 出来ると思うよぉ。自信ないけど』


 奴らのスピードは変わらないようだから、あと1時間もすりゃ、あいつらここに来るぞ。それまでにシミュレートしておいてくれ。

 リ・スィも手を貸してくれよるな。うん、それじゃ頼んだぞ。


 とりあえず、俺は外に出ておくか。

 その前に着替え、着替え… っと。


 いつものイソギンチャクもどきに手伝ってもらって、改良された服を着る。

 そして、パーソナルジェットを背負って…… ふぅん、そこそこ使えるじゃないか。メインユニットは重さも大きさも百科事典なみの小ささだ。

 そこから斜め上に出ている2本のアームの先っぽにあるのがノズルだな。


『予測時間まで、あと30分です』


 ようし、それじゃ出るか。

 っと、エレベーターから出る前に力場発生装置を作動させて……

 重力と気配を遮断…… いや、次元断層を作り出せばあいつらからは見えなくなるな。こっちは… とりあえず偵察メカがあるから、何とかなるだろ。

 あとは、忘れ物は… ないな、おっけ。


 じゃあ、出撃するか。

でっかいカブトムシさんが、のっしのっし……

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