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もつ鍋祭りを期待する俺

 リ・スィの偵察メカは、基地の出入り口を中心にして1キロくらいに配置しているそうだ。最近は3キロまで範囲を広げたそうだが、この範囲なら比較的安全だって事でもあるんだよね。


「じゃあ、ちょっと散歩してきても良いかな」

『着替えを用意するから、少し待ってください』

「……わかった」


 しばらくすると別の奴がお出かけ着を持ってきた。ええと、その… なんだ。

 お出かけ着ってのは、この前着せられた合成繊維っぽいワンピセットだ。

 見た目がワンピってだけで実際にはドレスアーマーなんだけどな。

 とりあえずワンピを脱いで、イソギンチャクもどきに渡して。


 この服を着ないとリ・スィが外に出してくれないんだよね。


『魔力で強化された鎧の着用者を相手にするには、これでも足りないのです。

 少しづつ改良は進めているのですけれどね』


 リ・スィはそう言うけどね。だとするとワンピってのはどうなのかね。

 今の俺が着ているのは、合成繊維製のワンピとボレロ。最初のに比べるとずいぶん着心地は良くなったぞ。んで、下はニーハイソックスにブーツってとこだ。

 ワンピの色が青っぽい灰色ってのが気になるけどな。


『まだいいじゃない。最初は鮮やかな赤色になる予定だったんだからね?』


 マジかよ? そんなんだと、すんげー目立つんじゃねぇの?

 森の中ならまだいいけどさ、森の外だったら『的はここですよー』って大声で触れ回ってるようなもんじゃないか。

 それに比べりゃ、青灰色ならまだマシか。


 でも、ホロン。なんで赤だったんだ?


『たぶん保護色のつもりだと思う。ナバーア星も地球も、そのあたりは変わらないと思うんだけどねぇ』


 そういやそうか。なんでか分からないけど海の中だと赤色って、すんげー地味な色になるんだよね。だから背景に溶け込んで見えにくくなるんだ。

 だから赤色なわけか。ナバーア星のジョーシキって奴ならアリかもな。

 でもな、水中生物のジョーシキを陸上生物に押し付けんでくれよぅ。


『でも改良が進んでいるから、最初のよりは着心地が良いと思うけどねぇ。

 服地だってずいぶん薄くなったでしょ?』


 なんでこういうデザイン(ながそでワンピ)になったんだ、だと?

 俺に聞くなよ。ホロンとリ・スィが変更を認めないだけだ。

 一体構造の利点やら空力特性の優位性が云々…てな事をとつとつと語ってくれたけど、ぶっちゃけ面倒なだけだろ?


 しかぁし!

 俺にスカートが似合うとは思えんのだよ。

 だから、とっととズボンを作れって。


『新しく設計するのは面倒なのです。この形式の衣服ならば、ゼルカ星人のサンプルが身に着けていた物の改良発展型ですから』


 サンプルって…… やっぱし皇女サマは哀れだなや。


 あとのサンプルは、お供の稚児さんってとこだろうな。

 そう言えばあの服はゆるゆるのオーバーオールにバックスカートって感じの服だったから、スカートの亜種と言えばそうとも言えるかも知れないな。

 そうなるとリ・スィがズボンのデータ蒐集が出来なくても仕方ないか。

 ナパーア星人には服を着る習慣なんか無いからね。


 じゃあ、こいつは保留だな。ホロンがデーターを回せば何か考えてくれるだろ。

 ふむ、着付けも終わった事だし、散歩に行くとするか。

 この前のお出かけでは獲物どころか、ヤバいモノを探知しちゃったからね。

 あいつはたぶん、あの白い奴の同類っぽいんだよなぁ。


『ねえねえ宿主さん。偵察メカから情報が届いたよぉ』


 ふむ、周囲に危険はない、と。

 とにかくあの白い奴の同類とだけは出会いたくないからなぁ。

 で、他には?


『北に100メートル行ったあたりに中型のラーノが数匹いますね。本当に出掛けるのですか、サクマユウマ。リスクを冒してもらいたくは無いのです』


 ラーノって、たしかイノブタっぽい奴だよね。それなら大丈夫だろ。地球でも狩らされたもんだよ。つか、早くリフトを上げてくれよ。

 こうなったら、ちょっと運動をしたってバチは当たらんだろ。

 はりあっぷ、はりあっぷ!


 俺が外に出る事にこだわる一番の理由は欲求不満の解消ってやつだ。他にもあるけど、細かい事を言ってたらきりなしだから言わんけど。

 じゃあ基地の中の暮らしに不満があるか、と言われてもなぁ。

 正直に言うと、無い。


 強いて言えば食事… かな。

 相変わらずお粥がメインなんだよね。時々お粥じゃない時もあるけど、それでも固めのプリンって感じのものだ。栄養満点で消化も良い。

 これで合成食糧だって言うんだから大したもんだ。


 それに味だって決して悪くは無いんだ。バリエーションも豊富だしな。

 だからと言って、毎日毎食これを出されてみろよ。


「俺は固いもんが食べたいんだよぉおお!」


 ……ってならないか? …なるよね。


 皇女サマはべた褒めしてたそうだが、それって時々食べるからだと思うんだ。

 あの砦の食糧庫の中身を見た限りだとさ、あいつら食べてるのは洋食ってヤツだと思うよ。だって肉とかソーセージとか、いっぱいあったもん。


 まあ、無い物ねだりはリ・スィを困らせるだけだって事は分かってる。

 こればっかりは仕方がない事だってのは、俺でも分かるよ。これがナパーア星人の食文化ってヤツだし、そういう壁ってのは簡単には越えられないからな。


 じゃあ、どうすりゃいい?


 その答えは簡単だ。簡単すぎるよ。

 無ければ狩ってくればいいだけじゃないか。

 野生動物を倒すにゃ武器なんか要らん。


 ……すんません、意地張ってました。

 イノブタの群れを相手に武術だけだときつかったです。魔法も使いました。

 魔力コントロールの練習不足で、最初に殴ったやつ以外は灰しか残らなかったけど。それでもいいんだ。肉だけでも50キロはゲットしたんじゃないかな。

 ひゃっほう、今夜はもつ鍋祭りだぜい。

ウデンヌードルの話の続きになりますが……

よくよく聞いてみたらウデンは『おでん』、オドン『うどん』の事だとか。

だから、ウデンヌードルは『しらたき』でオッケーなんだそうです。


お国言葉の外国語版では『U』と『O』の発音があいまいになっているのかも。

どうやら私は教科書では学べない貴重な体験をしたのかも知れません……

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