森の広さに驚く俺
秘密基地の強化計画その1。
半分冗談で言ったレトロゲーのアジテーティング・ポイントが、実現可能なプランとして採用されてしまいましたとさ。
そういう俺がそれに対して何をしてるかと言うと、風呂でイソギンチャクもどきに全身をわしゃわしゃされてる。最初はアレだったけどさ、慣れてきたらと自分で身体を洗うより楽かも。
はふぅん……
……っと、ゲームの話だったよな。このゲームはA2までは面白かったなぁ。
特にA2は1の操作性を向上させて、キャラとかアイテムをけっこう増やしてたからなぁ。A3は、まあまあだったが、A4は… 最悪のザ・クソゲーだ。
メーカーに金返せ! って言いたくなったよなぁ……
販売開始の前日になって、公式サイトでバグ入りだって事が発表されてさ。
それもセーブデーターのクラッシュとか、最悪だよな。その後2回に渡って修正パッチが配信されたんだが、却ってバグが悪化するとか何なんだよってな。
それも最後まで初期のバグは解消されなかったという体たらくだ。
という訳でもないが、なぜかホロンのアーカイブに入ってたA2をやってる。
ちょっと手を加えてリ・スィもプレイしているんだが、沼にはまり込んでいるみたいだな。古城のおっさんも罪なものを入れとくもんだよ。
でも、そのお陰でリ・スィも俺の考えてる事は分かってくれたみたいだ。
『サクマユウマ、あなたの構想は分かりました。でも地下通路の建設や設備の組み立てには時間がかかりますよ。前提条件となる資源がありません。
次善の策としては……』
要は、森を広げようって話になんだよね。
ってのは、半年か1年くらい前に、ゼムル帝国がこの森を焼き払おうとしたんだってさ。どうやら、あの街道はその時の作業通路だったらしい。
どうりで整備もなにもされてない筈だよ。
『帝国が森を焼き払おうとしたのは、森の生物が『外』に出て来るのを警戒したからかもしれません。スカ・リトという個体からの情報では帝国は戦争遂行中ですから、何らかの生産拠点を必要としていた可能性もありますね』
戦争だぁ?
そういや、皇女サマは言ってたよな。帝国はどこかと戦争してるって。
さすがに魔王と戦っちゃいないと思うんだけど、俺があの砦から逃げ出した後にやってきた正規部隊は… あまりにも手際が良すぎるんだ。
平たく言えば、あいつらは殺しに慣れてるって感じなんだよね。
という事は、あの部隊は「そういう経験を積んだ」部隊って事になるだろ。
そういう連中からここを守るにはさ、今のままじゃ拙いと思うんだ。
そこで俺が考え付いたのは、地下にトンネルとか作ってトラップとかを仕込めばいいという事だ。
でもリ・スィの話では資源が無いから無理らしい。その代わりの提案が、帝国が焼き払った森を再生しようって事なんだ。
森に棲んでいる生物って、けっこう獰猛らしいから番犬代わりにはなるかな。
「……だが、問題はこの事実だ」
人工衛星からの画像では森の全体像がつかめないんだよ。分かるのは最低でも30キロ四方はあるってとこかな。それ以上の観測は無理だそうだ。姿勢制御すら出来ないって話だから、こいつもそろそろ寿命かな… って気がする。
ホロンの話だと他にも人工衛星があるけど、故障してたりするらしいからな。
そういうわけで、俺は森の焼き払われた場所を見て回ってたりするんだが。
初めは平野かと思ったくらいに広いんだ。帝国もよくやったよ……
『やっぱり作業通路だったねぇ、宿主さん。じゃ、詳しいデータを出すね』
ウインドウに地図が表示されると…… 焼き払われた土地は細長い3角形ぽい形をしてるな。そして、そういう場所だから切り株だらけの荒れ地かと思ってたんだけどさ、草原って感じに見る。
『画像を解析してみたら、森の外周部を底辺として… 幅は直線距離で20キロくらいかなあ。先っぽまではその倍ちょっと… は、あるねぇ』
マジか!? それイガルタよりも広いじゃん。そこを全部森に戻すの?
それって無理ゲーじゃん? いくら成長が早いって言ってもさ、どんだけ木を植えれば良いのさ。
『でもサクマユウマ。あなたが言い出した事なのですよ。それに、現在私たちが置かれている状況を考えると、他に選択肢はありますか?』
……だよね。
無いんだよ、地下基地を広げたりするための金属資源がさ。そしてリ・スィの手持ちも──資源調査用の宇宙艇だから、あってもサンプル程度だろう。
それじゃ、建設機械──ブルドーザーとかパワーショベルなんか──を作るには全然足りない。
だとすりゃ、少しでも敵を足止めするのには森を復元するっきゃない。
リ・スィは森から採集した木の枝や種の遺伝子をいじって、極限まで成長を早めるって話だけど、復元するっ面積はさ、イガルタよりも広いんだぜ?
それと、森の動物たち……
動物…… なのか?
『どうしたんです、宿主さん?』
あれ… 動物で良いのか? 違うよね?
体の後ろ半分がさぁ、ちょーっとふさふさしてるけど、こっち向いたらさ。
めっちゃでっかい虫な感じがするよ? あれ。
つか、虫だよ………… ね?
「うゎおおおおお……」
そいつの長い触角が、にょい! って動いた途端に全力ダッシュしたのは…
まさに本能的な行動ってヤツだと思う。
でもさ、そんな俺を笑う奴なんていないと思うんだ。
どっちかって言うと、俺がした事ってさ、世間様の同意度も高いと思うね。
だってあれってさ、前半分はどう見でもアレ… なんだぜ?
そう、あの茶色かったり黒くてつやつやしているヤツ。
そいつなんだけどなぁ…… でっかいんだよぉおおおおお!
ちらっとしか見なかったけどさ、どう見てもあれは尋常じゃないよ。
こういうモノに例えて良いか分かんないけどさ、あいつスーパーで見かける果物入れる段ボールってあるじゃん。あれくらいの大きさあるんだよね。
それがわしゃわしゃって…… あああああ!
あの生き物は雑食性なんです。倒木を巣にして増える事もあります。
そして、とっても強靭な肉体と生命力がががが……