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着せ替え人形にされた俺

 ホロンが引き籠ってから半日が過ぎた。

 あいつのレジストリの書き換えにはミスはないぞ。古城のおっさんが俺の頭の中にインストールした知識の中には、あいつの仕様書とかもあったからな。

 でもこいつってさ、本当に貰っても良かったのかな。


 ホロンの原型はさ、おっさんが高校を出るころから作り始めたんだろ。マイコンブームとかで、人工無能とか作るのが流行った時代からのものだぜ。

 最初は簡単な自動応答プログラムでさ、マシンの性能が上がって出来ることが増えたら、そのたびにバージョンアップしたんだろうなぁ。


 それも社会に出てからもずーっと、だ。

 ここまで来たらさ、おっさんの分身みたいなもんじゃないかよ。

 たぶんコピーか何かをくれたんだと思うけどさ。

 でもなぁ… なんか重い……


「……ふぅ」


 それにしても暇だなぁ。

 ホロンがいないと、こんなに静かだったのか……


 あいつとは、たった数日の付き合いなのに。

 あ、メシの時間か… 風呂で俺の身体をもしゃくり回したピンク色をしたイソギンチャクもどきがカートを引っ張ってきた。

 こいつは汎用型のロボット… お世話係ぽいモノのようだ。

 そういや布団の交換をやっていたのも、こいつらの色違いだったなぁ。


 だけどさ、こいつら話が通じないんだよね。食事の世話から着替えまで、なにかれとなく世話をしてくれるのは良いんだけどさ、それだけなんだ。

 いつも近くに1体はいるから、無視されてるわけじゃない。

 そして、こいつら俺の言う事はわかるみたいなんだ。


 腹減ったと言えば食事が出るし、喉が渇いたと言えば飲み物をくれる。

 服だって何着か──ちょっと難はあるけど作ってくれたよ。

 寸法が合わないとかもない。ある意味では、とっても快適なんだ。


「快適すぎて、バカになりそうだけどな」


 帝国の正規部隊もどこかに行っちまったようだし、ちょっと外に出てみるかね。

 ちょっと気になる事があるんだよ。あの白い奴の事とかな。

 そう思って、エレベーターホールまで行ったんだが……


 そしたらさ、エレバーターの前にイソギンチャクもどきが群れていたんだ。

 あいつらが横一列に並んでる様子は、いかにも通せんぼですよって言いたそうなんだよな。で、エレベーターホールの照明が急に薄暗くなってさ。

 暗くなってないのは部屋の入り口のとこだけだ。


 たぶん部屋に戻れって事なんだろう。こんな事は初めてだな。

 仕方がないか、戻るしかないな……

 ひょっとして砦から逃げ出したけど、ここに監禁されちまったって事かなぁ。

 考えてみりゃ、当たり前だ。ここは皇女サマの秘密基地だもん。


「ん、なんだ?」


 ベッドにひっくり返ってた俺のところに、イソギンチャクもどきが近づいてきたんだ。それも何体かいるようだ…

 どうやら俺がベッドから出て来るのを待ってるみたいだが……

 ええい、ままよ…… 覚悟を決めるか。


 意を決してベッドから出た俺は、そのまま服を脱がされて……

 しゃあねぇだろ。触手で手首をつかまれて、ばんざーい! ってさせて、そのままするりとな。

 こいつは木綿か何かで出来た袖なしワンピだからなぁ。

 そういや、妹を着替えさせるのもこんな感じだったっけ……


 そう思っているうちにニーソを穿かされて、別の服を被せられたんだが……

 こいつは長袖だ。スカートは相変わらずだが、裾は足首よりちょっと上くらいだな。それからボレロを着せられて。

 最後はちょっとゴツめのブーツだったんだが、そこで気が付いた事がある。


「えらく頑丈そうな服じゃないか……」


 どう見ても今までの服とは、材料が… 明らかに違うんだよな。裏地のせいで着心地は悪くないんだが、こいつどう見ても合成繊維っぽい。それに色合いも灰色がかった空色で、ちょっと生地が厚い感じがするな… すんげぇゴワゴワして着心地は最悪だ。

 まるで柔道なんかで着る胴着みたいだな。


「ふむ……」


 新しい服を装備させられた俺は、その場でくるりと回ってみた。袖はちょっときつめで手首のところで絞られているが、動くのにまったく問題ない。靴のサイズもぴったりだ。爪先に少し余裕があるけど、これはあって当然だからな。

 それからウオーミングアップを兼ねて、型稽古をしてみた。


 ……ちょいと重たいのとスカートって事以外は何の問題も無いようだ。


 それを見届けたのか、イソギンチャクもどきはどこかに行っちまった。

 部屋の照明が薄暗くなったから、出ても良いって事かな。いつの間にかドアも開いてるし、やってみるか。


「……外に出してくれる… のか?」


 エレベーターホールに行ったら、エレベーターのドアが開いていてさ。

 何も考えないで中に入ったら、そのまま上に運ばれたんだな。

 そして、3日ぶりに地上に出たんだが。

 時間がわからないな。ウインドウに時計を… よし、左上に数字が出たか。


 昼過ぎなら、暗くなるまでには時間はあるな。

 じゃあ…… 森の中を探検するか。最初にどこに行くかは決まってる。

 あの白い奴がどうなったか、知っておきたいんだよ。

 最低でもあいつの持ってたレーザーソードは回収しておきたい。


 あれは帝国には渡せない。どうみてもあれはオーパーツだもん。

 本当は鎧ごと回収したいところだが、すごく重そうだからなぁ。

 いくらイソギンチャクもどきが親切でもさ、そこまでは無理じゃないの?


「……あった」


 あの白い奴は、俺が最後に見た時と同じようにひっくり返っていた。

 それにしても運が良かった。ふっとばした頭とか、へしゃげた胴体の隙間から見るとさ、鎧の厚さは1センチくらいあるんだよ。それに、転がってた頭とか腕を胴体の所に持って来たんだが、重いのなんのって。


 中の人はさ、控えめに言っても超人だよ。頭の… 兜だけであの重さだよ?

 そして厚さ1センチもある金属製の全身鎧を着てて、あの動きだもん。

 鎧を脱いだら、どんだけ凄いのよってねぇ。


 そして、不思議な事がある。この鎧は、人間が着られる構造じゃない。

 そう言う意味でのつなぎ目が無かったんだよね……

お外に出る時は、おめかししなくっちゃ、ね?

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