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帰ってきたホロンと俺

 秘密基地で暮らすようになって、今日で1週間が過ぎた。

 これはスカリット姫──帝国の皇女サマ──に召喚されて、そこから逃げ出した俺が生きのびてきた日数だ。

 もっとも、この皇女サマの秘密基地があったお陰なんだが。


 ホロンも無事に再起動できた事だし、もう1度外に出てみるかね。

 えっ? もう少し待て?

 なんでだよ。


『宿主さんが、私のレジストリをいじり過ぎたのがいけないんだよ』


 なんか知らんが、ホロンの意識が処理速度についていけなくなったらしい。

 で、そのまま処理落ちしたんだそうだが…… 処理速度の設定は中パフォーマンスの範囲だぞ。それも10段階のうちの3くらいなんだが。

 意識というか自我の部分は俺じゃどうにもならんから、そこは頑張れ。


 気になるのは、ホロンは処理落ちしてる時に神を見たって言ってた事かな。

 猫耳が生えた幼女と、おかっぱ頭の幼女だって言っててけど……

 それぞれネコガミとドーソシン…… どこかで聞いた事のある名前だな。

 うーん、どこで聞いたんだったかな。


 まあいいか。

 それよりも気になるのは地下634メートルにある、この秘密基地だ。

 地球の技術でもこんな物は作れないぜ。


 だからなんだよね。


「この秘密基地が異質だと感じている件について」

『たしかに異質だねぇ♪』


 って、ホロンの奴、さらっと言いやがったよ。

 知ってたんなら、教えてくれよぅ。


『んー、今まで確信が持てなかったからねぇ。宿主さんがレジストリをいじってくださりやがった結果、ようやく確信が持てたんだよね』


 なんか言葉にトゲがあるな。

 でもさ、処理落ちの事で拗ねてるんならさ、お前の修行が足りないからだと思うぞ。古城のおっさんが作った仕様書見たけどさ、お前、自己教育型じゃん。

 だとすりゃさ、自己改良とか自己改善できるAIってこった。

 おっさんは人工知性体を狙ってたみたいだしなぁ。


 じゃければさ、なんで高パフォーマンス設定ができるんだよ。

 今のお前、レベルで言えばまだ13だよ? 全部で50段階あるうちのさ。

 つまり伸びしろは、たくさん残ってるってこった。

 だから頑張れ。


『ううううう、なんで私が宿主さんに論破されるかな?

 正論を吐きすぎると嫌われちゃうよ? 主に私からねぇ?』


 ふっふ、何とでも言うがよいわ。

 それよかお前ってさ、ぷりちーなデキる電子の妖精って言ってたよな。

 だけど今のお前はリンク先の無いデスクトップアイコンだぞ。


『むっきいぃいいい!』


 わはははは。……勝った。


 ふっ、ザマーミロ。今のお前じゃ俺の運動中枢にアクセスできまい?


 それよか、そろそろ話してくんない?

 この基地が異質だって感じる理由をさ。

 俺の生存に関わる問題だから、放置できない筈だろ?


『むぅぅ。宿主さんは妖精使いが荒い人だなぁ。そのあたりは、まとめて借りを返すとして。この基地の異質なところを話せばいいの?」


 そうそう。

 どこが異質なのか俺には分からんのよ。異世界に来てからまだ1週間だもん。

 それも大半はここで暮らしてるだけだからな。だからさ、今の俺は難にも分からんって訳だ。何があっても『はい、そうですか』って受け入れるしか無いな。


『宿主さんからすれば、そうだよねぇ。でも私の場合は、いくつか比較できるものがあるんだよ』


 それが人工衛星とココ… って事?


『そそ。通信波の帯域… どっちも使ってる周波数は地球のものと似てるんだ。

 それは偶然の一致かも知れないけど、信号の形式がねぇ』


 地球でも人工衛星からの電波… GPSとかの奴とWiFiの周波数帯って別だよね。それって普通だと思うんだけどな?

 周波数ごとの特性で分けてるって聞いた事があるけど、ここでは違うのか。


『そこはおんなじ。物理法則は地球と変わらないからねぇ。どっちかと言うと問題はその中身なんだよねぇ。コンピューター同士の通信ってさ、ラジオを聞くようなのとはわけが違うんだよ。ただ受信すればいいって訳じゃないの』


 コンピューター同士の通信方式ねぇ。HTTPとかがそうなん?

 他にも色々ある? 一種の規格というかそういうもんか。

 ……いや、何となく分かるよ?

 古城のおっさんがインストールした知識があるからな。


 問題は知識があっても。理解が追い付かないってだけの事だ。

 つか高度過ぎてさ、よくわかんねーってのが本音だな。

 だから、ちょいとかみ砕いてくれよ。


『分かりやすく言うとね、同じ技術体系の産物なら、プロトコルは似たような物になるんだよ。というよりも、そうならざるを得ないんだよね。

 コンピューターのように社会の基盤になるようなモノの設計思想なんて、だいたいひとつに纏めるものだもん』


 そうしないと、何かと面倒だな。たしかさ、スマホなんかで再び問題になってるのも、そのあたりだよね。機種依存性の問題でアプリが動かないとかさ。

 極端な話、スマホのアプリってPCでダイレクトに動かないじゃん。


『ま、そんな感じかな。実際にはもっと違うんだけどねぇ』


 どゆこと?


『結論から言うね? この基地は異世界転移でこっちに流れ着いた… って言えば分かる? 理解できるよね? 宿主さんだって異世界召喚されたんだし』


 マジか? ってことはさ、あの皇女サマって天才じゃん。


 異世界のコンピューターを、使いこなしてたって事だろ?

この世界にも森とか神殿が異世界転移してくるんだもん。

だったら、こういうのが転移してきたって良いと思うんです。

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