魔法の威力に驚く俺
放電は1秒か2秒で終わったけど、その結果はと言うと… ちょいと派手な事になっちまった。さっきの放電は、だいたい15メートルくらいの範囲を滅茶苦茶にしちまったんだな。
けっこう太い木が多かったんだが、焦げるか割れるかしているし、地面からは湯気が立っている所もある…… 強力な電流が流れたから、辺りにあったものに含まれてる水分が一瞬で沸騰しただろうなぁ。
で、水蒸気爆発を起こして… と。
『雷をたくさん作ってみたんだけどねぇ』
って事は、こいつが雷撃魔法って奴か?
すんげえ威力だな。これニーソから生えてきたスパイクから放電した奴だよね。
でもニーソのスパイクが焼き切れてるじゃん。どんだけ電圧かかったんだよ。
ニーソのスパイクが焼き切れて放電しきれなかった電流は、マントから放電してたようだが、こっちも単純な放電だけでもなさそうだな……
何にせよ、Gは最初の段階で感電死してると思うし。
ただ、これだけの大電力をどこから持って来たかという事だが……
『宿主さんに決まってるじゃないですかぁ』
なん、だと? ウナギじゃあるまいし、俺は電気なんか出せんぞ。
それにリ・スィが作った服にも発電機なんか付いてないと思うんだけど……
『甘いですねぇ、宿主さん。私は宿主さんのサポートプログラムですよ?
ただのユーティリティじゃないんです。魔法の制御なんて軽い、軽い♪』
……さっぱり分からん。
『あなたの持っている魔力をホロンが制御して、電力を生み出したのです。事前にどのような魔法が使えるのか確認した私は、あなたの服に放電極を組み込んでおいたのですよ。理解いただけましたか、サクマユウマ』
そう言われてみればそうだった。ホロンには… 全ての魔法を使えるだけの属性を付けたんだった。でもさ、それ俺が魔法を使う事が前提だっただろ。
俺が魔法を使う事が出来ない以上意味なくね?
『たしかに、今のあなたは練習不足で魔法を発動させる事が出来ません。でも、その寸前までは出来ているのですよ。そこは私とホロンがサポートをすれば良いだけの事です』
ええと…… 魔法について、ざっとおさらいするか。
魔法って何なんだろ。そいつは地球で習ってるから知ってる。
常連のお客さんだった女子高の──八神先生はエルフ族だったんだ。
俺はヒト族だって言ってるのに、色々となぁ……
──いいこと? 知っていれば出来る事が増えるの。
それに、あなたの旦那様になる人がヒト族とは限らないのですよ?
ここんとこは、今でも何を言いたかったんだか分からんが。
バイト時間が終わって、お勉強タイム中なのに、八神先生ったらさ。
そもそも魔法ってのは何なのか。ここからだもんなぁ。それも、耳で魔法学の講義を受けながら、手は浴衣をチクチクと縫いながらときたもんだ。
だからヒト族にしては知っている程度の、魔法の知識はある。
その成果を簡単にまとめると、こういう事になる。
ヒトが魔力を使って森羅万象に対して変化を生み出すための技術。
つまり魔法を使う前提条件は、魔力という魔法の素を持っている事だ。
こいつはそのままでも使えるけど、効率よく使うために呪文を唱えるんだな。
この段階で魔法を使って何をしたいのか、を定義とか加工をする訳だ。
八神先生は魔力を練り上げる… って言ってたかな。
そして練り上げた魔力を放出する事で、魔法は発動する。
ってことは、俺が持ってる魔力を、ホロンがサポートして練り上げてる訳か。
で、そいつを放出したのは……
『その仮説は正しいですよ、サクマユウマ。練り上げた魔力を放出したのは、私が仕立てた服なのです。魔法の種類によっては変形する事もありますよ』
うっわ、見事な合体技だな。
まるで、赤い巨人が出て来るSFドラマの大型戦闘機みたいじゃないか。
『はいはい、それは分かったから後でねぇ。それより宿主さん、ちょっと状態を確認しとこうよ』
そういや目の前の戦果──惨状ともいう──は、ちょっとなぁ。
散らばってるGの残骸とかを見てるとさ、追いかけてきた数もすげぇ数だったと思うんだ。中には、俺の身体と変わらないようなデカいのも何匹かいたもん。
だとすると、経験値というか、そんなのもけっこう入ったかな?
……イスタートス!
『はいはーい。今の宿主さんの状態で~す♪』
名前: 佐久間 結馬
年齢: 15
性別: ♂(?)
種族: TERRANER
【STR】 2001/2480
【INT】 3349/3800
【DEF】 965/1000
【KRM】 現在値:中立
【SKL】 スキル:宝玉の瞳 毒物無効 格闘
【DEG】 ------
【AUX】 サポートナビゲーターを呼び出す
おぉおおお?
なんか知らんが魔力の伸びが凄いな。やっぱりあの放電が効いてるのかな?
こうなったら、どこまで数字が伸びるか楽しみだぜ。
だけど魔法の練習は中止だな。 当分、こっちはホロンにお任せだな。
俺は俺で、別の数字を伸ばしておきたいんだよ。
ん? 主に格闘系のスキルとかだが問題あるか?
……だろ。連携が上手くいったら、戦闘の幅が広がるぜ。
それよかさ、今日はもう帰らないか。
せっかくリ・スィが仕立ててくれた服も、ひどく汚れちまったからな。
何よりも、すんごく疲れた。
帰って風呂に入りたいよ……
ねっ? ちゃんと魔法していたでしょ?