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基地の強化を思いついた俺

 秘密基地で暮らすようになって半月が過ぎた。

 最近はベッドのある部屋で引きこもり生活を… してるわけないじゃないか。

 食べて寝るだけってのはさ、長く続くと逆に飽きるんだよね。

 だから適当に森の中を歩き回ったり、魔法の練習をしたりしてるかな。


 俺が出かけてる間にリ・スィは部屋の掃除をしてくれる。というか、リ・スィが掃除洗濯をしている間はさ、俺は外に出ていた方が都合が良いかも知れない。


 そうそう、リ・スィは調査船だからさ、設備とメンテナンス体制は万全だ。

 でもさ、自分で自分の船体を修理する宇宙船なんて聞いた事ないな。ネット小説あたりなら、そんなの書いてる作者が… ああ、そんなのもいた。

 たしか、ディア・マイ・フレンズ… とか言ったかな。


 なんで知ってるかと言うと、(なつき)がそいつを見ていたんだよね。

 アニメにもなったんだが、放送は深夜時間帯ってやつだったんだ。録画するとか再放送見るとかすりゃ良いのになぁ。

 2学期中間の前日もそれをやっちゃってさ。


 案の定、テスト時間に鉛筆握りしめたまま爆睡してたそうだ。いくら得意科目だからって言っても、自分の体力過信しちゃいかんって事だよなぁ。

 追試は満点だったからアレだけど、そうじゃなかったら、あいつのシルバーウイークは無かっただろうなぁ。親父はともかく婆ちゃんがなぁ……


「ふむ… ダンジョンかぁ… ん、待てよ?」


 アニメの話でふと思い出したんだが。

 たとえばの話なんだが。俺たちも地下トンネル作って、そっちにも部屋とか通路を作ったら面白い事になるかも知れないなぁ。

 それで誰が得をするかって? 決まってるじゃないか。俺が楽しい…


 ……というのはアレだけど、ちゃんと理由もあるんだよ。


 なーんでこんな事を考え付いたのかと言うとだな…

 ああそうだ、レトロゲーでアジテーティング・ポイントっての知ってる?

 そうそう、君だけの秘密基地を作ってヒーローをぶっ飛ばせ! ってやつ。

 お面ライラ―とか、おしし仮面を寝返らせ… 邪道だと? うっせ。


 ……それはいい。いいったらいいんだ。詮索すんな!

 とにかくだ。この森には宇宙人が作った調査船が埋まってるんだ。全体像がどんなのかなんて知らん。知ってるのは、そこから1本のエレベーターが地上につながる唯一の出入り口って事だけだ。


 そしてだな。もしもエレベーターが見つかったら、俺は逃げ場がないじゃん。

 帝国の軍隊が入ってきたら、俺は間違いなく死んじゃうよ?

 せっかく砦から逃げ出したんだよ? そして俺の居場所はここだけよ?

 だからなんだよ。ここんとこ何とかしなきゃ拙いだろ。


『そういう事なら、宿主さん。私は賛成ですよぉ』

『たしかに。そういう理由なら、優先度の高い問題だと思います』


 ホロンとリ・スィもその気になってる事だし、ちょっと挑戦してみっか。

 トンネル掘って、部屋を作って、いーっぱいトラップを仕掛けるんだ。

 ふひひ… 戦闘員や怪人もいいかもなぁ……


「……そう思っていた時期がありました、とさ」


 話が決まって舞い上がった俺がやっているのは、森の──それも奥の方を歩き回る事だったりする。

 例の合成繊維で出来た服を着て、背中には大きな籠を背負ってな。

 何でこんな事をしてるんだって? 知らねぇよ。

 リ・スィが森で木の枝とか木の実を集めてくれと言うんだな。


『言い出したのは、サクマユウマ。あなたですよ』


 そうだけどさ、たしかに言ったよ。

 防御を固めるために秘密基地を広げようってね。

 それと、森の中で木の実とかを集めるのって、なんの関係があるんだよ?

 まさかエレベーターを潰して籠城とかするん?


『違いますよ、サクマユウマ。森を広げるためですが?』


 ええと、どゆこと?


『魔の森の外側の生物には遺伝子構造に差異が見られるのです。そしてゼルカ星人にとって森の生物とは──いえ、森の生物にとって『外』からやってきた生物は、すべからく捕食対象なのですよ』


 知ってるさ。あの3角形をした平野だろ。

 捕虜からも話を聞いてるよ。森の生き物ってかなり好戦的というか、すんごく狂暴だってな。で、滅茶苦茶に強いらしい。

 魔の森ってのもそこから… だよね。


『ではゼルカ星人が魔の森を排除しようとして失敗した事も知っていますね?』


 まてよ? って事は、魔の森も異世界スリップしたって事?

 うわ、うわ、それってさ、この星の生態系… ヤバい事にならない?


『それを知って、サクマユウマ。あなたに何が出来ますか?』


 いや…… 何も… 出来ないけどさ。

 でもこいつらが 掛け合わさった結果、ヤバい方向に進化する事は無いよね?

 たとえば食肉植物とか。地球だと熱帯ジャングルの奥にいる食肉植物(セファロタス)… ってなおがいたよなぁ。


 あとはロギフラワか。大きくなっても俺の腰くらいだが、茎の太さは俺の太ももくらいはあるんだよね。で、こいつは全身にびっしり生えた細いトゲを使って這い回るだけじゃなく、すんごく硬い種子を飛ばすんだ。

 それもマッハ3… すでに生き物とは思えんよ。


『似たような生物なら、ゼルカ星にも存在する可能性がありますよ?』


 いるんかい!


『スカ・リトという個体から資料の提供を受けています。動物と同じような行動をする植物種が存在すると』


 スカ・リトって皇女サマだよね? ひょっとして彼女、ラノベやファンタジーを読んでたんじゃないのかなぁ。あの年齢でそういうのを愛読してるのは……

 少なくともゼルカでは少数派だと思うんだが?


『その論点には矛盾がありますよ、サクマユウマ。なぜなら、この座標にゼルカ星を由来としない物体が3種類も存在するのですよ。分かりますか?

 それは私と、あなたと、魔の森です』


 い、いや… それはそうだけどさ。

 地球にいて、ナパーア星にいるなら、この星にも食肉植物とかはいるだろう。


 少なくとも、可能性は否定できない、か。

帝国が焼き払った森の面積は、ちょっとした地方都市くらい。

復活した森は、ダンジョン並みに厄介な場所になるかも…

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