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見つけたアレを気にする俺

 神経を逆なでする音と振動。つか、早く止めてくれぇえ!

 ううううう、頭いてぇ……


 これがナパーア星人の警報音って奴か。ようやく警報が解除された室内は、恐ろしいくらいに音が無くなっていた。

 それとも、あの警報のせいで耳がバカになったか……


『大丈夫ですか、サクマユウマ』


 大丈夫じゃねぇよ。まだ耳の奥がきぃぃぃぃん…… ってしてる。

 うううう、かなりキツイな… 今度から音量とかもっと抑えてくれよ。

 で、緊急事態だって?


『これを見てください、サクマユウマ』


 部屋の壁ひとつがディスプレイって、やっぱ迫力あるよな。いつもは端末いじるのにしか使ってないから、あんまり気にしてなかったけどさ。で、これは森の地図… か? ホロンのより範囲が広いというか、けっこう空白も目立つな。

 ひょっとして、俺が歩き回ったとこトレースしてた?


『それと偵察メカの蒐集した情報をまとめてみました』


 あ、それ大事だもんな。森そのものを要塞化するなら、少なくとも地理は把握しておきたいもんね。自分が住んでる森の中で迷子ってのはシャレにならん。

 だから地図作りは進めておくとして。

 どしたん? 非常事態って言ってたよね。


 ふむん。


 森の地図がクローズアップされて… あ、これ街道か。へぇ、ずいぶん曲がりくねってたんだな。外周沿いに進んじゃえばもっと簡単に…… あ、そうか。

 こいつ森を焼くための作業通路だった。

 そして、ここが秘密基地… へぇ、古代遺跡って、こんなご近所さんなんだ。


 そのうちに行ってみるとして… って、この記号って何よ?


『あなたが戦った場所ですよ、サクマユウマ。そして、最後の戦場はここです』


 ディスプレイに青い記号が追加されると、ぺこぺこ点滅を始めた。

 ああ、ここで合体技で雷撃魔法使ったんだよね。いやぁ、1発で全滅できてよかったよ。だってGってさ、一匹でも気持ち悪いじゃん。

 特にあいつら異様にでっかかったから、余計にね。


 それも群れで襲ってくるなんてさ。真面目に数えたわけじゃないけど、少なくとも30匹とかって単位じゃなかったと思うんだ。魔法の威力は、たぶん俺が無意識のうちに強力なのを! って思ってたんだろうな。

 ホロンはそれで、あの魔法を選んだと思うんだけど……


『……そして、偵察メカが発見したのがこれです』


 ボーっとしているうちに、地図には色々なデータが追加されてるな。赤い点がいっぱい…… って、なんか近づいてないか?

 それも段々増えてるような気がするぞ。

 そして気にるのはさ、あの赤い点の群れってだんだん集まってきてない?


 もう少し細かい情報が欲しいな。ええと、画像出る… よな?

 んじゃ、出してくれる? ええと、これ先頭のグループかな。

 って、こいつは壮観だねぇ。大名行列を見てるみたいだ。

 でさ、全体像は分かったからもう少しあいつらの……


 ……げげっ!?


『お分かりいただいたようですね、サクマユウマ』


 ……見ちゃったよ。


 あれって、全部… 虫だよね? 大きさとか、俺の知ってるのと全然違うけど。

 周りに木が生えてなかったら分かんなかったけどさ、一番小さく見えるカナブンが猫くらいの大きさがあるぞ?

 で、その後ろは…… んん、むむむ…… アリだな。


 この行列の主力なんだろうかね。アリが1番多いんだよ。こいつもスケールが無茶苦茶だなぁ…… 俺の身体とそんなに変わらない。

 で、奥の方にいるのが… あいつが親玉かも知れん。これもやっぱる、でっかいカマキリに囲まれて歩いてくるやつはさ、大きさが自動車くらいあるんだ。


 赤みがかった金色──小判とか大判のような──山吹色をしたカブトムシっぽい奴が普通に2本足で立って歩いてる?

 どうやら、あいつがこの虫の行列を支配している親玉かな。

 これだけの種類の虫の群れの中心にいるんなら、間違いないだろ。


『どう対処しますか、サクマユウマ』


 こりゃ参ったね。

 こっちで10年暮らしているリ・スィもアレを見たのは初めてらしい。

 偵察メカの行動範囲はせいぜい2キロ4方だから、その外側にいたのかも知れないけど、なんか妙じゃないか。


 今までに森で見つけたのは主にクマとかイノブタとかだ。昆虫がいないって訳じゃないけど、ごく常識的なサイズだったもんな。

 例外はこの前のGの群れくらいでな。

 あの大名行列って、ひょっとするとGの仲間?


 それは良いとして、なんで急にあんなのが現れたんだろう。それも、この宇宙船を目指しているようにしか見えないんだ。

 仮にこいつが森を周回してるとして、たまたま今年のコースがここだった…

 そういう可能性も… 無いわけじゃないが、少しは… いや、無さそうだ。


 だって近くには獣道っぽいのがあるってのに、そいつ無視して1直線にここを目指してるじゃねぇかよ。それも、あいつらのスピードだったら、あと2時間もしないうちにココに来ちゃうだろうなぁ。

 あの群れが、そのまま通り過ぎてくれればいいんだが。


 でもなぁ、ひとつだけ心配な事がある。

 あいつらに似たの虫は地球にもいるって事かな。たしか俺が中学に上がる前だけど、テレビのニュースで見たんだよ。

 新種の甲虫がロライマ島ってとこで… そうそう、あの金色のやつ。


 大きさこそ俺の手のひらと同じくらいだけど、色艶はあいつにそっくりだ。

 あの時のテレビであいつら野ネズミを襲ってたよね?

 あっという間に食べちゃったよね、それも骨も残らずに。

 もしも、あの行列にいる虫がそいつらと同じようなヤツだったら。


 そしてあいつらの目的地がここ… だとしたら?

家にカマキリが住み着いています。

毎年似たような場所から卵が見つかるから、住み着いていると言っていいよね。そして彼らは今年の酷暑を無事に乗り切ったようです。よかった、よかった。

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